ドンガ
エルフらしさの薄いドンガが膝をついて言葉を続けた。
「この度は我らの未来を切り開いてくださり、誠にありがとうございました」
「いやいやそんな大したことは……むしろ森、焼いて悪かったな」
「いえ。あれは必要なことであり、また我らにとっても決してマイナスばかりではありません」
「そうなのか」
聞けばもう聖域が力を失っていたことは、暗黙の了解になっていたらしい。長老たちは頑なにそれを認めなかったが……。
焼き畑とおなじで、新たな生命を芽吹かせなければ自分たちも危ないと感じていたようだ。
新たな生命には新たな精霊が宿る。精霊たちがまた力を与えてくれる。それがエルフたちの本来の生活だった。
長老たちはいつの間にか変化を恐れるあまり、必要な変化すら受け入れられなくなっていたと、そう話してくれた。
「数千年の時を生きればそれもやむなしかと……」
「まあそうだよなあ。ところでドンガ。そろそろ顔をあげてくれよ」
「はっ。恐れながら……」
顔を上げたドンガは、ひげと大柄な体躯以外、エルフの持つ整った顔立ちをそのままにその顔にとどめていた。
なんともアンバランスだな……。
ただ顔が整ってるのは羨ましい限りだった。
「ご主人さまのお顔、私達は大好きですからね?」
「心を読むな」
リリィにツッコミを入れてからドンガに向き直る。
「見てたけど、鍛冶師か」
「はい。ですが森は火をあまり好みませぬ。こうして知識と身体ばかりぶくぶくと膨れてしまい、実戦からは離れて久しいのですが」
「ならうちに来ないか」
「良いのですか!?」
領地を持つというのならいてほしい存在の上位に入る鍛治師。本人も外への興味も強いのならと思い声をかけたが狙い通り行けたようだ。
エルフの寿命からもたらされる膨大な知識、ドワーフの血が生み出す鍛冶師としての才覚。
申し分ない戦力だ。
ということをリリィから言われていたので誘った。
「未開拓の領地だ。苦労するぞ?」
「それはこちらでもおなじこと」
「それもそうか……いいか? ティエラ」
「ふふ。いいわよ。むしろ何人かは送り出すつもりだったわ」
「そうなのか」
あの気さくなエルフたちが領地に来るのか。
「楽しくなりそうだね! リントくん!」
いつの間にか背後にきていたビレナに後ろから抱きつかれながら言われる。
「そうだな」
色々とわくわくしているのも事実だった。
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