第16話 チートの始まり

 イベント詳細について確認したあと、この後どうするべきか考える。


 トウカにはサバイバルについての知識が全くない。そして、生き残る為の生存能力も今のレベルでは心許ないだろう。

 では、その状態で何をするべきか。

 レベル上げ?今から始めても生き残る為に必要なレベルまでは引き上げられないだろう。

この街に来たのも適正レベル以下で称号のゴリ押しでギリギリたどり着けたのだ。


 絶対的に時間が足りない。

 その状態で何をするべきか、今は仲間を作るべきだろう。

しかし、トウカの知り合いはレアとジークのみ。あとは神殿関係者だ。

 新しくプレイヤーと仲良くなるにも時間が足りない。今あるツテを存分に使って仲間を集める。

 それが現状ベストな選択であるだろう。


 トウカはそう判断して、まずはジークへと連絡を取る。


「えーっとフレンド一覧から…ジークを選択して…おっ!電話出来る!」


 ジークへとフレンドコールをかけるがなかなか出てくれない。



「あれ?やっぱり住人にはフレンドコール掛けられないのかな?」



 そう思いフレンドコールを止めようとした時にようやくジークが出た。


「おう!待たせて悪い!それでどうした!」


「あっ、もしもしジーク?」


「おう!」


「あのね、ジークにお願いがあるn「おう!いいぞ!」だけど・・・」


「私まだ何も言ってないんだけど…。」


「んあ?ダチの頼みだ。断る訳ないだろ?頼みの1つや2つ、10や20ぐらい、いつでも聞いてやる。」


「ありがとう!実は明後日なんだけど、私たち異邦人のイベントがあるの。」

「それが特殊な場所にワープして行われる1週間のサバイバルのイベントなんだけど、すっごいレアな装備やアイテムが手に入ったり、すっごい強いモンスター、ドラゴンとかが出たりするみたいなの。」


「なるほどな。つまり、俺も一緒にパーティー組んで着いて行ってサバイバルの知識や戦闘力が欲しいというわけだな!」

「わかった!だがいくら俺でもドラゴンは1人で倒せない。俺の知り合いも連れて行って大丈夫か?」


「うん!大丈夫!ありがとね!」


「そんで、明後日は何時にどこに行けばいい?」


「えーと、ちょっと待ってね…」



 トウカは具体的な時間を覚えていなくて慌ててイベント詳細を再確認する。


「おまたせ!場所は城塞都市ツヴァイの噴水広場で、時間はお昼の12時ピッタリみたい!」


「そうか!じゃあ11時半頃に合流して流れの確認でいいな?」


「うん!大丈夫だよ!私の方で何か準備した方がいい事とかある?」


「いや、大丈夫だ!全部任せとけ!」


「頼もしいね!ありがとう!」


「おう!それじゃあまたな!」



 そうしてフレンドコールを切る。

 ジークのおかげでイベントのサバイバルについての不安事は全て無くなった。



「あっ、そういえばレアはパーティーどうするんだろ…。ジークが何人連れてくるか分からないけど、一応聞いてみないとね!」

「でもまずは…。」


 今イベントに向けて唯一できる事はレベル上げ、スキルレベル上げだけだろう。


 そう考えて、トウカはまずスキルレベル上げを開始する。今すぐ、部屋の中でもできる事は神聖魔法による回復だ。神聖魔法は大量にMPを使い、1番最初から使えるヒールでさえ50MPを使う。

 そのため、通常なら連発は出来ないのだ。しかし、トウカは種族による補正値が高く、通常の5倍多く放てる。

 そして、HP.MPはアイテムやスキルで回復するか、宿屋で横になるかしないと回復しないため、基本的に無駄打ちは出来ないのだ。

 魔法職はスキルが無いとポーションの為にお金を使うか、宿屋と戦場を交互に行くかしなければならない。

 逆に近接職も回復スキルが無ければ回復ポーションを買うか、宿屋と戦場を交互に行かなければならない。ダメージを受けなければ問題ないがどっちもどっちと言った感じである。


 話は戻るが、現在トウカは【MP自動回復】スキルを持ち、自分の部屋にいる。周りに被害を与えないスキル【神聖魔法】だからこそ出来るちょっと狡いスキルレベル上げが可能なのだ。

