第95話 あるーひ!森の中!
そんなこんなで程よいペースで村に向かって数日、既に懐かしさを感じる森が見えてきた。
ん?何か森の端が騒がしいぞ?
ガサッ!
と音を立てて飛び出してきたのは...
だが何時もの足止めじゃ無い!怪我してる?
「ラビ!」
と俺が声をかけるとお姉さん形態になって駆け寄るラビ、お子様形態じゃ無いってことは危険を感じたのか?
森の方からバキッ!ボキッ!っと枝の折れる音がする。
ぬぅっと姿を現したのは馬鹿デカい熊、3mはあるんじゃないか?
こいつがラビの仲間を傷つけたのか?俺は急ぎ
コイツ相手だと短矢は無意味だろう、ガチっと音がするまで回す。
その瞬間!
「ワウ!」
一声上げてロウが駆け出して熊の周りを威嚇しながらワンワン吠えている!
『ひきつけるからその間に撃ってって言ってるよ!』
ラビの通訳におれは
「ラビ!ロウに名前を呼んだら離脱!その時は熊を見るなって伝えてくれ!」
コックリ頷くラビに俺は熊を睨みタイミングを図る!
「ロウ!」
そう呼びながらパンッ!っと撃ち出した!閃光弾を!
咄嗟に目を瞑った目蓋越しに眩い光が輝く!
俺は目を開けると両目を押さえてのたうちまわっている大熊の頭に狙いを定めて...タスッ!っと矢を撃ち込んだ。
ふう、何とか退治できたな。
「アイさんこの熊...」
正体を聞こうと振り向いた途端俺が目にしたのは...。
両目を押さえてのたうちまわっているアイさんだった。
『お主は!目潰しするなら!事前に言わんか!』
たいそうお怒りのアイさんの説教を正座しながら聞く俺。
あの瞬間、アミダラさんとノヤーロ君はメリルが、ローズさんはセリスが咄嗟に目を瞑りながら目隠ししてくれてたんだが...。
位置的にアイさんと一緒の場所にいたのがラビとロウだった為閃光が上がった瞬間一人だったアイさんは光を直視してしまったらしい。
閃光弾を使ったのはソマリンの行きのサーベルピッグだけだったのでその後同行したメンバーは存在を知らなかったんだよな、反省。
『そもそもじゃな!お主はワシの扱いが雑なんじゃ!人の事を生きた辞典みたいな扱いばっかりしおって!』
ぐうの音も出ねぇ...。
俺はバッと立ち上がってアイさんの前に立つと。
『なんじゃ!開き直って逆切れか!?ワシも魔法を使えば負け...』
アイさんの頭をスッと撫でる。
「ごめんね、アイさん。
いっつも色々教えてくれるのに事前に警告出来ずに酷い目に合わせてしまって。
まだ目痛い?」
『む、ぐぬう...』
撫でながらそう聞くと言葉に詰まったアイさん。
年長者とはわかっているし敬ってもいるんだけど外見が幼女だからついつい撫ぜてしまう。
『お、お主卑怯じゃぞ!?撫でてごまかそうったってふにゃぁ〜』
ふ、また勝ってしまったか、敗北を知りたい。
昔から犬を飼って可愛がっていたせいか荒ぶる獣を撫でて落ち着かせるのは得意技になってしまっているのだよ、まぁ獣って言っても基本犬猫だけど。
『にゃあ〜...ってやめんか!そういうのは夜個室で誘わんか!』
はっ!犬猫の事考えていたせいか頭撫ぜていたつもりが喉ゴロゴロくすぐっていた!
「いやそういうのは良くないとおもいます」
正直年齢のストライクゾーンは上下広い方という自負はあるが自身の倫理観と...受け入れる土台ができてない幼女には理性的に対応せざるを得ない。
俺はアイさんの目をじっと見て居住まいを正すと。
「アイさん、本当にすみませんでした」
と、きっちりと頭を下げる。
『ま、まぁそうやって謝るのならば許してやらん事もない。これに懲りてワシのこと雑に扱うでないぞ?』
というアイさんに俺はコックリ頷いて。
「ところでアイさんあの熊って何?食えるの?」
『やっぱりお主ワシのこと辞書か辞典じゃと思っとるじゃろう!キーーーー!』
アイさんのお怒りはしばらく続いた。
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