44 新メンバー

「ティエラだけ逃げてて大丈夫なの?」

「むしろ私が逃げてないとまずいの。長老たちは私さえいなければ森を出ようとするエルフはいなくなると考えてるし、実際エルフたちもそんなもの」

「なるほど……」


 エルフに寿命の概念はない。1000年でも1万年でも生きるものたちにとって俺たちが生きている間の出来事くらい大したことはないらしい。


「ま、だから私たちのことはそんなに急がなくていいわ」

「じゃあしばらく一緒に楽しんでればいいよね」

「そうね。ちょっとお邪魔させてもらおうかしら」


 フットワークの軽い女王様だった。


「じゃあまずはリントくんの家に戻って、そこでリントくんと一緒にランクをあげよっか」

「ふふ。楽しそうね。やっぱり森の外は」

「で、ハイエルフを倒せるように強くなろう!」


 ハイエルフってどんくらい強いんだろうなぁ……。


「ベルを倒せるようになったらいけるくらい?」

「条件次第だろうな」

「ベルってテイムのおかげで結構強くなってるはずだよね?」

「それでも悪魔は制約が多いからな。全力であれば森ごと焼き払えばいいにしてもそうもいかぬとなれば、な」


 なんだかんだベルがかなりこちらの常識に寄せてくれているのが嬉しい。と、いうよりビレナとかリリィよりかなり常識的だ。次がバロンか。闇魔法の適性が高いほど常識のあるパーティーってどうなんだろうか。


「待って、テイムで強くなる……?」

「あ、ティエラも気になる?」

「まさかこの子も?」

「そうだよ、星の書のテイマー」


 ということはあれか。


「そうよ。私は弓術士と、精霊魔法の章も修めたわ」

「2つも?」

「たまたま相性がよかったのね。あとはまぁ、みんなより時間もあるし」

「なるほど……」


 そりゃビレナたちより現時点でも強いのが頷ける。あれに関わってると強さの基準がおかしくなるのはよくわかっていた。


「テイム、私にはしてくれないのかしら」

「え?」

「せっかくなら私もしてほしいのだけど」

「いやいやそんな簡単に……」

「ベルちゃんですらあっさりできたんだからティエラも大丈夫だと思うよー?」


 そういう問題じゃない。


「あ、やっぱり御礼が必要よね。何がいいかしら」

「むふふー。なにしてもらうー? リントくん?」


 ニヤニヤして聞いてくるビレナ。言わんとすることはわかる……。神々しいほどの美貌だ、したくないわけではないが……。


「リントくんは奥手だからなー。あのね、ティエラ。どうせテイムされたら抵抗する気もおきなくなるから、私たちはみんなリントくんの女になってるよ」

「へっ?」


 言い方他になんとかならなかったんだろうか……。ティエラも顔を赤くしてちょっと引いてるぞ……。

 でもビレナの知り合いでこんな初々しい反応する子がいたのは意外だった。


「どうどう? ティエラもなかまになる?」

「んー、でも私、貧相な体つきだし、エルフって欲が無くて経験もないのよね」


 顔を赤くしてチラチラこちらを見る絶世の美女。なんかこちらも気恥ずかしくなってくる。


「初々しくて可愛いねーティエラ」

「こんなのでもいいのかしら?」

「ふふー、どうどう? リントくん」

「それはもう……ぜひ……」


 欲望には素直に従った。


「じゃあ……こんなだけど、お願いしちゃいます……」


 顔を赤くした美人というこれまでにないパターンに色々と刺激される。


「あ、あとさ、ついでにリントくんの寿命、なんとかなる?」

「あら、そうね。せっかく初めての人なんだし、長く一緒にいたいわね」


 寿命ってついででなんとかなるようなものなのか。


「秘術だから森に戻らないとだめだけど、いずれ必ず」

「えっと……ありがとうございます?」

「ふふ。では、よろしくおねがいしますね。旦那さま」


 旦那さまと来たか……。あれ? エルフの女王の旦那って……?


「うぶな女だの。空間を仕切ったからまずは2人で楽しむと良い」

「えー。私もしたいー」

「お主は後だビレナ」

「じゃあベルで我慢するかー」

「我慢ってなん――ちょっ! 急に触るな! やめろ! ご主人ー!」


 なんか妙な雰囲気になってしまいそうだったのでティエラの手を引いてベルの作ってくれた仕切りを越えてお言葉通り2人で楽しませてもらった。

 終わった後恨めしげに見つめるベルとまだまだ飢えたビレナにもう一度襲われたがまぁ、それも含めて良かった。

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