第9話 マニアックなこと。

花優と「約束」の話をしてから少しの時間が過ぎ、夜ご飯の時間になった。

この病院はAやBなどと自分の好きなメニューが選べる。今日は肉料理を食べたい気分だったので肉料理を選んだ。

栄養は高めだがかなり質素な料理である。簡単に言えば小学校の給食のようなものだ。


食べてみると正直味が薄かったりぼそぼそしている感じがありお世辞にもおいしいとは言えない。

けど、花優はずっとこういう料理を食べてきたのだろう。

横を見ても不味そうな顔1つせずに食べているが、おいしそうな顔をしているわけでもない。

片手だけでご飯を食べるというのはかなり苦労した。

最近になって両手が使える素晴らしさが分かった気がする。


「この料理おいしいな」


花優には嘘をついておいた方がいいと思った……

だって花優はこういうご飯しか食べてこなかったんだから。


「そうですよね!しっかりと栄養があって毎日作ってくれているおばあちゃんに感謝です!」


「おばあちゃんとは限らないけどな」


「それもそうですねー。お姉さんかもしれませんしね…歩呂良くんはお姉さんの方がいいんですか?」


「んー?そういう訳ではないぞ。でも歳上のお姉さんは男の憧れでもあるからな……まあ、中には小学生くらいの子が好きってやつもいるが…」


「へ〜。男の子ってよく分からないです……けど、小学生って可愛いですよね〜」


(あー。こいつは本当に純粋すぎる。もしかしてそういう少しマニアックなことは何も知らないのか?)


「そういえば、おばあちゃんみたいな人が好きって人もいるらしいからな〜」


「そうなんですね、可愛いおばあちゃんとかいますもんね〜」


「ゲホッゲホッ!そ、そうだな……なんか可愛いおばあちゃんとかいるよな。」


(ダメだこいつ…!本当に何にも知らないんだ!そんな子に俺が変なことを教えるのもよくない!)


「歩呂良くん大丈夫ですか?すごい咳き込んじゃってますけど……」


「全然大丈夫!…それより花優は食べるのがゆっくりなんだな」


俺はもうほとんど食べ終えている。花優と俺はほぼ同時に食べ始めたのだが花優はまだ半分以上の料理が残っていた。


「はい、私は早く食べるのが苦手で……嫌いって訳ではないんですけど…」


「そうか…まあ速く食べすぎると太りやすいって言うからな。よく噛んで食べることはいい思うよ」


「え!?太りやすいんですか?じゃあこれからもゆっくり噛んで食べるようにしよっと……歩呂良くんって物知りなんですね」


「いや、たまたまテレビでやっているのを見ただけだよ。俺は頭が悪いからな…知ってることはあんまりないんだ。」


俺はかなりの馬鹿だ。馬鹿というより物覚えが悪いのかもしれない。だから勉強も全くできないままここまで来てしまった。


「あ〜またネガティブなこと言ってました〜…罰として、歩呂良くんが見てきたこの街のことを教えてください!楽しい場所や楽しかったこと……なんでもいいです。この街の素晴らしいと思うことを教えてください」と目をキラキラさせながらこっちを見てくる。


「まあ〜今のは俺が悪かったしな。この街のことなら多少…教えられることがあるかもしれない。けど…花優が知っていることもあると思うけどな。」


そういって俺は深呼吸してこの街のことを教えるのと同時に絶対にネガティブなことはこれから言わないようにすると心に決めたのであった。

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