ギルドの偉い人たち

「じゃ、時間もできたしギルドにいこっか」

「あー、そうだな」


 色々やることはあるな。ついでだしバロンも呼び出しておこう。


「諸々整理して、王都ギルドに集合ですかね」

「ご主人のランクが楽しみだな」

「そういえばベルちゃん、登録するの?」


 ベルの立ち位置は一番むずかしい。召喚された悪魔であり、場合によってはカゲロウやギル、キュルケと変わりない。


「ベル、どうしたい?」

「ん? 私が決めて良いのか?」

「まあ、本人次第だろうなと思って」

「そうか。聞いている話では登録しておいたほうが役には立てそうだな」


 ベルは空間魔法を駆使して基本的に自由にふらふらと抜け出ては、こうして情報をアップデートしてきている。

 結果的に今のパーティーで一番常識的なのはベル悪魔という、意味のわからない状況が生まれていた。


「じゃ、登録しよう」

「そういえば、竜って人化できるんじゃないの?」

「ん? そうなのか?」


 ビレナの言葉を受けてギルを思い浮かべる。今はフレーメルの家に戻ってるはずだ。


「竜種は月齢を重ねれば他種族への変化ができるのは有名です」

「そうなんだ」


 初耳だ。

 いやよくよく考えたらたしかに、物語に出てくる竜はみんな人型になれた気もする。竜が姫と結ばれて皇子になる物語とか、多かった。


「ギルってメスだよな?」

「ふふ。心配するのそこなんだ」

「ちなみにメスですが、まだ子どもですよね」


 メスか。よかった。

 なんとなくこう、オスで人型になられたときに嫌な予感がする。こうほら、平気で俺を掘ってきたり、しそう。


「リントくんの力があると、近いうちに人型になりそうな気がするんだよなー」

「竜種だとエルフの森にもたまに訪れるわね、人型の子が」

「そうなんだ」

「大体3000歳を超えてるから、ギルちゃんだともう少し難しい気がするけれど」


 ティエラが言う。なるほど、もう基準がわからない。


「はやくリントくんも私も、寿命の件はなんとかしないとかなぁ」

「そうね。次の目的は森の奪還かしら」

「そう考えると、早く強くならないとですね。ハイエルフに勝てるくらい」


 このメンバーが勝てない相手など想像すらできないんだが、それでも強くなる必要はあるらしかった。


「とりあえず、Sランクパーティーにしちゃおっか?」

「とりあえずの話なのか……?」

「ご主人さまがCランク、ティエラがBランク、ベルちゃんとバロンがこれから登録ですか。おそらく今回のことを考えればBランクからスタートだとは思いますが、問題はそこから先ですね」


 俺もBランクになる前提で話が進んでいる。

 おかしい。


「ま、とりあえずいこー!」


 ビレナの掛け声にあわせて移動を開始した。


 ◇


「何かピリピリしてるねー」


 王都ギルドに入るといつもとは違う雰囲気を俺でも感じ取れるほどだった。


「とりあえず行きましょう」


 リリィに従い全員で進む。俺が一人できたときには感じられない視線を感じていた。


「これが高ランカーの目立ちかたか……」

「リントくんももう、それなりに有名人じゃないですか?」

「そうなのか?」


 ギルドの目線を追うと「なんであいつがこんなメンバーに?」という視線を感じるが、その辺りどうなんだろう。

 ビレナは王都では有名なSランク冒険者。リリィは聖女。バロンも有名人だ。

 そしてティエラとベルは見た目がすでに可愛いので目立つ。それ以上に強者特有の風格もあるためそれぞれギルドの人間が一目置いているのが分かる状況だった。


「ああ、ビレナさんたち! マスター!」


 こちらを見た受付嬢が慌てて奥の応接間に入っていく。

 ほどなくしてギルドマスターのヴィレントが現れる。なにやらぞろぞろと、偉そうな人たちを引き連れて。


「ほう……あれが噂の」

「しかしあの少年は特段何も感じませんな」


 ジロジロと嫌な視線を浴びる。


「まあ、なにはともあれ見せてもらいましょう」

「私はあの新たなSランクというのも疑問を感じますなぁ」


 どう見ても歓迎されていない。ビレナが今にも動き出しそうなオーラを感じ取り、慌ててリリィに目配せした。


「あれはギルド本部の幹部たちですね……」

「本部?」

「王都ギルドを含め、王国内のギルドを取り仕切る貴族たち、というところです」


 会話にビレナが首を突っ込んでくる。


「で、あれ、強いの?」

「そういう基準じゃないです」

「じゃあいざとなったらみんな、殴れば勝てるんだね」


 それで何が解決したのかわからないが、ビレナの怒りは収まったようで安心した。

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