第17話

「ちょっと待って、でも君は未来に帰らなくちゃいけないんだろ?彼女とは離れ離れになってしまうんじゃないのかい?」

「確かに、それでは、どっちも報われないじゃないか」

「ああ、それなんですがね…」

俺は、未来へ戻るためには、時間遡行によって未来が変わった人物と一緒じゃないと帰れないとこを説明した。

「そ、それはつまり、君は、彼女と一緒に未来へ帰るってことかい?」

「はい、そういうことだと思います」

「思いますって…わからないってこと?」

そうだ。実際、あの本に書いてあった未来への帰り方は本当にこれであっているのかわからないのだ。

「はい、はっきりとは…」

「なるほどな…だが、それを考えると、彼女に君と一緒にいたいと、君と一緒に生きたいと思われなければ難しいだろうな」

「そういうことなら、彼女をしばらく署で、海斗くんと一緒にしましょう。未来に帰るときは一緒なわけですし」

「そうだな、だが海斗よ、変なことをしたら嫌われる可能性もあるから気をつけろよ」

「そんなことしないわ!」

「え?そんなに彼女に魅力がないのかい?」

「い、いや…そういうわけじゃ…」

言葉に迷っていると、二人が笑いを抑えているのがわかった。

「ぷくく…面白いね、君は…」

「うぶだなぁ、息子よ…」

「小声で笑うのやめてもらえます…?」

すると、二人は大きく息を吸い込んだ。

「「わっはっはっはっはーーー!」」

「大声で言えってことじゃないんだよ!」

「まぁ、冗談はおいといて、彼女はしばらくこっちで預かろう。そうするのが、海斗にとっても、彼女にとっても一番だ」

「そうですね、かなり理解が難しいことだと思いますし…」

「ですよね」

いきなり未来に行きましょう!と言ってついてくる人なんて簡単にはいない。しかもこの時代にはもう戻ってこれないのだ。中途半端な覚悟でできるものじゃない…

しかも未来は二十年後だ。この時代とはあまりにも違いすぎる…

例えばスマホはこの時代にはない。だが、未来の女子高生でスマホを持っていない人はほぼいない。

となれば、未来での生活に慣れるまでは、俺が、彼女と一緒に過ごすことになるのか…

あ、あかん…邪なものが頭によぎってしまった。

でもこれは仕方ない、男の子だもの…

とりあえず、彼女を何とか説得しなければ、俺は未来へは帰れない。これはおそらく、避けられないのだ…

「まぁでも、まずは彼女を助けるところからだな。そろそろ着くぞ。もちろん君も行くだろ?」

そう、まずは彼女をか助けないと、何も始まらないのだ。

「はい!でも、いいんですか?」

「ダメって言っても君は来るだろうし、これも君が未来に帰るためだ。そうだろ?」

「はい、ありがとうございます」

「でも、無理はダメだよ?できるだけ僕たちに任せて、君は彼女を助けることだけに集中してね」

「了解です」

「ここら辺だな。ここからは歩いて行こうか」

車が止まったのは、木々に囲まれた山道だった。

「ここっすか?」

「うん、この奥で発信器の反応がある。これなら、歩いたほうが早いと思う。さぁ、急ごう」

「はい!行こう、父さん」

「まだ、父親になった思い出はないぞ」

ついうっかり、呼んでしまった…

「あっ…ごめんなさい」

「ま、それでもいいけどな」

どうやら、満更でもないようだ。

そう言いながら歩いていると、大きな建物が見えてきた。

「多分、あれだね」

建物は見たところ、コンクリートでできた倉庫だ。

「相変わらず、倉庫が好きみたいだな」

「そういえば、あの倉庫もこんな感じだったね、あっちは廃ビルだったけど、こっちは思いっきり倉庫だね」

「おし、じゃあ行くか!植田!海斗!」

「「了解!」」

親父も、俺を呼び捨てで呼んだ。

不思議なことに、こっちの方が、しっくりくる気がする。

俺たちは扉の前に立ち、息を合わせてゆっくりと扉を開けた。

だが、そこには奴らの姿は見当たらなかった。

「いませんね…」

「上にいるかもしれない、行ってみよう」

倉庫の階段を上り、上へと上がっていく。

この前は真夜中だったので、今回はすぐに階段が見つかった。

しかも、今は二人の心強い味方がいる。安心感はあの時とは比べものにならない…

静かに二階を覗くと、そこには、彼らの姿があった。

「いたかい?」

「はい、いました。でも…」

「どうしたんだい?海斗くん」

「一人、いないんです。犯人が」

そこにいたのは、彼女と、藤原と細野の三人だけだった。あたりを見渡しても、山崎の姿が見当たらない…

「もしかしたら、他の場所にいるかもしれない。とりあえず、今いるやつらだけでも捕まえよう!」

「そうですね、わかりました!」

俺は覚悟を決め、階段から飛び出した。

「そこまでだ!この犯罪者ども!」

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