第60話 ある晴れた昼下がり

 どうにかこうにかお茶を濁していると3人娘が帰ってきた。

「お、おかえりー!」

 助かったと思い、やけに大げさにおかえりを言ってしまう。

『あら、セリスもうきていましたの?やけに早いですわね』

 色々準備があるので伝えていた出発は昼食後だ、まだ3時間ほど余裕がある。

『ええ、早いに越した事はないですしヨーイチ様にお願い事「ああー!事前準備は大事だよねー」

 俺はセリスさんの台詞に割り込み雪兎ラビに通訳してもらいながら小声で。

「あー、人にお願いした事をペラペラ話すような生徒には先生座学でも教えたくないかなー」

 と、釘を刺す。

 セリスさんはハッとした顔で。

『申し訳ありません、マリア様と一緒にいるとワイ談はオープンにするのが基本でして』

 ここでもマリアの弊害か、ほとぼりが覚めたらもう一度お仕置きが必要か?

 などと考えていたらメリルが。

『で?何があったの?』

『ヨーイチが気持ちいいエッチの仕方教えてくれって言われてたー、ドギマギしてて面白かったよー』

 っておいラビ!

 口止めはしてないけど口止めしてる通訳したんだから察して!マジで!

『へぇ、エッチの先生ねぇ...』

 あの?メリルさん?なんで普段出さないような低めの声出すんですか?

「座!座学だから!実践とかじゃないから!」

 焦る必要は無いのだが隠そうとした後ろめたさについつい声が大きくなる。

『座学ならアタシたちも聞きたいものねぇ、ねぇピカリン?』

 だからキャラ違うって怖いよメリルちゃん!(恐怖のあまりちゃん呼び)

『わ、私も興味ある...かな?』

 カリンまで乗ってきてる!マジすか!?

『ならばわたくしが生きた教材に!』

 そう言って飛びかかってきたマリアの頭をスパーン!とひっぱたき。

「そもそもの元凶はおまえじゃあ!」

 とツッコミを入れてしまう。


 どうしてこうなった?

 出発前の最後の昼食の後、俺は性の伝道師としての第一回の授業をする羽目になった。

 人の家の食堂でエロ話なんかできるか!という事で。

「第一回の講義はまず心構えです!」

 お茶を濁す!全力で!

「エッチな事と言うのは卑猥でもありますが子供を作る神聖な行為でもあり、愛の確認でもあります!それではまず心構えとしてどうしたらいいですか?ハイ!マリアさん!」

『???手当たり次第取っ替え引っ替え?』

 スパーン!

 このために作ったハリセンがいい音を立てる。

「はい、皆さんいいですか?これが悪い例です。

 セリスさんが俺に相談したのもこの倫理観のないクソお嬢のせいです!」

 俺は断言する。

「好きな人と触れ合うからこそ心地良くて気持ちいいのです!ハイカリンさん!俺とそこらへんの知らないおっさん、頭撫でられて気持ちいいのは?」

『もちろんお兄ちゃんです!』

「そうですね、性的な意味じゃなくても肉体的な接触は好意のあるなしでだいぶん変わってきます」

 もちろん接触を行う側の気遣いや心がけでも違うのだが。

「それを踏まえて!より良いエッチとは?ハイメリルさん!」

『...好きな人と、思いやりを持ってすること?』

「そのとーり!」

 何故か児玉清さんの真似をする華丸さんの口調で言う俺。

『ならば今ここで!愛するヨーイチ様と愛の!』スパーン!

 勢いで飛びかかってこようとするマリアをハリセンで撃墜しながら俺は言う。

「なので海の街までの道中、この講義はマリアへの説教がメインになると思います!それでもいいと言う方のみ受講するように!以上!」

 そう言って俺は講義を切り上げる。

 流石に今日は出発しないとまずいからな。

 と、食堂を出ようとする俺になぜか女性陣からの拍手が贈られるのだった。

 アレ?意外に好評なの?

 こんなグダグダなのに拍手なんかしてどうするつもりだ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る