13 卵の孵化

 パキパキと音は次第に大きくなり、卵は布団の上で殻を破った。

 そして、3割ほど破れた頃、卵が強い光を放った。

 それがようやく収まると、その中心にいたのは…


「…キツネ?」

「クオン」


 艶やかな純白の毛皮を持つ、外見はキタキツネに似たほぼ手の平サイズと言ってもいいほど小さなキツネが現れた。


 ゲドさん、惜しかったですね。今孵りましたよ。……卵の大きさに身体の大きさがあっていないと思いますが…まあ関係ないでしょうね。


 キツネはユージンをじっと見つめると、そのまま肩に飛び乗り彼の頬に擦り寄ってきた。


「〜〜っ! 可愛いですっ!」


 こんにちは!

 ……おや、本音と建前が逆になってしまいました。

 聞こえて方は忘れてください。


「えーっと、んんっ。初めまして、こんにちは。私はユージンです。これからよろしくお願いします」

「コオーン、クウンクオン!」


 キツネは首に巻き付いた。


 名前は……どうしましょうか。

 可愛いのがいいですね。純白…真っ白……真っ白……真っ白? ああ、真白!


「キツネさん、今日からあなたの名前はマシロです!」


 肩にいたキツネ──マシロを抱き上げながら、ユージンは命名した。

 マシロという名を気に入ってくれたのか、コンコンと鳴きながら鼻チューをしてきてくれた。


「~~〜~~~〜~~っ!!!?」


 か、可愛すぎですか!! 顔のニヤけが止まりません!! あぁどうしよう本当に止まらないんですが!


「コン、クオオン」

「? ああ、ステータスですか?」


 何となく漠然とした考えを読み取り、ユージンはマシロを鑑定した。

 ────────────────────

 名前 マシロ 0歳 女 Lv─

 種族 神獣─天神白狐てんじんびゃっこ

 体力 8

 魔力 12

 攻撃 6

 防御 6

 知力 10

 敏捷 9

 主人

 ユージン

 魔法

 風魔法Lv1 氷魔法Lv1 神聖魔法Lv1

 特殊能力

《意思疎通》Lv1《天翔》Lv1《天舞》Lv1《転身》Lv1《主従の絆》

 能力

《引っ掻く》Lv1《噛み付く》Lv1《踏み付け》Lv1《巻き付く》Lv1

 ────────────────────

「マシロ、あなたやはり女の子ですか」

「クゥン」

「…ついでに私も確認しましょうか」

 ────────────────────

 名前 ユージン 28歳 男 Lv4

 体力 36 (108)

 魔力 30 (90)

 攻撃 29 (87)

 防御 12 (36)

 知力 22 (66)

 敏捷 20 (60)

 魔法

 火魔法Lv3 水魔法Lv1 風魔法Lv1 土魔法Lv1 雷魔法Lv1 神聖魔法Lv1

 神獣

 天神白狐

 特殊能力

《記憶保持》Lv3《鑑定》Lv2《思考解析》Lv1《異次元の扉》Lv3《魂魄昇天》Lv1《能力抹消》Lv2

 能力

《対応》Lv9《和》Lv5《整理整頓》Lv5《調理》Lv3《回し蹴り》Lv5《ビンタ》Lv4《怪力》Lv4《疾走》Lv4《体術》Lv5

 ────────────────────

「全体的に上がりましたか…。さて、色々と見てみましょう」


 ユージンはマシロの種族と特殊能力について鑑定した。


 ──天神白狐

 神獣の一体。

 天神と同じ風の力を持ち、高い知性と魔力を兼ね備えている。

 美しい容姿と純度の高い魔力と神力は美を象徴する。

 毛の1本でさえ高く売れるほど高価で希少。

 大器晩成型。


 ──意思疎通

 言葉伝えられない別種族に対し、自分自身の意志を伝えられる。

 レベルが上がると言葉を発することが出来る。


 ──天翔

 空中に浮遊することが出来る。

 使用中は体力が減るが、体力が自動回復する方が早いため半永久的に使える。

 レベルが上がると機動力が上がる。


 ──天舞

 味方のステータスが上昇し、体力と魔力が回復する。

 レベルが上がると上昇率と回復率が上がる。


 ──転身

 身体を武器に変える。

 武器は主人の戦闘スタイルと相性が良いものになる。

 レベルが上がると武器の性能が上がり、装飾が少し変化する。


 ──主従の絆

 呼びかけられればどんなに離れていてもすぐに主人の元に駆け付ける。

 別空間であっても瞬間的に移動出来る。


 フェレイルさんの言っていた武器になるというのは、《転身》という特殊能力があるからなんですね。


 ユージンはマシロの頭を撫でながら言った。


「マシロは可愛いですね。これから頑張っていきましょう」

「クオオン! コン!!」


 ―わたし、がんばる!―


「!!」


 今のは…マシロの声でしょうか? いつか会話が出来ることを祈ってますよ。


「さて、今日も始めますか。マシロ、行きますよ」

「コン!」


 元気よく声を上げると、マシロは尻尾を振って喜んでいた。


 * * *


 その日の午後はとてもゆっくり出来た。こういったティータイムが取れるのはこの仕事ならではだ。

 マシロは物覚えがよく呑み込みも早いため、1度やった事は全て覚えていた。


 そんなマシロが入ったお陰で仕事効率も上がりますし、何より身の丈以上の場所にあるものを取ることが出来るので、思いの外仕事がスムーズに進むんですよね。

 ですが心配があって、私が、次は◯◯の歴史書を読もうと思ったら、いつの間にかその本を頭に乗せて持ってきてくれているんです。何かの拍子に倒れたらと思うと、心配してハラハラしてしまうんですよ。

 いくら神獣とはいえ、まだまだ赤ちゃんですから覚束無いところもたまにあります。怪我することはあまり無いでしょうが、育てる方からすると、情けないですが少し怖いですね。


 しかし、ユージンの心配は杞憂で終わった。何とマシロは、転移者転生者の来ない数日間で大いに成長し、手の平サイズからチワワくらいの大きさまで大きくなったのだ。

 この時ユージンは、動物の成長の速さに改めて驚かされた。


 1年経ったら、一体どうなってるんでしょうかね…。




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