 【神聖魔法】でMPを使いつつも【MP自動回復】でMPが回復し、無くなったらベッドで横になると即座に回復する。

 これでも本来なら非常に時間をかける事によってスキルレベルが上がるのだが、トウカは更にLUCが高いため熟練度も貯まりやすい。

 そんな状態でスキルレベル上げをしてしまうとこうなる。



 まずは自分にヒールをかける。それをMPが尽きるまで行う。

 MPが尽きる事により起こる貧血のような症状が苦痛になるが、それを耐えてベッドに横になる。すると即座にMPが回復する。

 再び自分にヒールをMPが尽きるまで行う。また貧血のような症状が起きるがそれを耐えてベッドに横になる。

 これを数回繰り返しただけで


ピロンっ

【神聖魔法】レベルが上がりました。




 スキルレベルが上がる。本来ならこんなに早くにスキルレベルは上がらないが、そこは運が関係しているのだ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 スキルレベル上げを開始してから1時間ほど。そこまでは集中力が保ったがそれ以上は無理だった。

 そして、その結果スキルレベルはここまで上がった。


【神聖魔法】Lv6

【MP自動回復】Lv4



 スキル【幸運強化】や【投擲術】に比べてスキルレベルが上がりづらいように思えるが、本来、戦闘以外で取得できる熟練度は非常に少なく、且つスキルによって必要な熟練度が違うためだ。

 【神聖魔法】は蘇生まで可能になる非常に協力な魔法であり、【MP自動回復】等の回復系のパッシブスキルは上がった時のメリットが非常に強いため、必要熟練度が膨大となっている。


「ふぅ、疲れた〜。」

「ベッドが近くにあったから良かったけど、MP切れの症状ってほんとに辛いね…。はぁ…。」

「時間もいい感じだし、そろそろログアウトしようかなぁ。」



 疲れのため、独り言をブツブツ言いつつシステム画面からログアウトを選択する。



「よーし!とりあえず紗希にパーティーどうするかのメール送っとかないと!」


 そしていつも通りの事を終わらせて、メールが届いてるかを確認する。

 既にメールは届いており、内容を確認すると、どうやらイベントにはベータテスト時代に組んでいたパーティーで参加するとの事だ。

 その為、パーティーは組めない。ごめんね。という旨の返事が来ていた。


「そっか。まぁ私も何も言わずに決めてたし、お互い様かな。」



 そして、お互い頑張ろうというメールを送り、ベッドに潜り込んで寝始める。


「明日は休みだし、ゆっくり寝よう。」

「おやすみなさい・・・」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリ



「んぁ…うるさいなぁ…。」


 手をわちゃわちゃして目覚まし時計の場所を探す。なかなか見当たらなくて見つけて目覚まし時計を止めた頃には完全に目が覚めていた。



「まだ7時じゃん…。寝よ…。」


 そう言って再びベッドに潜り込むも、先程の目覚まし時計のせいで完全に目が覚めてしまった。



「寝れん!」

「目、覚めちゃったしどうしよっかな〜。まだ早いもんなぁ。」


 寝ぼけた頭で考えても何も思い浮かばない。その為、とりあえずいつも通り顔を洗い歯を磨く。

 ご飯の準備はされていなかったので、目玉焼きを作り、トースターでパンを焼く。

 その2つで軽く朝食を済ませて部屋に戻る。



「やっぱりやるとしたらゲームかな!今日は頑張ってスキルレベル上げて、イベントでジーク達の足でまといにならない様にしないとね!サポートと回復が出来るように【神聖魔法】と【時空魔法】のレベルを出来るだけ上げないと…!」


 そうして気合を入れてヘッドセットをつけてベッドに横になる。

 リラックスして目を閉じて・・・



   『Dive In』



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 視界が光に包まれて目が覚めたら神殿にある自分の部屋だった。



「さぁ!スキルレベル上げの続きと行きますか!」


 昨日と同じ流れで【神聖魔法】のスキルを使ってMPが切れたらベッドに横になる。

 この作業をひたすら繰り返す。

 ただ繰り返すだけじゃつまらないので、部屋にあったCDプレイヤーの様な物を触ると音楽が流れたので、色々と音楽を変えて楽しみながらスキルレベルを上げる。


 その結果、お昼ご飯を食べに戻ろうとする頃にはこうなっていた。


【神聖魔法】Lv9


【MP自動回復】Lv7



 因み、スキルレベルの最大レベルは10であり、それ以上は上がらない。

 スキルレベルが最大になるのは時間的にはレベル換算するとレベル80を超える程である。

 基本的にレベルが1つ上がる毎におよそ2倍の時間がかかる。そして、その倍率はレベルが高くなるほど大きくなる。

 レベル5までは比較的簡単に上がるが、それ以上は時間がかかってしまう。

 現在のトッププレイヤーでさえ、スキルレベルが6に上がっている人は殆ほとんど皆無かいむである。



「結構頑張ったと思うんだけど、なかなか上がらないなぁ…。早くレベル10まで上げて蘇生魔法は覚えないと!大丈夫だとは思うけど、ジーク達になんかあったら悲しいからね…!」


