第53話 テレビから流れてくる遠い街のニュースに
【おーい!起きなさい!風邪ひくわよ】
あたしはマリアに呼びかける。
当然ながら本人には聞こえていないのだがあたしが深層心理に居るからなのかそれともマリアが真っ白に燃え尽きているからなのかはわからない。
【ったくしょうがないわねぇ】
あたしは一時的にマリアの身体の主導権を奪いベッドから起き上がる。
こんなビチョビチョに湿ったベッドで気を失って風邪でも拗らせたら面倒なことになる。
この子はあたしの地上の目、きちんと洋一についていけるように体調は万全でいてもらわないと。
まぁしょうがないか、女神の使徒であるあたしがうっかり天界に返されそうなぐらい昇天させられた上にいざ本番というところで「ビッチに食わせる松茸はねぇ!」みたいに言われたのだ。
当の洋一はというとさっさとカリンを連れて隣の寝室で寝ちゃってるし。
しかし柔道といいアレといいなんでちょいちょい高スペックなのよあいつ...。
でも躾けてもらってあたしも助かるので悪い事ばかりでもない。
感覚リンクしてるのに出会う男と手当たり次第ヤられてたらたまったもんじゃないからね、この子にはいい薬だろう。
そんな事を考えながら服を着てマリアの自室に戻りベッドに寝かせてからあたしは深層心理へと引っ込む。
【おやすみなさいマリア】
...
やり過ぎたぁぁぁぁぁ!
俺はベッドで頭を抱えていた。
隣では落ち着いたのか可愛い寝息を立てているカリン。
いくら頭に来たからって大商会のお嬢様を自宅でヒーヒー言わせた上に土壇場で袖にしたのだ。
やばいなー、朝になったらアミダラさんに告げ口され激怒されたりしないだろうか?
せっかく支援してくれると言った内容を全て反故にされたりしないだろうか?
どうして!どうして全力を出してしまったんだ俺!
そうして身悶えている俺に寝返りを打ったカリンが抱きついてくる。
ああー、癒される...。
俺はそっと腕枕をするとカリンの頭を撫ぜる。
すると眠ったままカリンがさらに強く抱きついてくる。
俺の太ももを絡ませた足で股間にギュッ押し付けるように。
寝て...るよね?
よく観察してみるが寝たふりしている素振りはない。
ああ...そうだな...きっと刺激が強すぎて夢にでも見てるんだろう。
マリアに股間を弄られた後にシーツをかけたとはいえ横であれだけやってしまったんだ...。
あー!やっぱやりすぎたぁぁぁぁぁぁ!
俺はさらに眠れなくなってカリンを撫ぜたまま再度身悶えるのだった...。
...
その夜私は夢を見た。
淫魔に襲われた私をお兄ちゃんが助け出してくれる夢。
ただ夢の中で戦うお兄ちゃんはかなりエッチでちょっと怖くてなんだかドキドキした。
あぁ...お兄ちゃんの顔、見てみたいなぁ。
生まれてからずっと見えない生活のおかげで気配というかそういうものでそこにいるのが誰かとかそこにあるのが何かとか感覚ではわかる。
ずっと一緒にいたお義父さんやピメリは特によくわかるけど...やっぱりお兄ちゃんの顔、見てみたいなぁ。
でも私は目を開いてはいけない、もしかしたら成長に伴って少しでも見えるようになっているかもしれない。
でも私は目を開いちゃダメなんだ。
夢の中でそんな事を考えながら私の眠りは深くなって行った。
...
まったくヨーイチったら何やってるのよ!
あたしはベッドから動けなかった。
さっきから聞こえてきてる声は多分マリアさんの声、だけど普通じゃない色っぽい声や叫び声、更には悲鳴みたいな声も。
あたしはドキドキしながら耳を澄ませていたけど暫くするとドアが開く音がして隣の寝室の入る音。
そちらに集中しているとヨーイチとピカリンの会話が聞こえた。
何よ!?お兄ちゃんのエッチって!やっぱりマリアさんとエッチな事してた訳!?
とは言えこのまま隣に行って問いただすのも気が引けるのであたしは悶々としたまま眠れない...。
無意識のうちに股間に手が伸びそうになってハッと気がついて手を戻す。
あたしエッチな子じゃないもん!
そんなそれぞれの夜。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます