第14話 エリアボス
トウカとレアはエリアボスの出現するエリアへと辿り着く。
そこは洞窟になっていた。
ビクビクしつつ中へと入っていく。
中には人が通った痕跡があり、壁には定期的に松明が掛けられており、思ったよりも明るく見やすい。
途中モンスターがちょくちょく出てくるが、2人は危なげなく倒す。
分かれ道があるが、レアが先に情報を得ていたらしく、悩むこと無く突き進んでいく。
ある程度進んでいくと、如何にもこの先ボス部屋ですと言わんばかり場所に着く。
そこには左右に2つずつ合計4つの火が掲げられており中心部には派手な柄のある大きな鉄扉がある。
火の揺らぎによる影の変化がその場所の不気味さを増している。
「ねぇレア。すごい雰囲気だね・・・」
「そうだね。ベータの時はここまで解放されてなかったから、うちも初めて見る。」
「ここの先って多分ボス部屋だよね?」
「うちも思う。ここまでいい感じの距離だったし。」
「まぁでも、うちとトウカなら余裕で勝てると思うよ。」
「普通の人だったら格上と戦うの厳しいけど、うちらは称号いっぱい持ってるし。」
「そうだね!何か作戦とかある?」
「お互いの『一撃必殺』を有効に使いたいから、初撃に最強の技をぶつけよう。トウカはたしか【天撃】?だったよね。それでお願い。」
「了解!スキル発動してからダメージ与えるまで間が空くから気をつけてね!」
「大丈夫。」
「よーし!じゃあ行くよー!!」
そうして2人は気合を入れて扉へと近づく。
扉に手を触れようとすると、扉がギギギギと音を立ててゆっくりと自動で開いていく。
トウカは扉が開くのを待ちきれずに身体を捩じ込ませてボス部屋へと入る。
対照的にレアは扉が開き切るのを待ってから中へと入っていく。
中はあまり広くはないがとても暗い。
2人が中へ入ると扉が閉まっていく。
閉まりきったら突然、左右に存在する篝火が手前から奥へ向けて円を描く様にゆっくりと火が点っていく。
最後には天井中央に存在する上から垂れ下がっている篝火に火が点る。
急に明るくなって目に負担がかかっていたが、目が慣れてきて奥を見ると、そこにはとても大きなゴブリンが居た。
そのゴブリンは大きな曲刀剣を持っており、もしその一撃を受けてしまったら身体が引き千切られてしまいそうな程の迫力を持っている。
その周りには通常よりも大きなゴブリンも存在している。
どうやらエリアボスもフィールドボスと変わらず近づかなければ敵対はしないようだ。
鑑定
種族 ゴブリンソルジャー
Lv ???
トウカは鑑定を掛けてみたが名前以外は何もわからなかった。
「レア!鑑定してみたけどゴブリンソルジャーって名前以外は何もわからなかったよ!」
「まぁそうだよね。他の人もそうだったらしいから。」
「じゃあ最初の一撃の準備はいい?」
「いいよ!【天撃】!」
そう言ってトウカは天撃を発動する。
密室空間なだけあって、前回のフィールドボス、ホブゴブリンと取り巻きの時みたいな派手な演出はない。
しかし、上空に存在するエネルギーの集合体は変わらず激しく震えており、バチバチしている。
レアも負けず劣らずと言った感じで魔法を複数発動し、前回と同じように水蒸気爆発を起こそうとしている。
2人がそれぞれの最強の技をゴブリン達へとぶつける。
とても大きな爆発音が鳴り響き、煙が舞う。
そして、爆発が鳴り響いたとは思えない静寂が訪れる。
静かになり、2人はやったか!と言った表情になる。
しかし、煙が晴れ切る前に、煙の奥に赤く光る瞳のような物がチラッと見えた。
トウカははしゃいでいて気づかなかったがレアは油断してなかった為気づく。
しかし、気づいた頃には既に遅く、ゴブリンソルジャーは勢いよく走り出しあっという間に距離を詰める。
ゴブリンソルジャーは大振りに曲刀をトウカ達へと振りかざした。
レアは何とか避ける事が出来たが、トウカは動けずに直撃して壁へと吹き飛ばされる。
「トウカ!!くっ・・・。」
今の一撃でトウカは気絶状態になってしまった。
ゴブリンソルジャーはそのままトウカへと近づいている。
レアは動きを止めるためにすぐに水と火の複合魔法によってゴブリンソルジャーと地面を凍りつかせて動きを封じる。
しかし、封じられたのは数秒ほどで怪力により氷は破壊される。
その時、間髪入れずに魔法を大量に放ったが当たったのは数発ほどで、まるで痛みを感じていないかのようにビクともしなかった。
この行動のおかげでヘイトはトウカからレアへ向かった為、トウカは命拾いをした。
ひかし、このままではレア・トウカの順にやられてしまう。
「どうしよう、トウカ!!」
レアは魔法を間を開けずに発動してゴブリンソルジャーが動けないようにしているが、このままではMPが尽きてしまう。
トウカを起こそうと必死に叫ぶもトウカは起きない。
どうするか考える。
その結果無理やりトウカを起こす事に決める。
レアは威力の低い水の魔法をトウカへと放つ。
トウカの顔へと直撃し、ビックリして跳ね起きる!
