10.学園長


「エーシア...」


エーシアは体育館の隅までくると歩みを止めました。セーリアが言ってくださらなければエーシアを見失っていただろう。お優しさに感謝しなければなりません。


「アレス。私...」

「セーリアは何も気にすることはありません。私がセーリアの気持ちを汲み取ることが出来なかっただけですので全て私の責任でございます」

「そんなことない...。私どうしてもダメだった。改めて貴族だと認識してしまうとつい拒絶してしまう」

「いえ、人には苦手なものや嫌いなものがあるのは当然でございます。かくゆう私もピーマンが食べれずに王女様に沢山叱られた記憶があります。なのでそこまで自分を追い詰めないでください。どうしてもダメでしたら私を頼ってください」

「アレス...。そんなこと言われたら私アレスなしでは生きていけなくなるじゃない。責任取れるの?」

「私で良ければいくらでも責任を取りましょう。それでエーシアが少しでも楽になるなら」

「あーあ。本当アレスって酷い人よね。でもありがと」

「エーシアのお力になれたのなら嬉しい限りでございます」

「それにピーマンってお子ちゃまね」

「よく言われました。食べないといけませんのに苦手なものは苦手でございます」

「あっ、誰か来た」

「そうですね」


私がエーシアと話していた時に教壇の上から人の姿が現れました。

2、30代と思われる女性が静かに佇み、生徒たちが静かになるのを待っておいでです。それに凄いお綺麗な方で魅力的な女性でございます。


生徒たちが中々静かになることがないのを見かねてか、その女性は目の前にあるマイクを叩いてキーーーという耳障りな音を出して、黙らせました。


「貴様らは話さないと死ぬのか?それか周りの状況が見えないただの猿か。これだから新入生は浮かれすぎているのだ」


教壇の上に立つ女性は凛とした表情で覇気のある声でそう言うと一気に生徒たちは黙った。


「えーと。形式的ではあるがようこそ魔法学園へ。無事この日が迎えられたことに嬉しくて思う。そしてここに集まった魔法を持つ新入生512名の入学を歓迎する。この魔法学園に入学したということは殆どの生徒が王宮魔法士になるために来たと思う。だが、決して誰もがなれるとは限らない。今隣の者や友達、恋人が死ぬかもしれない。はたまた殺し合いが起こるかもしれない。そして、そこを勝ち抜くにはここにいる約1%の人しかなれない狭き門だ。もし逃げてしまいたいと思う臆病な奴がいても構わない。その代わり一生この私にツラを見せるな。以上がルーナ・リーフレットによる挨拶だ」

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