第90話 お魚咥えたドラネコ、追っかけて

 助かったぁ...。

 俺は心底安心した。

 迷子ならぬ迷いおっさんになったのだがその先で見知った顔に会えたのだ。

 ...ローズ・クッコ、俺が捕らえた人攫いを引き取りに来た騎士で美少女揃いの俺の連れと比べても度合いでは群を抜くほど整った顔をしていて表情はキリっと引き締まっている。

 こんな頼り甲斐がありそうな美人にアミダラさんの家を聞いたらついて来いってジェスチャーされたのだ、心配する方が失礼だろ?

 そんな事を考えながら歩いている俺たちの前を横切る影!

 おお!猫だ!魚咥えてる!可愛いな。

 こっちの世界の動物はちょっと違ったりすることが多いが猫はそのまま猫っぽい。

 その瞬間あれだけ凛々しかったローズさんの顔がふにゃんと破顔してフラフラと猫の方に近づいていく...が、そこは猫。

 不用意に近づくと逃げるのが習性である。

 タタっと少し離れた猫に悲しそうな顔をするローズさん、むー?こっちの猫にアレ通用するだろうか?

 俺は更に追おうとしていたローズさんはを引き止めて自分の顔を指差す。

 不思議そうな顔をするローズさんに目を大きく開けてからゆっくりと瞬きするところを見せる。

 これは猫同士のジェスチャーで「大丈夫ですよー」とか「あなたに興味がありますよー」などという感情を伝えるものだ。

 実際俺も仲良くなった野良猫と目を合わせていたらゆっくり瞬きしてもらったことがある。

 俺は姿勢を低くして喉の奥から子猫の鳴き声の真似をすると猫はこっちを向いたのでゆっくりと瞬きをする。

 しばらく続けているとトテトテとこっちに寄ってきた?どうやら人馴れした猫だったようで助かる。

 人にいじめられたり脅かされている猫だとこの方法でも警戒されるだけだからな。


 足元まで寄ってきたので脅かさないようにゆっくりと伸ばした人差し指を鼻先に差し出すとクンクンと匂いを嗅いで頬をすり寄せてくる。

 甘えてくれたので頭を撫でて頬を撫でる。

 そのまま首元から背中まで撫でて腰の方まで撫でたところでローズさんと交代する。

 あ、これ見ちゃあかんやつか?あのキリッとした顔が溶けてる溶けてる!


 たっぷり猫成分を堪能したのだろう、猫とお別れした後ローズさんはニコニコしながら案内してくれる。

 美人だけどこういう顔してるとすごく可愛いなぁ...と思いながらついて行っていると。


『居た!ヨーイチ!』

 の声とともにラビが駆けてくるのが見えた。

「ラビ!良かった!みんなは?」

 と、俺が聞くとラビは。

『あっちにいるよー!手分けして探してたんだー』

 と教えてくれた。

 おっといけない。

「ローズさん、お陰様で連れと合流出来ました、この子はラビ。

 この子も通訳できるんですよ」

 と紹介すると。

『はわ!可愛い!ローズです!よろしくラビちゃん!』

 と挨拶していた。

 あー、お世話になったし周りに人もいないのでちょっとお礼するかな?どうにも可愛いのが好きみたいだし。

「ラビ、ちょっと元の姿になれるか?」

 と俺が聞くと。

『いーよー』

 と、子ウサギに戻る。

『は!?はぁぁぁぁぁ...』

 どうにも驚きとかわいさに放心するローズさんだった。

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