探偵猫マーブルの弟子
吉高 雅美
第1話「チャチャさんと子ネズミ」
三毛猫のチビミケは、夕方の公園会議にも参加するしっかりもののネコなんだ。近所のネコが集まって、それぞれお気に入りの場所にうずくまり、目をつぶる。寝てるだけじゃん。ずっとそうしてるのではなくって、暗くなる前に勝手にいなくなってる。
今日はチャチャさんが居ない。チャチャさん、人間のネコ好きおばあさんに、茶色のネコだから、チャチャって名前付けられた野良猫。お母さんの死んじゃったチビミケにも、おっぱいくれる。
上まぶたのあたりに動いた。木の枝の付け根の動き。木に登り始めちゃった。壊れた丸い固まりがパタパタ落ちてきた。飛び被る。スズメだ、初めて捕まえた。巣から落ちてきたのかな、あそこに巣がるのかな。チャチャさんに持っていこう。スズメくわえて、頭掲げて、尻尾ふくらまして走った。
チャチャさんには子猫が三匹いる。最初五匹いたんだけど、三匹なってる。そしたら、チビミケがおっぱい飲んでも怒らなくなったし、どっかから、子ネズミ捕まえてきたのに、食べないで、おっぱいあげてる。ネズミがネコと一緒におっぱい飲んでる。子ネズミはチャチャさんがお母さんと思っているみたい。
スズメ持ってチャチャさんとこ着いてみると、チャチャさんは泣いていた。
「食べられちゃった。食べられちゃった」
寝床を見ると、自分より少し幼いネコが三匹と、小さなネズミの手足があった。子ネズミ食べられちゃった。スズメ捕まえたんだよって自慢するつもりだったんだけど、お土産って、あげることにした。おっぱい飲むのもなんか気が引けて、帰った。チビミケは、拾われて、今は家ネコなんだよね。
今日は、いつもより遅れて参加した公園会議、あれ、だれも寝てない。
「わたしの子供が食べられちゃったんです」チャチャさん怒ってる。
「でも、それ、ネズミだったんだよね」
「ネズミ食べるの普通だと思うけど」
他のネコは、いつもとあまり変わらず、寝てないけど、眠そうなだけ。
「犯罪です」チャチャさんの断言。
犯罪なのか、犯罪じゃないのか。公園会議はそっちが問題になった。チビミケには解んない。解んない時は、そうそうしよう。明日聞いてみよう。
いつも、ここの日当たりのいいブロック塀の上にいる。朝の日向ぼっこ。マーブルおばあちゃん。この家の家ネコのマチカンなんだけど、若いころの家からの脱走癖が抜けてないんだとか。もう年だから、この塀までね、なんて、朝の日向ぼっこ終わると家に戻る。
「犯罪なの」チビミケは聞いてみた。
「犯罪だね」
そうなんだ。チャチャさんに知らせなきゃ。チビミケは走る。犯罪だったんだ。大変じゃん。犯罪はやっぱり悪いことだよね。悪い事なんだよ。悪い奴。チビミケは悪い奴嫌いだ。嫌いなことより楽しい方がいい。また、スズメいるかな。
スズメの木に登った。卵があった。丸い。手で少しづつ押していたら、押せなくなったのが、ぴちゃって音がした。下から音がした。ゆっくりなんだけど、大急ぎで降りた。割れた卵。匂いをかいで、ちょっとだけなめてみた。スズメいない。
チャチャさん、三匹の子猫、そして、ネズミの子がまたいた。
「ネズミ戻ったの」
「また、捕まえたんだ」
チャチャさん、得意そう、とっても。得意なんだから、マーブルおばあちゃんに聞いたこと言わないぞ。
「そのネズミのお母さんとか、どこ」
チャチャさんは、もっと得意そうに、しっぽまで、真っすぐに伸ばして。
「捕まえて、食べたんだよ」
なんだ、犯罪はやっぱり、もう、どうでもいいんだ。ネズミ食べちゃえば、解決なんだ。チャチャさん、子ネズミ戻ってきて嬉しそう。
探偵猫マーブルの弟子 吉高 雅美 @yositakamasami
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