第61話 止まらない未来を目指して

 講義という名のマリアへの説教を終えた俺達は出発の準備に戻った。

 海の街までは馬車で10日以上かかるそうなのでジムニーだと早くて5日、悪くても一週間有れば着けそうという話だ。

 下手をすると往復で一ヶ月かかるので有ればこの街の塩不足も頷けるところだ。

 単純に距離だけならば馬車でも数日おきに動けばいけそうな物だが途中に村などが無く馬を使うと水が足りなくなり引き返す事もしばしばだという事で雨の多い時期以外は好き好んでこのルートを走破しようという強者は少ないらしい。

 その点俺たちは自分たちが使う水だけでよくその水も雨が降る時に補充すれば十分、降らなくても最悪到達は可能なはずである。

 いちいち止まって雨を集めるのも面倒だったので荷馬車を幌馬車にするときに空いた御者台に水用の樽を設置し幌馬車前面で受けた雨を溜めれるようにしてある。

 むしろ止まるより走ったほうが溜まる仕組みなので一緒に虫などが入らないように樽に入る前にメッシュ地の布で濾す機構付きだ。

 荷物も積み終わったし後は道中の安全のために例のものをチェックしておかねば。

 俺はカリン達が受け取ってきてくれた魔封石付きの弾を取り出すと相棒1号シモンに込めてポンピングをする。

 そのままサングラスを取り出してかけると周りに人がいない事を確認して相棒1号シモンを構えて...撃つ!

 撃ち出して10mほど先で弾が一瞬眩い光を放つ。

「よっしゃ成功!」

 俺がヨーズマさんに頼んでおいたのは「高速移動して10mほど進むと光量最大で一瞬だけ灯りの魔法を放つ」というもの。

 平たくいうと閃光弾だ。

 サングラス越しにでも目が眩みそうな光を出せたので裸眼で喰らえば確実に行動を阻害できるだろう。

 俺は大満足で狙った藁束から使用済みの弾丸を回収して魔封石を抜き、余分に魔法を入れてもらっていた魔封石と取り替える。

 貴重品だから回収できる分は回収しておきたい。

 そうこうしてるうちに全員の準備が整いジムニーと馬車に乗り込んでいく。

「それではマリア、ヨーイチさんの手伝いをしっかりな」

 流石に父親、アミダラさんはマリアに声をかける。

「そしてヨーイチさん...マリアを...マリアをどうか真人間に...」

 エー...真人間はちょっと難しいかなぁ?

 それでも道中講義という指導を繰り返してなんとかするしかないな。

「自信はないけどやってみます」

 俺はそう言って頭をひねる。

 まずは羞恥心を持たせてみるか。

 それに俺もやるべきことがある。

 今回の移動中に出来るだけ現地語を覚えようと思う。

 カリンとラビがいるのでペラペラになる必要はないのだがメリルを寝かしつけた時のああいうやりとりぐらいは出来るようになりたいからな。

 それが俺の今現在の譲れない願いだ!




 嘘です、ただの旅立ちです。

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