もう一人の幼馴染

「うわ、すごい眠そうだよ? また書いてたの?」


「未来は元気そうだな……」


「おかげさまでおめめパッチリ!」


「そうか……」


 ほんと元気そうだな、うらやましい。

 そんなことより朝のうちにあのことを伝えておくか。


「なあ未来、俺のことどう思ってる?」


「一番好き」


 ッ……

 殺す気かよ。


「あのな、気持ちはうれしいんだが俺は未来のこと姉弟のようにしか思えないんだ……」


「そっか……」


 あれ、以外にそっけないぞ。

 そりゃそうか、普段の俺を見てるんだもんな。 幻滅しても仕方がないか。


「ま、まあ これからもよろしくな」


「うん……」


 やばいぞ、これは気まずくなるやつだ……


 俺は逃げるように一人で学校に行った。


「おはよ紗月! なんか元気ないけどどうしたんだ?」


「ああ、おはよう雄二 なんでもないよ」


「そうか、ならいいんだが」


 さすがに元気が出るわけがない、しかし親友の頼みを無下にはできない。


「今日の放課後に舞先輩紹介してやるよ」


「お、まじか。 服装とかきっちりしなくちゃな」


 雄二は悔しいが俺より全然イケメンだ、むしろなんで今まで彼女がいないのか不思議なくらいだ。


「何の話してるのー?」


「ああ、今な雄二の…… って未来!?」


「そーだよー、未来だよー」


 なんでこんなに普通でいられるんだ!? さっきの今だぞ!


「お二人さんを邪魔しちゃわりーな、またあとでな紗月」


 待ってくれ、雄二。 俺を一人にしないでくれー!



「ねえつっく、紗月? 私ね考えたの、紗月がどう思っていようと私は紗月が好き!だから紗月から好きって言ってくれるように頑張るね。」


 こりゃ、筋金入りだな。 お手上げだ。


「せいぜい頑張れよ」


「うんっ!」


 これで一件落着なのだろうか……

 まあ、いいか。


 さて、あとは舞先輩だけか、ちょっと行ってくるか。




 なんかちっこいのが走ってきたぞ。


「後輩くん待ってたよ! それでどうだい? いい報告かい?」


 いきなりかい。

 まあ、一応その通りなんだが。


「今日の放課後に雄二と来るので準備しといてくださいね」


「今日なの!?」


「え、だめでした?」


「いや、心の準備が……」


 かわいいかよ、雄二が惚れるのもわかるかもしれない。


「まあ、そういうことでー」


 授業の時間が迫ってきたので教室に向かうことにした。



「あいたっ!」


「おっと」


 曲がり角で誰かとぶつかってしまった。


「すみませんっ!」


「こちらこそって、杏樹?」


「あ、なんだりゅーくんか、謝って損した」


 おい、ひどいな。


「泣くぞ」


「ごめんごめんって」


「なんか杏樹とちゃんと話すの久しぶりだな」


「確かにいつぶりだろうね」


 彼女は一応近所で幼馴染で間違いはないんだろうが、中学で別々になってしまったのでちゃんと会うのは。

 ショッピングモールを除いて五年ぶりになる。


「ねえ、りゅーくん。 みーちゃんとどういう関係なの?」


 やっぱりきたか。


「幼馴染のよしみで買い物に付き合わされただけだよ」


 こう答えるしかないだろう。


「じゃあ、幼馴染の私とも一緒に出かけない?」


「えっ……」

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