花子のトイレさん

 ヤベッ。下痢が…

勢いよく駆け込んだのは、学校3階のトイレの中の手前から3番目。ふと思い出す。学校の七不思議の1つに『トイレの花子さん』と言うトイレに絡んだ怪談話がある事を。


 それを思い出した直後、手前側から順番に扉を3回ノックする音が聞こえてくる。

あれ?ちょっと激しくないか?

真正面からノックが聞こえる。恐る恐る

「花子さんいらっしゃいますか?」

と聞くと。

「うん」

よく考えたらセリフはあってるけど、状況が逆だ。


 まだ出てくる。今日明日はアイス控えておこう。

またノックが聞こえてくる。より激しくなって。と言うか焦りが混じって。

「花子さんいらっしゃいますか?」

「うん。と言うか時間がないから早くできる?」

「どうして?」

「間に合わなくなるから」

「何に?」

「早く開けて」

「いや。だから何に間に合わないの」

「もう開けるよ!!」


 次の瞬間【バン】と音を立てて扉が開く。

「やめろや!!」

とつっこむが早いか手を引かれ隣のトイレへと押し込まれた。

隣から

「ただいま!!」

と声が聞こえて来た。ただいまねぇ。

………………ファ!?

ただいま!?

下痢も収まり、気になりすぎていることを聞く。


「えっと…花子さんってここに住んでるの?」

と投げかけると、トイレから

「そうよ。ここが私の定住地なの」

と返ってきた。

「え?」

「妖怪役場に登録済みよ。○○市立○○小学校○館3階3番目トイレ。ってね」

「あそこまで焦ってた理由はもしかして…」

「そう。門限よ。あ。さっきはごめんね。下痢してたんだもんね。若干門限遅れしちゃったから、あなたが下痢してた事を伝えたんだけど、『ちゃんとそうやって言ってくれればいいから待ってあげなさい』って言われたから今度からちゃんと待つね」

「あ。ありがとう。あ。そっか。一部では家族が居るって話だもんね」

「そう。おじいちゃんとか弟とか。よく呼び出し食らうから面倒臭いって愚痴聞かされるんだけど、1番呼び出し多いの私なんだけど。って思うわ」

「確かに…結構大変そう…」

と言うと何も無いところからぶんぶんと頭を上下に振る気配を感じる。


「先回りとか大変なのよね」

「待って。1番重要な事聞いた気がする」

「何?」

「花子さん達一家って先にトイレに居るって事なんだ。って話」

「そうよ。いい感じのタイミングから3番目トイレの中に待機してるのに手順にミスがあったり、予定変更でやらなかったりなんてされた時にはもう!! 誘われなくとも『首絞めごっこ』したかったわよ。あと、関係ない人が入って来た時一瞬で隠れなきゃ行けないのも面倒だわー」

「あっ。ごめん。次の授業始まっちゃう」

「長居させてごめんね。また下痢した時にでもお話させてね」

「わかった。色々辛い思いとかしてるみたいだし、話くらいなら聞くよ

「じゃあまた今度。あなたなら呼びかけてくれれば手順を踏まなくても答えるわよ」

「その時になったらまた声かけるね。じゃあね」

「ばいばい」


 花子さんの意外な一面を知ったな〜。意外と優しいのね。花子さん。あとお母さん達も。


 後で、愚痴を聞いたりしてくれる子達を作らなきゃね。コソッと噂を流した結果その場所は『花子のトイレさん』と呼びれるようになったらしい。驚いた事に先生公認で。

良かったね。花子さん。

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