役割分担
その後ティエラから参加者に向けて神国および俺の次期領地を中心とした王国との交易の解禁や、なぜかどさくさで結婚の発表をされてどたばたとしたのだが……まあいいか。
もうなるようにしかならない。
ティエラとの子は俺の世継ぎ争いには加わらないが、エルフの次期王を期待される。
性欲の概念があまりないエルフたちは子作りは仕事だと割り切るようだ。
ひたすら悪意なく頑張れと声をかけられる祝勝会となってしまっていた。
◇
「それでは、しばらく別行動ですね」
「ええ。なるべく早く邪龍の巣を……」
「お気になさるな。私もどんが殿に頼んだ刀を待ちたいですし、かの邪龍はきっと私を感じております。私が現れるまで、結界を破ろうとはせぬでしょう」
アオイの言葉の裏には、次にアオイが近づいた時、強固な結界を破ってでも出てくるという意図を感じた。
実際俺も、そんな予感はある。
「しっかりと準備を整え臨みましょう。封印というものはあれにとっては力を蓄える休息のようなもの。もはやその力、想像もできませぬ」
「おいおい……封印前でSにプラスが七も八もつくっていってたのにか……」
頭が痛い。
どこまで強い相手と戦わないといけないんだ……。
俺のそんな考えが顔に出てしまったのか、アオイがうつむきながらこんな事を言う。
「できれば私一人でなんとかしたいと考えております」
やってしまった……。
「馬鹿。俺たちはもうパートナーだぞ。絶対一緒にいく。勝手に行ったら許さないからな」
「りんと殿……」
顔をあげたアオイの表情にまたやらかしたかと思った。
アオイの顔が泣きそうだったから。
「ありがたい……」
どうやら余計な心配だったようだ。またうつむいたアオイの頭をぽんぽんと撫でておいた。
「じゃあ……ティエラはエルフの国を、バロンとベルは神国か」
「あ、私も今回はティエラのところにいこっかな!」
ビレナが告げる。なにか面白そうなものを見つけたんだろうか。
となると残るのは……。
リリィとアオイか。俺たちの役割は自分たちの領地の開拓ということになる……らしい。
「私も本来神国に行くべきなんでしょうが……」
「心配するな。必要になればリント殿と共にすぐ呼ぶ」
バロンはほんと、内政に関しては抜群に頼れる存在だった。
「私は政についてはこの国の常識を知らぬ故……今回は領地開拓を進められればと」
「ありがとう」
アオイは確かに文化が違うしな。
「カルメル卿や他の周辺貴族にもうまく協力を仰げば問題ないでしょう」
「ならそうするか」
リリィ先生の言葉に基づいて方針が決まる。
「そろそろご主人さまの最初に授けられる爵位や勲章も決まってくるころでしょうし」
「ほんとになるんだなあ……貴族に」
あれ? もしかしてビレナってそういう面倒な儀礼系に参加したくないから逃げたのか……?
「にゃはは。じゃあそれぞれさっさと済ませて、いつでもリントくんのところに再集合できるようにしておこうねー!」
逃げるようにエルフ達と遊ぶように森に駆け出すビレナ。
らしいと言えばらしいな。
「頑張るか」
「ええ」
リリィとともにまず自宅に向かうことになった。
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