異世界の番人様

小豆

第一章 ワールドゲート

01 番人になりました

 初めまして皆様。私、突然ですが死にました!

 パチパチパチパチー!

 え? 拍手するところじゃない? ええそうですね、そうですとも(笑)。

 ……笑うところでも無い、と。

 まぁそうでしょうね、死んだんですから。

 何故死んだのに話しているのか?

 あ、それ私も聞きたい!

 それでは目の前に人がいるので聞いてみましょう!


「はい、ではお答えください!」

「何を!?」


 はい、見事なツッコミでした。

 さて、あなたはフーアーユー?


「んんっ、あなたは誰ですか」

「フハハハハッ! 聞いて驚け! この余こそ偉大なる創世神カルギエドである! さあ、こうべを垂れて跪くがいい!!」

「お断りしますさようなら」


 ただの変人でしたね、聞いて損しました。

 他に誰かまともな方はいらっしゃらないんでしょうか?


「コラ貴様! 余を無視するな!」

「すみませーん、誰かいませんかー?」

「目の前に余がいるだろう!?」


 いえ、目の前には変質者しかいません。

 本当に誰かいませんか? とてもまともで仕事の出来る方。


 と、思ったらいた。いや、


「部下チョーップ」

「あだっ!」


 颯爽と変質者の脳天にチョップを決めたのは、なんとビックリ女性だった。


 ……今、上から来ませんでした? どうやって降りてきたんですか?

 ここで容姿についてご紹介。

 女性の方は、所謂ボンキュッボンな方です。銀髪と青眼が綺麗な色白眼鏡美人ですね。

 変質者の方は金髪金眼の男性です。ゴールドですね。

 補足しますと、女性なら羨ましいと思うんじゃないかというレベルで髪がサラサラです。

 あと、イケメンですね。


「上司が失礼致しました。どうかお許しくださいませ」

「いえいえ、こちらこそ。大変ですね」

「はい、毎日吐き気がするほど。脳みそガキのじゃじゃ馬ですから」

「なぁ、余はそんな風に思われていたのか……?」


 後ろの方で変質者さんがいじけてますが、ここは面倒臭そうなので無視しましょう。

 まともな方がいらっしゃりましたから。


「質問よろしいですか?」

「はい、なんなりと」

「では、まずここはどこでしょう?」

「あなたが住んでいた地球とは別の世界の空間です。一応聞きますが、死んだことは覚えていらっしゃいますね?」

「ええ、記憶も五感もはっきりしていますよ」

「確認致します。芦屋優二あしやゆうじ29歳男性独身○○社会社員。社内では穏やかな笑顔で周囲を和ませ、マスコット的立ち位置にいる。相談事も受け、男女問わず人気があり、両性から言い寄られることもしばしば。仕事もできるため、次期課長とまで呼ばれていた。しかし、それを目前にした朝出勤時、男児を助けようとしトラックの前に飛び出し死亡。合っていますでしょうか」

「1箇所あまり口に出して欲しくないところがありましたが、間違いは無いですよ」


 本当は1箇所どころか、かなりありますけども。

 私、マスコットじゃありませんよ? 人間ですからね? 

 確かに男性からも女性からも「彼女いる?」とか「好きな人いないの?」などと聞かれたことはありますが……。消したい記憶の1つですよ。それを口に出して言わないでください。頼みますから。

 ですが、それは置いて凄いですねぇ。私、一言もそんなこと言ったことありませんし、彼女にはあったことありませんのに。

 変質者さんの言った通り、神様なんでしょうか?


「実は、折り入って話がありまして…」

「どうぞ?」

「先程も申しましたが、ここは地球とは別の世界の空間です。あちらをご覧下さい」


 指さされた先を見ると、幾つもの扉がびっしりと並んでいるのが見えた。

 宙を浮かんでいたり逆さまであったり、中にはグルグルと回転しているのもある。


 赤、青、黄色と色は様々ですが、ずっと見ていると目がチカチカしてきますね。

 ネオンカラーにパステルカラーですか。そんな扉があるんですね、初めて見ました。


「あの扉一つ一つの先は全く異なっており、開けた瞬間に別世界が広がっています」

「まるで◯こでもドアですね」

「まさにその通り…と申し上げたいところですが、少し違います。一度踏み込めばここへは戻ってこられません。そして、ここからが本題です。あなたには、ここの管理を──ここの番人になってもらいたいのです」

「……はい? 番人、とは?」

「順を追って説明します。ここは、別世界と別世界を繋ぐ門のような役割をしています。つまり、ここにはありとあらゆる世界から転移、もしくは転生してくる者がやってきます。しかし、中には非道な者もいるようで…。転移、転生した世界で悪事を働く者も数え切れないほどいます」

「つまり私は、そんな人が扉をくぐらないように取り締まればいいんですね。ですが、それはあなた方がやればよろしいのでは?」

「我々もそうしたいのは山々なのですが、ここに残っているのは私とカルギエド様だけなのです。加えて、魂の回収をしなければならないのでここに留まることが出来ないのです。申し訳ありません…!」


 ……色々と事情がありそうですね。どうしましょう。

 まぁ、退屈しなさそうですし、やってみるのもまた一興、ですかね。

 生前より沢山の人に逢えそうです。


「そのお話、お引き受け致しますよ」

「ありがとうございます。カルギエド様、引き受けてくれるそうですよ」

「おおそうか! 本当か!」


 変質者さんもといカルギエド様、復活なさったようです。さすが神様ですね。

 神様に見えないというのが難点ですけど。部下にじゃじゃ馬と呼ばれる時点で神様として終わっている気がします。


「貴様、何やら失礼なことを考えただろ」

「まさか」

「さすがです優二殿。遠慮はいりません、じゃんじゃん貶してください」

「フェレイル!貴様は余の部下ではないのか!?」


 彼女──フェレイルさんは良い性格をしていらっしゃる。

 カルギエド様は良い部下を持って幸せですね。


「では優二殿、準備を始めますのでこちらへ」


 フェレイルが手を翳すと、目の前に他とは全く違う真っ白な扉が現れた。








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