第4話 使えない子はリサイクル
「ちょっと、生活するには心許ないわね、ここは」
『
「うん、食料は一番重要だけど、他にいろいろ足りてないのよ。タオルとか、トイレットペーパーとか、あとは……うん、食器とか、替えの下着とか服とか、シーツも無い」
彼女が指折り数えるのを見、<リンゴ>はそういった物資の必要性に初めて気が付いた。気落ちしながら、それらを自身のタスクリストに追加する。
『
<リンゴ>の回答に、彼女は頷いた。
「で、周辺の調査は進みそう?」
『
「へえ。そんな機体が残ってたのね」
『
記録によると、ゲーム初期の
「ふうん……。他に、
『
司令官に問われ、<リンゴ>は現在運用可能な機体一覧を読み上げながら表示した。とはいえ、実際に飛ばせる機体はかなり絞られる。本来、露天滑走路を使用する必要のある大型機体がかなりの数を占めているのだが、どう考えても滑走路を準備できない。
「……なるほど。滑走路が無い、のね」
動くが飛ばせない機体、という分類で改めて仕分けると、司令官はため息を吐いた。
『
「そうね。……はあ、腹ペコは要塞も同じかぁ……」
お腹をさする司令官の姿に、<リンゴ>は申し訳無さを感じつつ、報告を継続する。
『ひとまず、当面確保可能なエネルギー源としては電力があります。バッテリー駆動式または光発電式の機体を優先して動かすのが妥当かと』
「そうね。無いよりはマシってところだけど、仕方ないわね……」
バッテリー駆動式は、どうしても航続距離が短くなる。現在の運用機数では、24時間監視は不可能だ。
「ちなみに、燃料の備蓄はどのくらいなの?」
『航空燃料換算でおよそ5万キロリットルです。全力出撃が7回程度、ですが滑走路がないためあまり意味はない数字ですね。むしろ工作機械などに回したほうが有効利用できると提案します』
「うーん……多いような、少ないような……」
<リンゴ>の予想としては、数ヶ月で無くなるものではないものの、1年は持たないのではないかという感触の量である。当然、全力出撃でもすればすぐに底を突くし、バッテリー駆動式を優先すればしばらく持つだろう。このあたりは、実際に運用を始めてみないと何とも言えない。
「そういえば、敵の痕跡は?」
『
「完全に隠蔽されている……とか?」
司令官に問われ、<リンゴ>は数秒、その可能性についてシミュレートした。
『無視して構わない確率です、
「……なるほど? 考えるだけ無駄ってことかな」
『
観測も予測もできないリスクを恐れても仕方がない、と<リンゴ>は判断した。それに、そもそも
「光発電式偵察機……ああ、スイフトね。スイフトは上げられる?」
『
「オッケー、それでお願いするわ。増産は可能?」
『……
資源備蓄はある。ただし、原子炉の建造を始めているため、その分は回せない。
「……。そうね……今の資源残量が、おおう……。駄目ね、これは手はつけられないわ」
司令官は資源リストを見ながら、肩を落とした。カツカツどころか、普通に足りないと理解したのだろう。機材を運用すれば、必ず故障する。修理のため、資源は絶対に必要だ。残り僅かな資源に手を付ければ、何かあったとき、本当にどうしようもなくなってしまうだろう。
「うーん……。これは、使わない機体を再資源化するしかないかしらね……」
司令官の言葉に、<リンゴ>はその可能性に思い当たった。気付かなかったことに落ち込みながら、今後絶対に運用できないと思われる大型機の再資源化について試算する。
『
試算結果を一覧にして出すと、司令官は大きく頷いた。
「いいわ、<リンゴ>。これはすぐに手を付けましょう。……それから、船舶の建造も考えたほうがいいわね、この状況だと。
船舶。船舶の建造設備は、さすがに要塞<ザ・ツリー>には備えていない。ゲーム時代は、山岳要塞として険しい山間部に建設されたものだ。周囲には湖どころか川すら無かった。
『……。ライブラリを検索、船舶建造に関する情報を発見しました。ドックの建設から必要ですが、10m程度の小型船舶であれば、無理なく建造できると予想します』
「じゃあ、それもやっちゃいましょう。それにしても、とにかく資源が足りないわね……。海、周りは海か……。魚、海藻? 海水から金属を抽出することはできそうだけど……」
司令官のつぶやきから、要塞周辺で見つかった動植物から資源回収が出来ないか、ライブラリを検索する。すると、海藻や藻類からの資源回収に関する情報がいくつか見つかった。
『
「へえ……、どれどれ……。……。ふんふん……。さすがに効率は悪いけど、最終的に日光を資源に変換できるって考えれば悪くないわね。うーん、海といえば海底鉱山とか油田だけど、すぐに見つかるわけでもないしねぇ。よし、じゃあそれもやっちゃいましょう。優先度は高めに、とにかく建設資材が手に入るのは大きいわ」
『
早速、<リンゴ>は指示された作業を開始することにした。どうせ、ほとんどの設備が休止状態だ。エネルギー配分を変更し、まずは再資源化から取り掛かる。短滑走路から飛び立たせられない機体は全て解体だ。滑走路の延伸もある程度は可能だろうが、そこまでして運用する必要のある機体は無い、と判断した。どうしてもというのならば、
「あとは……私の食料、ね……」
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