幕間コラム2(名前)

 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


 今回は物語のなかの名前について、すこしご説明を。

 ※ここは飛ばして本編だけをお読みいただいても、まったく支障ありません。


① 基本ルールはスペイン系

 この国の人びとの持つ名は大半がスペイン系の名前、ただしなかにはポルトガル訛りが雑じることもあります。また、二度の欧州大戦の前後に渡って来た、他のヨーロッパ諸国からの移民の名もすこし。日系移民もごくごく少数いますが、この物語にはいまのところ出番はありません。


 そこで、基本はスペイン風に従った名前のつけ方――多くの場合、人びとは名前を三つから四つ持っています。



② 名は一つか二つ、姓は二つ、が一般的

 例えば、アナ・マリーア・オテロ・デラクルス。(アナマリーアと書いていますが本当は、アナ・マリーアなのです)

 アナとマリーアは両方が名、オテロは父方の姓、デラクルスは母方の姓です。彼女が将来結婚して子供ができれば、その子にはオテロの姓が引き継がれます。仮に夫の姓がダリ・ピカソだったとすると、子供の姓は、ダリ・オテロになるわけです。


 名を二つ持つ人も珍しくありません。どう呼ぶかは人によってさまざま。アナと呼んだりマリーアと呼んだり、続けてアナマリーアと呼んだり。


 名の多くは、聖人・聖女や天使に由来しています。

 聖母マリアや、大天使ガブリエルあたりはピンと来る方も多いでしょうね。フアンは聖ヨハネのスペイン語読み、ダニエリは預言者ダニエルが女性化したものです。

 マカレーナは、セビリアのマカレナ教会から。春のフィエスタで巡行する『涙を流す聖母像』で有名です。



③ 発音は……心もち伸ばす

 あと、この物語ではマカレーナ、マリーア、ダニー、と伸ばして表記しているのですが……。方言、あるいは個人差もありますが、伸ばさず「マカレナ」と呼ぶ方が実際の発音に近いかもしれません。完全に伸ばすのではなく、半音ぐらいの伸ばし方で読んでいただければ、と。

 フアンも、フとアは併せて一音にして「ファン」と発音する方が近いかも、なのですが(プレイボーイで有名な「ドン・ファン」と同じ名前ですね)。そうすると扇風機みたいに聞こえてしまうので……「フアン」としています。



④ 女性の名はたいてい語尾が「a」

 最後に、名前の男女差について。

 スペイン語の名は(ラテン語系は皆そうかも)、語尾で、男か女かだいたい見当がつきます。

 男は「オ」や「ウ」の段で終わる名が多い。一方女は、「ア」段で終わるのが圧倒的。

 男の名前の最後に「a」をつけると、簡単に女の名前になります。

 例えば、ガブリエルは、女になるとガブリエラ。日本語になぞらえると「ヨシオくんとヨシコちゃん」みたいな感じですかね。

 ダニエルは、女になると普通はダニエラ。ダニエリはちょっと中性的な響きかもしれません。



 横文字の名前は覚えにくいかもしれませんね。今のところの主要登場人物は、コラム1に紹介していますので、「あれ、誰だっけ?」というときはそちらをご覧いただければと思います。



⑤ ついでに、「C市」について

「C市」はコロンビア東部のカルタヘナをモデルにしていますが、ところどころ物語の都合で改変しています。実際に行かれたことのある方は、「ちがーう!」と思われるかもしれませんが、どうかご勘弁を。

 主要舞台としてしばしば言及される旧市街は世界遺産に登録されています。美しいビーチリゾートも有名です。



 次話からは、「ダニエリ編」です。ダニエリにとってはちょっと辛いお話あり、そしてようやくカルテルも絡みだします。

 引き続き、よろしくお願いします。

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