2 まさかの誘い
「じゃ、おすすめされた依頼を見ていくか」
「きゅっ!」
ギルドの横にある依頼掲示板に向かっていると、納品を終えたビレナと目があった。話を聞いた後だと高ランクの冒険者と対面している緊張感のようなものがある。
そういえばあのバカでかい魔物も、コカトリスの亜種だったはずだ。ただのコカトリスで危険度Aクラス。亜種ということであればそれ以上だろう……。
「あっ! さっきの! ごめんね? 怪我はなかった?」
「あ、あぁ……」
ちびっ子にしか見えていなかったが近くに来ると大きな目がくりくりとかわいい。
辺境にいた俺からすると珍しい獣人の、それもかなりの美少女が触れるほどの距離に近づいてきた。というかペタペタと身体を触られている。不覚にもドキドキしてしまった。
もうこうなると獣人がどうこうは関係ない。女性に縁のなかった俺には刺激が強い。
「良かった……ねえ、テイマーだよね?」
「そうだが……?」
ひとしきり俺の身体を触ったビレナがようやく身体を離した。
テイマーと獣人の関係ってどうなんだろう? テイマーに人や亜人を従える力はないので気にされることは少ないとはいえ、一部の獣人はテイマーを敵視していると聞いている。
だがそんな俺の心配を他所に、ビレナから放たれた言葉は俺だけでなくギルド中に衝撃を与えた。
「私とパーティー組まない?」
「はぁっ?!」
突然の誘いにギルド中が騒然となる。
それもそうだろう。さっきのハゲ……ディグルドから聞いた話じゃ連日の誘いに一切答えなかった飛ぶ鳥を落とす勢いのトップランカーが突然パーティーを自分から申し込んだんだ。
「なんでまた……?」
「んー……匂い? なんか君はいい匂いがするから」
ギルド中のおっさんたちが腕を上げて自分の匂いを確認し始めた。
「ま、いいじゃん? どう? 悪くない話だと思うけど?」
「確認したいけど」
「ん、いいよ。何でも聞いて!」
「トップランカーってことは何か目的があって依頼をこなしてるんじゃないのか? 俺と組んだらそれが遅くなるだろ?」
例えばSランク昇格。彼女の話を聞けばそれも十分可能な気がする。
いま大陸で10人前後しかいないはずの伝説の存在。
「んー、それ、さっき達成したから大丈夫」
「え?」
「ほら、私もう、Sランクなの」
冒険者カードをかざして誇らしげに胸を張る。そんなに目立たないがそういう目で見れば有るようにも見えてく……いやそっちじゃない。
掲げる冒険者カードは白金を基調に、光に反射して7色に煌めいている。紛れもない、Sランクの冒険者カードだった。
「で、どうする? 今ならちょっと、手伝ってあげられるよ?」
「よろしくおねがいします」
迷うはずもなかった。
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