僕が生まれた時
黒豆
第1話
僕は生まれた時、この世界に絶望した。生まれた瞬間に生きることができない程、心臓が弱かったのだ。その時たくさんの注射や、薬品を身体に投与された。ただ、僕はそんな痛みや辛みよりもただ絶望していた。
生まれた時から世界が見えなかったのだ。真っ白でなにも見えない。例えばみんなが当たり前のように見ている空ですら、僕には真っ白にみえる。当時の僕は絶望から逃れるために、世界を真っ白という無にしたのだろう。ただ真っ白の世界では、なにも見えない。
だから僕は罪を犯した。この世界を自分で創造したのだ。空が見えないなら、自分の空を。人間が見えないなら、自分だけの人間を創造してしまったのだ。これは無意識的に起きたことであり、意識的ではなかったにしろ酷いことだ。今も僕は自分の創造した世界を見ている。身体に巻かれた鎖が離れぬように、僕の創造した世界は決して、僕を逃してはくれない。
きっと僕はあの時亡くなっていた方が、幸せだったのかもしれない。それ程鎖は強く、僕の身体を締め付けていった。
自分で世界を創造するには、相当のキャパシティが必要である。人間1人の脳で補えるものではない。だから僕は全てを捨てたのだ。愛や、憎しみ、喜怒哀楽全てを。そういった感情が僕にはわからない。きっとそれは生きることができて、はじめて得られるものだからだ。だから僕は、きっと今も楽しく生きるなんてことはできない。ただ求めていいのならば、僕は本当の世界の色を知りたい。ただそれだけなんだ…。
僕が生まれた時 黒豆 @96001202
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