Report61: ファンクラブの戦い(前編)
「カメコウ、生きているかな」
「大丈夫だろ、アイツのタフさは折り紙付きだぜ?」
一方、その屋外では。
ビルを見上げながら、ラッシュは怪訝な表情をしていた。対して、ゾフィは 歯牙にも掛けていない様子だ。
車から降りてきたメガミも同じくビルを見上げ、全員が降りたのを見計らって車を施錠した。
ロジーの情報では、このビルに怨敵の毒巣がある。
尤も、真実を知らないリセッターズからすれば、まだ敵がファンクラブだと決定したわけではない。だが、不思議と一同、疑ってはいなかった。周囲からの視線、怪しげな人間、漏れ出る殺意。最早、証拠は充分である。
全員迅速に、且つ寂然として建物内部へと乗り込んでいく。
「お、待った!」
ビル内部にはエレベーターが二つあった。その片方に乗り込み、ボタンを押そうとするタイミングで、ゾフィが何故かもう片方のエレベーターに移った。そして適当に行き先階のボタンを連打すると、何食わぬ顔で戻ってきた。
「何をしたんだ?」
「ん? ああ、面白いトラップさ!」
ラッシュが尋ねると、嫌らしげな顔でそう答えた。そのまま三百メートルを超える高層ビルの上部へと向かっていく。
その眼下。リセッターズが上階を目指したのを物陰から見ていた輩が居た。会員の一部である。下から自分達が向かい、リセッターズを挟み撃ちにする算段だったのだ。会員は懐から拳銃を取り出し、もう片方のエレベーターに乗り込もうとする。
「……遅いな」
「ああ……」
が、幾ら待ってもエレベーターは来なかった。
メガミ達が乗っていた方はやがて目的階に辿り着いた。ゆっくりと停止し、扉が開く。
だがその瞬間、メガミ達を迎えてくれたのは、銃火器で武装した男達だった。不意を突かれたラッシュを除いて、全員が咄嗟に対応する。メガミがM16で波状攻撃をし、切り開かれた道をゾフィが突撃した。それを援護し、孤立しないようにメガミがゾフィの後を追う。
「持ってきているか?」
メガミが振り返り、尋ねたのはロジーだ。こくりとロジーが頷く。そして、互いにアイコンタクトを交わすと、非常階段目掛けてロジーが手榴弾を投げた。
一拍遅れて爆発音が轟く。非常扉が吹き飛び、ビル全体を揺らすような振動が伝播。そして焼けるような熱気が立ち込めた。その場の全員が、一瞬怯む。
非常階段の外には待機していた会員達が居るのだが、彼らは悲鳴を上げて倒れていく。上空に身を投げ出される者も数名居た。
戦線を維持したまま、ビルの廊下を進んでいく。それからファンクラブのテナントが入っている扉の前までメガミ達は攻め寄った。
メガミがジェスチャーを送ると、三、ニ、一で勢いよくゾフィがドアを蹴破った。内部にも大勢、武装した会員が居た。
「随分と私の事が好きらしいな!」
雄叫びと悲鳴で大混乱の中、接近してきた一人を殴り飛ばしながら、メガミが言った。
この頃になると、リセッターズ全員、カメコウは攫われたのだと確信していた。そして、ファンクラブは自らを応援してくれる存在ではなく、敵なのだと悟っていた。
「ファンクラブって……殆どテロリストじゃないか!」
「ラッシュ、気ィ抜くんじゃねぇぞ!」
ラッシュとゾフィは応戦しつつ、カメコウを探した。
だが、敵の数が想像以上に多かった。これは、それだけファンクラブが大規模であり、メガミが人気だという証左でもあった。
しかしこの状況においては好ましくない報せだ。
リセッターズは徐々に押し返され、膠着状態となっていく。また、エレベーターからも増援が迫っていた。
数にして、四対百。まるでペルシア戦争のテルモピュレーの戦いのような構図が勃発したのである。
「メガミさん、これ、まずくないですかッ!」
「落ち着け……! 民間人が紛れていてやりづらいんだ!」
メガミが言ったのは、無害な会員の事だ。戦う気のない者、降参した者も居たので、そういった人間には手を出さずに制圧していく。
それが難しかった。
傷を負い、じわりじわりと追い詰められていくリセッターズ。初めにロジーが、次にゾフィが敵の手へと落ちていく。
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