「おぉっ!あれ?あっ!ボス戦!!」
「起きた?トウカも手伝って!」
「はい!」
「【時空魔法】スロウ!」
咄嗟に相手に鈍足効果のあるスロウをかける。
少し遅くなったような気がするが、あまり変わっていない気がする。
トウカは左手に持った初心者の短剣をゴブリンソルジャーへ向けて投げる。
動き回る敵へと当たる訳がなく外れてしまう。
しかし、どういう原理か外れたナイフが壁に当たり、突き刺さる事無く跳ね返る。
そしてそのままゴブリンソルジャーの膝の裏に突き刺さる。
その衝撃によってゴブリンソルジャーは床へと倒れる。
「おぉ、すごい。」
そのままトウカはゴブリンソルジャーへ向かって走り剣で切りかかる。
そのトウカの一撃により体力は全損したらしく、ゴブリンソルジャーはポリゴンとなって消える。
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エリアボス
ゴブリンソルジャーを討伐しました。
討伐特典としてSPが10進呈されます。
取得アイテム
ゴブリンソルジャーの刀剣
1万G
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ピロンっ
レベルが上がりました。
レベルが上がりました。
【幸運強化】レベルが上がりました。
【時空魔法】レベルが上がりました。
【剣術】レベルが上がりました。
【投擲術】レベルが上がりました。
【MP自動回復】レベルが上がりました。
「ふぅ、お疲れ様トウカ。」
「お疲れ様!」
「それにしてもよく無事だったね。あの状態のゴブリンソルジャーって攻撃力が強化されててタンクじゃないと大体一撃でやられちゃうのに。」
「あの状態?一撃って何!?」
「相手の目が赤くなってたでしょ?体力が2割切ると狂乱状態になって全体的に強化されるの。そのせいでVIT低い人だとすぐにやられちゃうんだよ。」
「えぇぇぇーー!!!」
「確かに一撃で体力が残り100切ってたから危なかったよ!」
「まぁでもお互い生きて勝ててよかったね。」
「うん!」
「それじゃあ先に進もっか。」
そうして2人はボス部屋を抜けて先へと進んでいく。
ボス部屋を抜けた先にあったのはなんと・・・
さっきまでと同じような洞窟であった。
そのため、次の街があるとワクワクしてたトウカ
は少しいじけている。
「うん、そうだよね。ちょっと期待しちゃったけど・・・」
「ゲームと言っても現実に近いのを目指してるからね。ボスと戦ってすぐに街がある訳じゃないよ。」
「わかってるよ!」
2人はそのまま洞窟の中を突き進んでいく。
途中、スライムやゴブリン等の雑魚モンスターが出てくるが、レアの魔法やトウカの投擲、剣術により瞬殺される。
そのまま少し進むと出口が見える。
「あっ!ねぇレア!出口が見えたよ!!」
「うん、うちも見えてるからそんなに大きな声で言わなくても大丈夫。」
トウカは嬉しさのあまり出口へと走って向かう。
対照的にレアはのんびりと歩いて向かう。
そして、長い間洞窟という暗闇に居たため外に出た時、2人は突然の光に目がやられてしまう。
「うわっ!まぶし!目がぁ!目がァァァ!」
「眩しい。あとトウカ、うるさい。」
「えへへへへ、1回言ってみたかったんだよね!」
少しして目が慣れてきて目を開く。
そこには真っ直ぐ道が続いており、左右には森が広がり、少し奥の方には大きな門が見える。
どうやら、次の街へと辿り着いたようだ。
「みてみて!あれって街だよね!?」
「うちもそう思うよ。」
「早く行こうよ!!」
「うん、でもそんなに急がなくても街は逃げないよ?」
「それぐらい知ってるよ!?」
