54 作戦会議?
Aランクの戦闘能力は一般的な兵士のおよそ1000人分と言われている。
危険度Aのドラゴンを討伐する場合、一般的な兵士だけをぶつけ続けたとすれば1000人の犠牲が必要ということになる。
「私、リントくん、リリィ、ティエラで1人……ややこしいね、1万人倒せば大丈夫だね?」
「ちゃんと計算してくれ……」
冒険者はBランクに大きな壁がある。
Dランクが一般的な兵士のレベルとされ、Cランクはそれが10人束になって良い勝負という基準。ここまではまぁ、魔法やスキルを思えばある程度想像できる範囲内だ。
「私も数に入れろ!」
「じゃあベルちゃんも1万人ー!」
「敵が足りないわね」
Bランクは兵士100人に相当する力を持つ。100人、しかも鍛えられた相手を100。10人くらいならたまたまとか、一発の火力とか、少し頑丈なガタイとか、そういう一芸でいける範囲だが、Bランクに偶然はない。
これがBランク以上が特別視される理由。Bランクより下のランクではその上に歯が立たない。
単純計算ならCランク10人でBランクは倒せるんだが、実際の冒険者同士の戦力差はそれ以上の開きがあった。
「禁呪を使ってても領民ならCランク相当だよね?」
「私の聖魔法とベルちゃんの闇魔法、どちらが当たるかはわかりませんがそれだけでDランク以下に弱体化できますしね」
戦いになればBランク以上がいなければ数など関係ないわけだ。
それこそDランクだけならビレナ1人で3万人を相手にしても負けないだろう。
「最悪の場合でも我々は飛べるからな」
「ギルちゃんに乗ればいいのよね?」
だからこのメンバーに気負いはないし、むしろ通り道だからついでに蹴散らしていこうくらいの軽いテンポで話が進んでいた。
「私は行かなくても良いんだな?」
「そうですね。バロンにはこちらのいざこざの処理の方を優先してもらいたいです」
こうして戦力を温存するレベルで余裕がある。
「何かあればすぐ呼べ」
「ふふ。こちらの心配よりも神国をどうするかの心配をしていて大丈夫ですよ?」
「それもそうだな……」
国は2度のクーデターを受け、すでに辺境まで影響が出ている。これを立て直すほうも大変なことは間違いなかった。
「じゃ、いこっか」
「グルルルルゥゥウウウウ」
心なしか嬉しそうなギルに乗り込み、出発する。
「飛ぶとすぐ見えるねー」
ビレナの言葉の通り、すでに国境付近に瘴気を漂わせる集団を確認できた。
神国に入るには森を越える必要があるが、急ぐに越したことはないだろう。
「さてと、真面目な作戦を決めましょうか」
「えっ、1人1万でいいんじゃなかったの?!」
ビレナは本気で言っていたらしい。まあそれでもなんとかなるんだろうけどな……。
「私とベルちゃんがまず、解呪ができるかやってみるね」
「そもそもあの瘴気だけでは何があったかわからんしな」
相反する聖属性での解呪は一般的だ。一方闇魔法同士は力差が大きければ相手の魔法を無理やり壊すことができる。つまりベルの方は力技ということだった。
「じゃあリントくんと私とティエラで1万ずつ!」
「それでも良いんですが、ビレナ、2万いけますよね?」
「もっちろーん!」
数が増えて嬉しそうだ。
「こういうのは指揮官をとったほうが勝ちですからね。ご主人さまには直接そっちを叩きにいってもらいましょう」
「え?」
「なるほど、いいわね」
戸惑う俺を無視してティエラが話に乗ってしまった。
「ご主人さまに行ってもらうのは向こうの奥の手があった時に最も打てる手立てが多いからです」
「そうなのか……?」
「いざとなったらバロンでもベルちゃんでも呼んじゃってください」
「なるほど……」
確かにそういう意味では俺はイレギュラーな可能性が1番高いところに行くのが正解に見える。
「もう一つの理由は単純で、辺境伯に対して一番効くのが、ご主人さまが国王と交わした盟約です」
「あー」
「まあもちろんこれは相手が正気だった場合に限りますが……」
このタイミングでこの手段に出たわけだ。正気ではないだろう。
「ま、行ってみないとわからないよね!」
「そうですね」
「人間の相手なんて何年ぶりかしら。楽しみね」
それぞれやるべきことを確認しながらギルの上で思い思いに準備を始めた。
全員特別危機感は持っている様子はない。ただ俺だけはこのメンバーについていくだけでも精一杯のCランクだ。入念にカゲロウとキュルケと一緒に準備をしておいた。
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