古椿
序章
ずいぶんと昔の夢を見た。
重いまぶたを無理やりに開くと、思った以上に薄暗い。夜は明けきっていないようだ。朝には改善していると己に言い聞かせて床に就いたが、残念ながら相変わらず不快感は残ったままだ。軽い頭痛がするのは、あまりよく眠れなかったからだろう。
乱れた髪を手櫛で整えると、のろのろと立ち上がり雨戸に指をかけた。そこで息を詰めるように固く目を閉じる。細く息を吐きながら、心臓の鼓動に合わせてやってくる頭痛をやり過ごす。
強い拍動痛が去るのを待って、慎重に雨戸を開けると、薄い紫がかった空が目に映る。ひやりとした大気と夜明けの微かな光に映る紫苑の横顔は、明けはじめた東の空のように白かった。
「
ゆるりと頬をなでる白露の風に、紫苑は吐息の中でその名を呼んだ。
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