モテるための黄金パラメータ配分とは

ちびまるフォイ

年相応に振り分けるべきポイント

>おめでとうございます! アビリティポイントを手に入れました!


家で料理を成功させたことにより日常経験値を獲得。

自分のどの値に振り分けるかを考えた。


「うーーん、どうしようかなぁ。

 やっぱり一芸にひいでたほうがいいよな」


俺はポイントすべてを「数学」につぎ込んだ。


学校がはじまると数学に全振りした俺の才能は大いに爆発。

テストは問題文を見る前に答えがわかってしまうほど。


「高校数学でこのレベルか。フッ……日本の教育もまだまだだな」


数学のテスト時間中、早々にペンを置いた俺は窓の外を眺めて時間を潰した。

にもかかわらず満点を取るスマートさに惚れる女は数しれないだろう。


テスト返却後、俺の数学テストはものの見事に満点。


廊下に成績上位者が張り出されたことで、

俺は他のクラスの女子からも一目置かれる存在になるわけだ。


「これからは告白されたときに相手を傷つけない断り方を考えておかないとな」


などと、放課後の教室で告白待ちをしていると先生に呼び出された。

数学大学からのヘッドハンティングでもあったのかと聞いてみると先生はため息をついた。


「お前……成績悪すぎる……このままじゃ落第だぞ」


「え? 数学のテストは満点だったじゃないですか!」


「バカ。それ以外が絶望的すぎるんだよ。

 国語、科学、生物、英語、体育……などなど。

 お前、アビリティ構成どうなってるんだ!」


「先生、お言葉ですが俺は凡庸な一般人に成り下がるつもりはありません。

 この世界に必要とされるのは器用な凡才ではなく、飛び抜けた天才です」


「このままじゃお前、飛び抜けてアホな落第者になるぞ」


「ぬ゛っ……!?」


「クラスでお前、なんて呼ばれてるか知ってるのか。

 "バカ仙人"だぞ。バカのくせに悟ってるということらしいな」


「"数学の貴公子"とかじゃないんですか!」


俺のアビリティ構成は大いに間違えてしまっていた。


たしかに数学だけは凄まじい成績だったが、100点以上の成果は他の人には見えない。

一方で、テストのたびに赤点を叩き出す頻度のほうが多いのでイメージはそっち側に偏る。


俺の印象は「数学ができる」よりも「赤点大王」で上書きされていたのだ。


通りで、夕暮れの教室で悩ましげな横顔をキープしていても

クラスの女子が誰ひとりとして声をかけないわけだ。


はためには自分の退学を悟って残りの日数を憂いている痛い学生にしか見えていない。


「くそ……これが日本教育の弊害……ッ!!

 これが海外だったら、飛び級していたに違いないのに!!」


今から間に合うのは数学以外の構成を変える必要がある。

他のを平均ぐらいにしておけば、突出した数学の成績を理解されるようになる。


そして、ぶっちぎりの成績から俺を認知した恋多き乙女たちが俺のもとに集まるはず。


「うおおお! やってやる! やってやるぞぉぉぉ!!」


努力して2ヶ月ほどがすぎた。


学力テストの総合成績で堂々の最低成績を収めたことで、生徒諮問会議へと招集された。

校長先生はのび太くんでも軽く引く点数を見て顔をしかめた。


「君は……真面目に勉強する気があるのかね?」


「ありますよ! ただ魅力パラメータにポイントを使う必要もあるし、

 勉強はもちろんしたいと思っているんですが、なにせまだ0からのスタートで……」


他の人は、小学生や中学生からさまざまな経験を通してポイントを貯める。

貯めたポイントはバランス良く多くの教科や自分の脳力に振り分けられる。


それを一点集中していたツケは、小学生からのスタートと同じだった。

小学生から今の高校レベル平均まで一気にポイントを振り分けることなど難しい。


「退学するのか、どうするのか覚悟を決めたらまた来なさい。

 今後は数学が優れているだけの成績不振者を評価してくれる人がいればいいがね」


「これだから! これだから肩書ばかりの社会はっ!」


俺は三日三晩考えた。

考えても結局なにも思いつかなかったのは俺の「思考」は0ポイントのままだから答えが出ようはずもなかった。


ネットで答えを求めていると、神の啓示のような答えが出ていた。



『リセットすればいいんじゃないですか?』



「リセット!?」


調べてみると、これまで割り振った自分の能力ポイントを振り直す事ができるという。

ただし一度リセットするともとの総ポイントは2/3となる。劣化してしまうらしい。


「どうしよう……。リセットしてポイント振り直すにしても、

 同じレベルまで突出した才能はできないのか……」


自分の割り振り候補のパラメータを見ていて気がついた。

そこには「年齢」のポイントが含まれていることに。


通常、誕生日になると自動で+1されるこの能力値。

年齢ぶんのポイントもリセットされるのであればしめたもの。


「年齢ぶんのポイントを手に入れて、それを別の能力に割り振ってしまえば……。

 小学生にして超天才児の神童誕生じゃないか!!」


子供の段階で圧倒的な能力を見せつけてモテモテなんて展開は親の顔よりもよく見ている。

もはや迷うことなどなにもない。


俺は能力リセットを行い、これまで振り分けていたポイントを回収した。

回収したポイントは同じ量を年齢へ振り分けることなく、各教科への能力に割り振った。


「できた! これで天才小学生のモテモテ生活がはじまるぞーー!!」


能力をバランス良く割り振り直した小学生の俺はすさまじい成績だった。

ありとあらゆるペーパーテストで満点どころか問題文のミスすら指摘する優等生ぶり。


廊下には常に成績上位者としてトップをひた走り続ける俺の名前が張り出される。

親の間でも俺の話題が尽きることはなく、NASAからの推薦状まで届いた。

やはりオールマイティというのが答えなんだ。


勉強するそぶりゼロで高成績を収めるスマートな俺に女子もメロメロのはず。

自信たっぷりにクラスで一番美人の子を呼び出して告白した。


答えはすぐに帰ってきた。




「私、クラスで一番足が早い人が好き!」

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