第115話 なんでこんなに可愛いのかよ

 マリアに痛いところを突かれたが真面目に考えるきっかけになったとポジティブに捉えて戻って来ると。

『ファイア!』

 カリンが叫ぶとブオッと大きな炎が上がる。

『ふむ、そのくらい出来れば上等じゃろう。

 お、ヨーイチが帰って来おったの、カリンよお主の得意魔法を見せてやるが良い』

 なんだ?でっかい炎なら今見たぞ?

『行くよお兄ちゃん!ウインド!』

 俺は一瞬にして村の入り口まで飛ばされ...っておいおい!

 咄嗟に片手を着いて前回り受身で着地する。

「あっぶな!頭から行ってたら大怪我じゃ済まなかったぞ!でもすげえ!」

 俺はちょっとだけ説教した後賞賛する。

『ごめんなさい、やりすぎちゃった。

 お兄ちゃん大丈夫?』

 まぁ怪我が無いので問題はないんだけど。

『まぁお主なら問題ないと思ったからやらせたんじゃがの』

 アイさんはそう言うけど受身取れてなかったら大怪我だからね?

『とりあえず基礎は一通り教え終わったからの、あとは追々強い術を教えて行けばいいじゃろ』

 うん、メリルの剣術も上達してるみたいだしカリンも魔法で身を守るぐらいはできるようになってるみたいだけど...俺がいままで必死に考えて旅の安全に努めていたのが馬鹿らしいぐらいに強くなってしまってるなぁ...。

 なんかさぁ?無いの?俺にもこう、秘めた力が覚醒していきなり世界最強になったりとかそう言う。

【ぷっ、そんなのないない】

 ん?また誰かなんか言ったか?


 そして剣も魔法も訓練が終わったみたいなのだが俺の方にマイさんとローズさんが歩いて来て。

『ヨーイチ殿、セイゴに着いたら出発を1日待ってくれないか?』

 と頼んできた。

「別に構わないけどどうしたんですか?」

 俺がそう言うとローズさんは。

『マイ殿の成長は驚くほどなのだが相手は魔王、少なくとも私ぐらいは越えてもらわないと勝負にならないだろう、私は領主様に報告して同行の許可をもらおうと思っているのです』

 なるほどね、その許可をもらうために一日欲しいって事か。

「ああ、いいですよ。

 マイさんに聞いた魔王の居場所は北の大陸らしいですし急いで行って返り討ちに合うぐらいなら鍛えながら進む事になるでしょうし」

 俺がそう答えるとローズさんは。

『ありがとうございます、きっと休暇を勝ち取って来ます!』

 ん?休暇?

『もとい!同行の許可を得てきます!』

「いやいやいや、今休暇って言ったよね?」

『言ってません!』

「言った」

『言ってません!』

「本音は?」

『正直このメンバーで旅するのはたのしいですしラビ殿もモフモフできるので着いていきたいのです!』

 俺がテンポよく乗せて聞くと思わず本音を漏らすローズさん。

 はっ!?って顔してる。

 意外とチョロいぞこの人。


 まぁマイさんとメリルの稽古をつけてくれるし普通に戦力になりそうだから断る理由は無いんだけどね。

『あ、あのーヨーイチさん』

 ノヤーロ君がモジモジしながら声をかけてくる。

『ボクも...着いて行っていいですか?それなりに役に立つつもりですしまだまだヨーイチさんに柔道を教えていただきたいので...』

 うん可愛い、採用。

「二人とも領主様に許可をもらえれば着いて来て構いませんよ、むしろ助かります。

 ただし、これ以上無理ってなったら俺とマイさんに構わず引き返すことが条件です」

 マイさんは勇者だし俺も帰還の可能性があるので運転手頑張るつもりだけどこの世界の人たちはわざわざ少人数で戦う必要も無いだろうからね。

 いざと言うときはカリンやメリルと共に応援を呼びに行ってもらう事にしよう。

『わかりました、必ず許可を貰えるように頑張ります』

 そうローズさんが答えるとマイさんが。

「でもさぁ、あーしは魔王倒すのが使命というか約束だから良いんだけどなんでヨッチがそこまでしようとしてくれるわけ?」

 そう聞かれたので俺は素直に。

「いや同郷の女の子が頑張ろうとしてるんだから助けるのはあたりまえだろ?」

 と答えるとマイさんはプルプルふるえて。

「だから!そういうところが鈍感系主人公っぽいんだってば!自覚しろ!」

 と怒られてしまった。

 あれ?俺またなんかやっちゃいました?

 なんてな。

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