Report53: 束の間
「カメコウは、どうしたんだ?」
「調子が悪いみたいですね」
どこか不機嫌そうな口調でメガミが俺に問うた。頬杖を突き、パソコンのモニターを眺めている。
俺の返答に対して「本当は何か知っているんじゃないか?」と、目だけで訴えかけていた。
今、俺はリセッターズ事務所で仕事を待っている状態だ。時刻は正午。昼餉も既に終え、与えられた仕事も終わり、軽く室内の掃除をしている最中である。
カメコウからは今朝連絡があり、体調不良の為欠勤したらしい。
メガミは無表情な事が多い。今怒っているのか、それとも悩んでいるのか、分からない。彼女は溜め息を吐いて椅子に背中を預けた。
「そうか、私もだ。最近、得体の知れない連中に付け回されていてな……。ラッシュ、お前は何か知らないか?」
「え、いや……何なんですかね」
「いきなり握手を求められてな……。強引に迫るものだから、殴り飛ばしてやったんだ。……喜んで帰って行ったぞ」
「そ、そうなんですね」
奴等、頭がイカれている、と付け加えてメガミは言う。
殴った、と言っていたが……俺は聞こえなかった事にした。
彼女の言っている“連中”というのは、恐らくファンクラブの事だ。メガミ・フィギュアが販売されてしまってから、勢いづいている。
ネットで調べると、ファンクラブの様々な情報がヒットする。尤もこの事を、当人であるメガミは知らないようだが。
今までも活動はしていたようだ。だが、陰でこっそりと応援している程度だった。最近では鼻息を荒くして遠巻きから眺めている者、接触を図ってくる者。それをメガミに怒られ、逃げ帰る者……。ここタイにもオタクが居る事自体が意外ではあるのだが、軍事会社ブラックドッグのペイズリーの事もある。日本の文化が海外で好かれているのは今や普通なのだろうか。
だが、やや度が過ぎているのではないかと俺は危惧している。
各地で相次いでいるのだ。「不審者が居る」との通報が……。
「午後からは見回りだ。ゾフィは出ているから、私とラッシュだけで行くぞ」
「ロジーはどうしたんです?」
「……別件で動いてもらっている」
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