2649年12月2日18時30分 東叡國 「The fun is mine②」

 (あの男、一体何者なんだろうなぁ。俺の早抜きに対応出来る人間が存在するとは・・・通常の鍛錬のみで、あの反応を?普通なら有り得んが)


 先程松野と対峙フェイスオフした櫻田はそんなことを思案していた。


 一方松野は、引き続き周囲を警戒しながら食事ぎしきを堪能している。

 しかし彼もまた、櫻田の懐にあったモノについて考えを巡らせていたのだった。


(先刻、銃を向けてきた男・・・櫻田だったか。抜きざまに心の臓を正確に狙ってきた。それにあの回転拳銃・・・今時ああいったものを使用するのは”モノ好き”か”準軍パラミリ”ぐらいのものだろう・・・)


 準軍パラミリとは準軍事組織の俗称であり、通常政府クニの國家保安隊や國防省國家親衛隊など治安維持を行うものを指す。

 そういった組織は建物の中など閉所での戦闘を考慮し、発砲しても排莢がされない回転拳銃や複数の銃身(4連装のものが多い)を持つ銃を好んで採用していた。


(恐らく官憲か何かなんだろうが・・・技量は相当なものだ。まさか噂に聞く慈安部隊ではないだろうなぁ)


 残念ながら松野の懸念は的中していた。

 この回転拳銃を持つ男、氏は櫻田、名をひょうという。

 精鋭内務省慈安部隊の隊員の一人である。

 当然、近接格闘の技術は相当に高く、拳銃や刀剣の扱いにも長けているのであった。


 思考を続ける両者であったが、共に供された料理はしっかりと味わっている。

 それだけ「サムハラ」の味は段階ステージが高いものなのである。


 そんな中、食事処に訪れた招かれざる客達―。

罪業清浄ざいごうしょうじょうッ!」


 躰にピッタリと張り付いた漆黒のスーツ、そして首元に着いているエボナイト製の徽章。そこに象られているのは頂上の法輪に下向きの三叉の槍。

 まさしく教団”S”の刺客である。


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