第20話 閑話(とある商会長2)
まずいことになった。正直、どれだけ譲歩すればいいのかも分からない。最悪、この先全ての取引で不利な条件を飲まされることにもなりかねない。
「会長……」
「……。あのクソ野郎共の商会は、潰せるか?」
「へい。もともと目はつけていましたんで、すぐにでも。やりますかい?」
この際だ。根本から潰す。あの<パライゾ>とかいう商船との取引、成功すればこの街はしばらくは安泰だ。色々と信じられない物もあったが、何よりあの糸と布。あれが継続して手に入るなら、今の情勢でもなんとでもできるだろう。
それが、欲に目が眩んだ馬鹿共のせいで……!
「やれ。徹底的に潰せ。文句を言ってくる奴らには、アレを見せて黙らせろ。クソ、いい取引になりそうだったところを……!」
「了解しやした。今日中には全て」
「ごねてくる所があったら、一緒に潰せ。どうせ裏で手を組んでるんだ。そうじゃなくても、潮目も見れない馬鹿には消えてもらう……!」
「へい。おら、野郎共行くぞ、カチコミだ!」
今までは他との繋がりがあったから我慢していたが、もういらない。ここで私に逆らう商会は全て締め出す。殺してもいいが、さすがに厳しいだろうから、追放で済ませてやるが……。まあ、追放になったらもう生きては行けないだろうな。ここ以外は、どこも無法地帯だ。王都近くまで辿り着けば目もあるだろうが、そこまで辿り着けるくらい優秀なら、そもそも私に逆らうことはしないだろう。別に奴隷になれと言う訳じゃない、私に公然と逆らわなければそれでいい。
丁度、最初の交換で手にいれた
何が何でも、この交渉はまとめないといけない。比喩でもなんでもなく、この街の命運がかかっている。正直な所、そろそろこの街から逃げ出す算段も立てていたのだが。
「……しかしまあ、中々壮観ではあるな……」
あの<パライゾ>の連中。
賊を始末した、と言ってきた時にはどうなるかと思ったが。
そのまま使っていない桟橋で、殺した男達を黙々と吊るし始めたのだ。当然混乱すると思ったから、すぐに
それにしても、20人から同時に乗り込んできた賊を、どうも無傷で全滅させたらしい。3人ほど捕虜にして、こっちに突き出してきた。ありがたく受け取ったが、まあ、彼らも死刑だな。事情は聞き出すほどの事でもない。あいつらも見せしめに、公開処刑にしてやる。
「ひとまず、話し合いは昼から。それまでに、どこまで掃除できるか。少しでも手札を手に入れておかねば」
規模の大小はあるが、ここ以外にも港街はある。そちらに流れられたら、最悪だ。最近はここを含めてどこも落ち目だが、あの交易品があれば持ち直せるだろう。逆に言うと、あれが無ければ、もう駄目だ。
戦争中だというのに、この王国は内乱でボロボロだ。王都の連中が何を考えているのか知らないが、交易で手に入っていた食糧も、みな略奪を恐れて入らなくなってしまった。こちらから出す船で何とか仕入れてはいるが、そもそも船もほとんど接収されて残っていない。学の無い連中は独立だなんだと叫んでいるが、そんなことをすれば一瞬で周辺領主に潰されて終わりだ。
そんな状況で、ここでしか手に入らない高級品があれば。
当然、うまく立ち回らなければ取り上げられて終わりだが、それは私の腕の見せ所。うまく交易を独占しつつ、貴族達に互いに牽制させるよう振り分けできれば。
「ああクソ、何でこう、もっと考えて動かないんだ……!」
少し考えれば、何が最善か分かるだろうに……!
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