2人はそのまま街へと向かう。
トウカは早く行きたくて【飛行】でウロウロしながら、レアはいつも通りのんびりと歩いている。
近づくにつれて街の外の景色が見えてくる。
そこは跳ね橋が掛けられており、かなり深い堀が掘られている。
底には針山のような物が張り巡らされていて、この下に落ちてしまったら即死してしまうだろう。
そして門。
それは始まりのアインスにあった門とは素材が違い、とても頑丈そうだ。
城壁も石製では無く、それよりも硬い謎の素材であり、とても厚く大きい。
ちょっとやそっとの攻撃では崩れないだろう。
もし現代兵器を持ち込んだとしても傷が付く程度だと思われる。
2人は街へ着き、門を通ろうとする。
しかし、門にいた兵士に止められてしまう。
「止まれ。身分証を。」
「身分証?」
「はい。」
トウカは身分証が分からず立ち止まってしまうが、レアはギルドカードを提示する。
「Eランク冒険者だな、入ってよし。」
「それと、ようこそ!城塞都市ツヴァイへ!!」
そう言って門に居た兵士は両手を左右へと掲げ、大仰な仕草で声高に叫ぶ。
レアはうるさそうに目を細め、トウカはビックリして後ずさりしている。
そして兵士は笑い出す。
「あははは、すまんな。」
「よし、次は君だ。身分証を。」
「はい、これでいいですか?」
「おう!大丈夫だ。」
「君も。ようこそ!城塞都市ツヴァイへ!!」
トウカとも同じやり取りをして兵士は元の場所へと戻っていく。
「なんか凄かったね!ビックリしたよ!」
「そうだね。こういう所とかちょっとゲームっぽいね。」
「うんうん!ホントの人と接してるみたいで緊張するけど、こういう時とか気楽だよ!」
そんなやり取りをしつつ2人は門を通り街の中へと入っていく。
この城塞都市ツヴァイの街並みは、始まりの街アインスの綺麗な街並みとは異なり、全体的に石造りのように見えてとても頑丈そうだ。
「ねぇねぇレア!この後ってどうするの?」
「とりあえず、街の中央部に向かおうかと思ってるよ。」
「街の中央部?なんでそこに行くの?」
「なんでって、まずはこの街でリスポーン出来るようにしないと、また始まりの街からここまで来なきゃいけないからだよ。」
「うげっ、それはヤダから早くやらないと!」
そう言ってトウカは慌てて1人で走り出す。
しかし、レアはその行動を予期していたのか既にトウカの手を掴んでいた。
「トウカ?そんなに急いでどうするの?場所わかるの?ねぇ?大丈夫?」
「はっ、はい・・・大丈夫です・・・」
いつも通りの事なのだが、レアは怒っている。
どうやらトウカに振り回され過ぎて限界を少し突破してしまったらしい。
レアはそのままトウカを引きずって進んでいく。
トウカは知らない所へ連れてこられた猫のように大人しくしている。
そして動きが突然止まる。
「着いたよ。」
「はい!」
トウカはビシッとしているがレアはもういつも通りに戻っていた。
「ここだよ。この噴水のある広場に入るとリスポーン位置を固定出来るの。」
「そうなんだ!」
そうして2人は噴水の方へと近づいていく。
すると突然システム画面が目の前に現れる。
____________________
リスポーン地点が固定されます。
城塞都市ツヴァイ
____________________
「どう?リスポーン地点になった?」
「うん!なったよ!」
「良かった。じゃあうちはこの後宿屋に行ってログアウトするから、また明日ね。」
「はーい!またね!」
そう言ってパーティが解散されてレアはどこかへと歩いていく。
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