 スキルレベルが9まで上がっている事の凄さを知らないため、後にこれを聞いたレアによってもみくちゃにされる事をまだ想像もしていなかったのである。

 楽しければいいでしょ精神が通じるのはトウカだけだ。


「さてと、そろそろお昼だしご飯休憩しよかな。」




 再度ログアウトしてご飯を食べる。その後すぐにログインする。


 結局、この日にトウカが行った事は部屋に篭ってのスキルレベル上げだけであり、他は何もやっていない。


 その結果スキルレベルはこうなった。


【神聖魔法】Lvmax


【MP自動回復】Lvmax


【時空魔法】Lv6



 そして、【神聖魔法】がスキルレベル上限に達した時、通常の称号とユニーク称号が手に入った。


ユニーク称号

『スキルマスター』

最初にスキルレベルが上限に達した者に送られる称号。

スキルの熟練度獲得に大幅補正がかかる。



『【神聖魔法】を極めし者』

スキル【神聖魔法】を上限レベルまで上げ、特殊な魔法の書を使用する事で取得できる称号。

【神聖魔法】使用時に大幅補正がかかり、消費MPが50%削減される。さらに、【神聖魔法】をスキルに囚われず自由に使える。



 まず、【神聖魔法】のスキルレベルが上限に達した時に、称号が手に入った。その称号の効果とLUCの数値に相乗効果が発生してしまい、あっという間に他のスキルも上限に達してしまった。

 そして、【MP自動回復】が上限に達した時に、新しく【MP超速回復】スキルへと、スキルが変化した。


【MP超速回復】

10秒毎にMPが10%回復する。

レベル上昇によって回復量が増える。



「うわぁ、ちょっとやり過ぎたかな?」







____________________




名前 トウカ

 種族 天翼族☆1

  Lv 15

 HP 1620/1620 MP950/950

 STR 5 VIT 0   

 INT 0 RES 0    

 DEX 0 AGI 10   

 LUC 570     

 残りSP0


加護

女神フォルトゥーナの寵愛

LUCの数値を3倍にする


スキル

固有スキル

【飛行Lv3】

【天撃Lv1】

【神聖魔法】max


パッシブスキル

【幸運強化Lv7】

【投擲術Lv6】

【剣術Lv2】

【MP超速回復Lv1】


アクティブスキル

【鑑定Lv6】

【召喚術Lv1】

【時空魔法Lv6】


装備

初心者のナイフ☆1 攻撃力+5

ダイアウルフの剣☆2 攻撃力+30 STR+5

ダイアウルフ兜☆2 防御力+10 AGI+2

ダイアウルフ軽鎧☆2 防御力+20 AGI+2

ダイアウルフ篭手☆2 防御力+10 AGI+2

ダイアウルフ腰☆2 防御力+10 AGI+2

ダイアウルフ靴☆2 防御力+10 AGI+2


所持金

42860G


称号


ユニーク

『友愛を築く者』

住人からの好感度が上がりやすくなる。


『五大神教トップ』

五大神教信者の好感度が最大値になる。


『スキルマスター』

スキルの熟練度獲得に大幅補正がかかる。


通常

『一撃必殺』

最初の一撃のダメージが5倍になる。


『下克上』

格上の敵と戦う時、全ステータスに10%の補正が入る。


『生命の力』

HPが最大の時に与えるダメージ量が10%増加する。


『ジャイアントキリング』

レベル差による威力減衰を受けなくなる。


『致命の一撃』

クリティカルヒット時、相手の防御力を半分無視してダメージを与える。


『【神聖魔法】を極めし者』

【神聖魔法】使用時に大幅補正がかかり、消費MPが50%削減される。さらに、【神聖魔法】をスキルに囚われず自由に使える。



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