太ったよな

「なあ未来、俺らってやっぱ太ったよな」


「全然聞こえなーい」


 今日は台風真っただ中で休校日。

 外に出ることもなくリビングでだれていると未来を見てふと思った。

 あれ? ? と。


「現実を見ようぜ…… 絶対太ったって……」


「うう…… ダイエットしなきゃ……」


「俺もだな……」


 スポーツの秋と言うけれど普段から運動しない人にとってはただ太る秋だろう。

 結果俺と未来が太ったんだからな……


「ダイエットするにしてもどうしよっかー?」


「要は痩せればいいんだろ? だったら食事制限とかでいいんじゃないか?」


「うーん、食事制限はリバウンドしやすいって言うしなー」


 運動だけは絶対にしたくない。

 絶対にだ! だって苦手なんだもん!


「運動は外がこんなだからできないねー」


「よし!」


「ん?」


「あ、なんでもない」


「どうせつっくんのことだから運動は嫌、みたいなこと思ってたんでしょ?」


「なんでわかるんだよ……」


 そんなことより


「どうやって痩せるかだっけか」


「どーしようねー」


 このままだと何の解決策も出ず現状維持になってしまう……

 あ、そうだ!


「代謝を上げてみるのはどうだ?」


「代謝を?」


「ああ、そうだ。 代謝を上げれば何もしなくとも消費エネルギーが多くなるはずだ!」


「それいいね! でも具体的には何をするの?」


 あ、知らない……




「良かったねー、ネットにやり方が書いてあって」


「ほんとだよ……」


 調べたら普通に出てきた。

 まあこれで痩せられるはずだ。 次に学校に行ったら雄二や杏樹をぎゃふんと言わせてやる!



 ピンポーン



「はーい」


 こんな台風の中誰だ?


「どーも、むつ」


「間に合ってます」


 俺はすべてを聞く前にドアを閉めた。

 前のように開けられる隙を与えず完璧に締め切ることに成功した。

 俺も成長したな。


「誰だったのー?」


「お隣りの河合さんだったぞ、台風で大丈夫かって心配してくれたみたいだ」


「それって六実ちゃんじゃん! 開けてあげなよ!?」


「はいはーい」


 俺は嫌々ドアを開ける。

 雨が入ってくるからドアすら開けたくないんだからな……


「ひどいよ紗月? こんなことしてるとおばさんにあることないこと報告しちゃうよ?」


「ないことは報告するなよ」


「えへへー」


 やっぱり俺は成長したな。

 あわてず騒がずツッコめている。

 あれ? これっていいことなのか?


「そういえばちゃんと私のこと覚えてるんだね」


「その件はすまん」


 おそらく記憶喪失のことだろう。

 家が隣なのに六実とは久しぶりな気がする。

 まあ家に入れないからな。 絶対な。


「で、最近太り始めたお二人に報告があります」


「「?」」


 報告? なんだ?


「うちの母が明日から来ます! 一週間だけだけど監視が厳しくなると思ってくださいね?」


「六実のお母さんさ、正直六実よりおおざっぱだよな」


「まあそうだね」


 それって監視の意味あるのか?


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