第84話 The power of love is a curious thing

「やっとここまで帰ってきたか...」

 俺は感慨深く呟いた。

 初日のキャンプ地、アヒージョを作った場所まで戻ってきたのである。

 なお今日の運転はメリル、交代で運転させているので段々三人とも上達して来ていて今も綺麗に駐車してくれたところだ。

 サイト設営を終わらせて俺はジップロックを取り出す!

 昼過ぎにクーラーから取り出して解凍しておいた小海老と二枚貝の剥き身!更にはスライスして冷凍しておいた肉厚のキノコ!

 ここまで戻って来たらやってやろうと準備してクーラーの底に仕込んでおいたアヒージョセットだ!

 パンは昨日粉から多めに焼いて残っていた程よく硬くなったものがあるので炙る準備も万端だ。

 前回と同じようにアヒージョを作っていく!が!今回は海鮮とキノコが入っているのだ!その破壊力たるや想像するに恐ろしい!

 仕上げの塩だって売るほどある!


「いただきます」

『イタダキマス!』

 まずはオイルがしっかり染みたキノコから...。

「   」

 美味いっていうと思っただろ?

 いや美味いんだよ。

 でも声が出ないんだよ。

 結果俺が言った言葉は。

「ヤベぇなおい」

 油に溶け込んだ貝の旨味と海老の風味!

 そこにキュッと味を締める塩の辛さ!

 そしてその味をオイルと共に吸い込んだキノコの美味さといえば...。

「ヤベぇな」

 大事なことなので2回言いました、はいヤバイです。


 見渡すとロウ以外が全員言葉を失っている。

 ロウは下手な油とか塩とか心配だからいつもの肉飯だから。


 更に硬くなったパンを炙って...オイルを付けてパクリ!

 あ、これ死んだわ、美味すぎて死んだわ。


 みんな大満足で食後のお茶タイムをしているとアイさんが唐突に言い出した。

『さて、街に着く前に一つ終わらせておこうかのう...。

 カリン、こっちに来るのじゃ。』

 カリンがポカンとしてアイさんの前に行く。

『よし、目を開けてみるのじゃ』

『えっ!?』

 言われたカリンは絶句して固まった。

『心配せずとも良い、お主の力は察知しとるよ。

 目を開けぬ事にはその呪いも解消も出来ぬ、安心してこっちをみるが良い』

 そう言われてカリンが目を開いた、パッチリと大きな目を。

「いや想像以上に可愛いし」

 思わず口をついた。

『ええっ!?』

 と言ってカリンが顔を真っ赤にする。

『これヨーイチ、茶々を入れるでない』

 アイさんに怒られてしまったが。

「でもアイさん、目を瞑ってあれだけ可愛かったカリンが目を開けたらパッチリお目目で綺麗な緑色なんですよ?ここで褒めなきゃ男が廃るでしょ?」

 そう言うとカリンがクネクネしだす、言っちゃ悪いが若干動きがキモい。

『ほれ見てみい、お主の目を見てもこいつらは変わったりせんぞ?何故かわかるか?』

 アイさんの問いかけにカリンはわからないという感じの顔をする。

『それはな、全員がお主に好意があるからとお主がみんなを魅了チャームしようとしていないからじゃ、魅惑とも言うな。

 メリルに聞いたぞ?お主は幼い頃その力で魔獣に襲われそうになったのじゃろ?

 それはお主の「好かれたい」という認識が魔獣にとっては発情と取られてしまっただけじゃ...そうじゃのう、試しにヨーイチに命令しながら見つめてみい?』

 その言葉にカリンは。

『お、お兄ちゃん!あたしをなでなでしなさい!』

 うお!すごくカリンを撫でたい気分になって来た!

 俺はカリンの横に駆け寄って撫で撫でする。

『これが魔眼の魅了効果じゃ、ヨーイチよ、どんな気分じゃった?』

 そう聞かれて俺は。

「嫌な気は全くしなかったな、カリンを撫でる事が何よりの喜びって気分になって動いてた、まぁ魔眼無くてもカリンを撫でるのは嬉しいんだけどな」

 俺がそういうとアイさんから。

『だからいちいちそういう事を言うでない、カリンが真っ赤になってしまったじゃろうが』

 とお叱りをうけた。

 しかし魅了だの魅惑だの深海パーティみたいな魔法だな。

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