再会
資料を提出した私達は、次の日話した通りに一緒に食事することになりました。行くのは私が最初に行った世界です。あまり人目につかないように夜を狙って転移をしましす。前回過ごした時のの最後が最後だったので、その後もなるべく人目につかないのように気を付けながら移動をします。幸いお店は裏路地にあるのでそんなに人に見られることもなく、お店に行くことが出来ました。
「へぇ、ここがアイビーさんオススメの食堂ですか」
建物の外見を眺めながら声を漏らします。その顔は半信半疑と言った感じです。まぁ、このお店は裏路地にあるから外見がそんなに豪華ではありませんが、美味しいのは確かなので言っておきます。
「はい、いろんな世界で美味しい物を食べてきましたが、ここが一番おいしいと私は思っているんですよ。見た目はアレですけど、中には結構人がいますよ」
「なるほど、では早速入りましょう」
お店の扉を開けてナギさんと一緒にお店の中に入ります。カランカランと扉についているベルが鳴り私達の来店を知らせてくれました。お店の中はこの前と変わらずに人がごった返していると思っていましたが、中には行ってみると人が全くいません。
「…あれ?」
思っていたのと違う状況に思わず足を止めて店内を見回します。お店の明かりはついていますがテーブル、カウンター何処にも人影が見えません。一瞬入る店を間違えたと思い一度出てみますが間違っていません扉に何か貼られていたりもしていません。
「…もしかして定休日でしたか?」
もう一度中に入るとナギさんが顎に手を付けて考えています。
「それなら、お店に明りが消えていると思うのですが…」
「そうですよね…なら、何か起きたか…」
「なにかって…もしかして転移者?!」
その答えを聞いてナギさんが複雑そうな顔をしました。
「どうかしました?」
「…いえ、危機意識が高いのは素晴らしいですが、転移者の事を真っ先に思い浮かべるのはいいのか悪いのか判断できなくて迷ってしまったんですよ。仕事人としてはその思考が合っていますが、人としてはどうなのかと思ってしまいまして」
そう言われましたが、考えてすぐに思いついたのが転移者だったので仕方ない気がします。もしかして、これが職業病と言うやつでしょうか?
「転移者じゃないなら何が…」
そこまで言った所でお店の奥の方からこちらに向かう足音が聞こえてきました。数は一人だと思います。歩いて来ているのは分かっているので待っていればこちらから来るので大人しく待っています。
「あら、あんた久しぶりねぇ」
奥から出てきたのはお店のおばちゃんでした。
「あ、お久しぶりです。覚えていてくれたんですか」
「こんな別嬪さん一度見たら忘れないわ!フレアさんと一緒に食べてきたお嬢さんでしょ?」
別嬪、その言葉に少し恥ずかしくなって顔が熱くなります。褒められるってやっぱりうれしいですね。
「そうですか…別嬪ですか…」
頬が緩むのを抑えながらおばちゃんに背を向けます。今、私の顔絶対だらしないことになっているので見せるわけにはいきません。かといってすぐに直せるわけでは無いのでしばらくこのままです。
「はじめまして、そこでモジモジしているアイビーさんの友人のナギです。今回はアイビーさんにとても美味しいお店があると聞いて連れて行ってもらったのですが、何かあったのですか?」
ナギさんが冷静に自己紹介とお店がどうなっているのか聞いてくれました。
「あら、そうだったわ。ごめんなさい今は貸し切りでお客さんは入れてないの、ごめんなさね」
「そうでしたか、それは失礼しました。予約しているのなら仕方ありませんね。ほらアイビーさん出ましょう」
そう言ってナギさんに背を押されながら店を出ようとすると、お店のおばちゃんに止められました。
「ちょ、ちょっと待って!…向こうの返事次第だけど、もしかしたら一緒に食べられるかもしれないわよ」
その声にナギさんの足が止まります。その顔は何かを期待している目をしています。
「それが本当なら嬉しい限りですが…いいのですか?」
「向こう次第よ。でも多分大丈夫だと思うわ。そこのテーブルに座って待っていて話してくるから」
そう言うとおばちゃんがお店の奥の方に小走りで行ってしまいました。残された私達は言われた通りにテーブル席に座って大人しく待ってます。
「どういうことなんですかね?」
顔のにやけをほぐしながらナギさんに聞きます。
「分かりませんが、ここの食事を楽しみにしていたので食べれるのならどうでも良いです」
そんなに楽しみにしていたのなら誘ってよかったと思えますが、もし駄目だったらどうしましょうか。他のお店も候補にはありますが、このお店の事しか考えていなかったのであまり調べてないんですよね。美味しいのは確かなのですが、どれが一番いいのかが悩むところです。
そう一人で悩んでいると奥の方から今度は誰かが走ってくる足音が聞こえてきました。
…数が多いですね。足音に混じって声も聞こえてきました。大丈夫なのでしょうか席から立ち上がって通路を覗くと子供が走ってくるのが見えて、少し後ろから大人が追いかけているようです。そして私は先頭を走っている子供に見覚えがあります。
「フレアさん!」
先頭を走っているのはこの転移した町の領主の娘さんであるフレアさんでした。高そうなドレスに身を包みながらこちらに走っているフレアさんを私が止めていいのかアワアワしていると
「お久しぶりです!アイビーさん」
フレアさんは私の前で止まりお金持ちっぽいお辞儀をしました。後ろの人達も追いついてきました。全員、執事かメイドさんのような恰好をしています。これはアレですね前みたいな態度で言ったらやばい気がします。
「あ、はい。お久しぶり…です。フレアさんも元気そうでよかったです」
そう言って私も急いでお辞儀をします。流石に凄く偉い人と二人きりならともかく、人目がある中でため口は非常に不味いですし、そんな度胸もないのでなるべく丁寧に粗相のないように気を付けます。
「ええ、アイビーさんもお元気そうで安心しました」
そう言ってフレアさんがホッ安心したような顔をしました。…何かあったのでしょうか?
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