Report30: 可能性
それから一週間後、大きな事件が起きた。
高齢者を狙った連続殺人事件が発生したのだ。犯人は分かっておらず、多くの死者が出ているようだった。
「ゾフィ、気にならないか?」
「何がだ?」
俺の問いに、ゾフィは疑問で返した。
仕事を終えた面々は、珍しく事務所で寛いでいた。まだ昼過ぎであるが、外は雨が降っていて仄暗い。
今、俺が中古で買ってきたテレビを皆で見ている。ニュースでも流れているが、ここ数日の間だけでも、立て続けに十件。多くの人間がその凶刃に倒れているようである。
犯行時刻は夜間から早朝の時間帯と思われ、どれも心臓を鋭利な物で刺されているのだ。
銃器を使わないのは、事件の発覚を遅らせる為だろうか。それにしても、だ。俺には気になる事があった。
「フン、殺害方法が刺殺……って事かね?」
ゾフィの代わりに、ロジーが俺に答えた。俺は肯定の意として、黙って頷いた。
そう、それに関係する事なんだが……。
「ここ最近、仕事が失敗ばかりに終わっている。女社長の件といい、空港の一件といい……」
「それで?」
俺が意見を唱え始めると、ゾフィが聞き返した。
スパホテルを経営していた女社長が死亡した件については、ロジーが《リセッターズ》に加入する前である。
しかし、ロジーの様子から察するに、件の情報については既に共有できているようであった。恐らくメンバーの誰かが彼に話したのだろう。
俺は、依頼の失敗が自分達の力量不足のせいではない、という事を強調しつつ、話を進める。
「もしかして、一連の事件、繋がっているんじゃないかな、と」
俺は自らの考えを示していく。まず前提として、今から話すことは偶然の可能性もあるという事。それから、今まで《リセッターズ》が請け負った幾つかの事件や案件において、被害者に共通点が見られるという事。そして、今メディアで取り上げられている高齢者連続殺人にも、共通する部分があるという事実を話していった。
「例の女社長の件、あれも刃物で心臓を貫かれていたな」
「じゃあ何か? あのババァが死んだのは、事故じゃなくて殺人ってことか?」
「私はそう睨んでいる。それに、PMCの件だって刺傷があった」
俺の推理に、メガミとゾフィが意見を言い合う。やはりメガミは、スパホテルの女社長の死亡事故を殺人事件と見ていたのだろう。
俺もメガミに賛成であった。女社長は自殺でもなければ調理中の不慮の事故でもない。殺害されたのだと思う。
ちなみにPMCってのは“Private Military Company”、即ち民間軍事会社の事だ。この場合、あの好青年ペイズリーが所属している《ブラックドッグ》支社襲撃の一件の出来事である。
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