キュルケとの出会い⑧

「じゃ、いくか。頼むからおとなしくしててくれよ」

「きゅっ!」


 頼りがいのある自信満々な声がかえって不安を煽るな……。

 だがそれでも、なにかワクワク點せられている自分もいた。いつもと少し違う森の帰り道を新鮮な気持ちで進む。


「きゅきゅー!」

「ん?」


 帰り道、歩き出してすぐ肩から飛び出すキュルケ。

 気まぐれで野生に戻るかと思ったら俺を誘導するように森の中に誘い込んでいた。


「追いかけてこいってことか?」

「きゅっ! きゅっ!」


 着いていかないと振り返って呼んでくるので仕方なくついていく。


「なんだよ……」


 自由なやつだなあ。と少し呆れながらついていくと……。


「きゅきゅー!」

「え……?」


 キュルケに連れてこられた先にあったのはまだ手がつけられていない薬草たちだった。


「俺がこれ集めてるって、いつわかった?」

「きゅきゅきゅー!」

「何でもお見通しってか……」


 すごいなキュルケ……。こんなにも早く活躍してくれるとは。

 それにこの場所の薬草、品質もめちゃくちゃいいし、普段とったことのないような高級ポーション用のものまで混ざっている。


「でかした!」

「きゅっ! きゅっ!」

「今日はごちそうだな!」

「きゅきゅー!」


 そういえばスライムって何を食べるんだ……? と思っていたら、俺が薬草を摘み取る横でキュルケももきゅもきゅ薬草を食べ始めていた。


「それが餌なのか」

「きゅきゅぅ」


 幸せそうな顔を見ると一番高い薬草を食べているのもまぁ、いいかという気持ちになった。

 もともとキュルケが見つけたもんだしな。


「これでも三日分くらいはあるしな」


 もし明日からもキュルケが活躍してくれるようなら、いまの三倍で実績も稼ぎも生まれるわけだ。

 とは言っても、あんまり目立つのはまずいしなぁ……。今日は調子が良かったと言っていつもの倍だけ持っていってみるか。

 いや一日開いてるしなんとかなるか。

 いろいろ考えているとキュルケがまた器用に肩に登ってきていた。


「満足したか?」

「きゅきゅー!」


 残りを刈り取っていくことにする。

 もちろん根こそぎにしたりはしない。

 ここも巡回ルートに加えて、何日かしたらまた刈り取りに来れる程度にしておいた。


「戻るか」


 キュルケを連れて、二日ぶりのギルドへ向かった。

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