結婚
フレアさんがホッとしているのも束の間、後ろの方から急いでフレアさんに追い付こうと走っていた方々が見えてきました。その中に前に話したことのあるフローラさんとかもいたりしますが、それよりもフレアさんが何でホッとしたような顔をしているのかを聞いて見ます。
「なにか、心配事でもあったんですか?」
「え?どうしてですか?」
「顔がそんな顔をしていましたから、何か心配事でもあったんですか?」
「えっと…それはですね…」
フレアさんはそこまで言って言葉を濁して追い付いたフローラさんの方を見ます。すると代わりにフローラさんが話してくれました。
「それは、アイビー様と別れた翌々日に、とある犯罪組織が壊滅しまして、それが誘拐や人身売買をする組織でして、その組織の壊滅以降アイビーさんの姿を見かけることが無かったのでその組織に誘拐されたのではないかとフレア様がずっと心配していたのですよ」
フローラさんの説明曰く、この町は観光地として経済をまわしているため少なからず犯罪は起きていますが、今回壊滅した組織は前々から頭を悩ませていた組織らしく、その組織がある日突然壊滅状態で発見されて構成員のほとんどを捕まえることができたそうです。そして組織の構成員からアイビーさんによく似た人物をさらった旨の供述が出てからアイビーさんはずっと私が無事か心配してくれていたみたいです。
…その組織はあれでしたね。私が連れ去られて後に隊長が救出してくれた組織ですね。そう言えば、あの組織の人達とは目を覚ました後に話しただけで、その後はコッソリ抜け出したので、あの組織がどうなったのか知りませんでしたし、組織の人にも脱出中にはステルスアタックで無力化していたのでバレていませんでした。おかげで捕まえたはいいけど行方が分からない人の一人としてカウントされていた様です。
「そ、そんな事があったんですね。私は次の日に出て行ってしまったので、そんなことがあったなんて知りませんでした」
私がその組織にいると認めてしまうと色々不味いので誤魔化そうとしますが、頬が引きつっているのは自分でもわかります。口調もどもってしまいます。
「ええ、しかもその組織の構成員の証言もあやふやで、あの日に何があったのかよくわかっていないんですよ。おかげで旦那様も事後処理とその組織に誘拐されていた人たちの保護にしばらくは奔走されていました。」
その過程で構成員の一人が私を攫った旨を話してしまい。心配したフレアさんが私を探したりしてくれたそうですが見つからず、心配をかけてしまったそうです。皆さんに心配をおかけしたのは申し訳ないと思いましたが、それよりも誘拐されていた他の方々が無事保護されたようで安心しました。今は施設で過ごしていたり、帰れる人は故郷に帰れているようです。私の中途半端な偽善で助けてしまったので、そのことが心残りでしたが無事生きているようなので良かったです。
安心したところで、フレアさん達に心配とご迷惑をおかけしてしまったので、頭を下げて謝ります。
「それは、ご心配をおかけしてすみません」
「いえ、アイビーさんがご無事でしたので良かったです」
フレアさんが心底嬉しそうなでそう言ってくれました。
「仲いいのはとても喜ばしいですし積もる話はあるとは思いますが、そろそろ私の背中とお腹がくっつきそうなので早く食べたいのですが」
その言葉で私達がご飯を食べに来たことを思い出します。そう言えばそうでした、フレアさんとの話に聞いていてすっかり忘れていました。
でも私達は基本的にお腹は空かないのでナギさんの今の言葉は早く食べたいだけですね。
「そういえば、そうでした。えっと、フレアさん私達もご一緒することになるんですかね?」
状況から考えてフレアさん達がここを貸し切りにしているのは分かりますし、多分断るならフレアさんがわざわざここまで来たりはしないと思います。
「ええ、お嬢様がお父様を説得していたので大丈夫です。流石にお会計は別になりますが、よろしいですよね?」
元より私達の分は払う予定でしたので特に問題ありません。むしろお会計までお世話になるとか図々しいにもほどがあります。そのあたりの節操はあります。
「大丈夫です。元から私達の分は持っていますから」
「では、早く行きましょう」
そう言ってフレアさんが私の手を引いて奥に歩いていきます。ナギさんもと後ろを見ると使用人の人達がナギさんに謝っていました。せっかくの二人でお食事の予定でしたのにお嬢様がずっと構ってしまって、と言った風にでしょうか?
ナギさんが笑いながら首を振っているので気にしていないようですが、私は気にした方がいいですよね。でも、フレアさんと話すのも楽しいですし、かといってナギさんと一緒に食事に来ているのでナギさんを優先した方が良いんですかね?
とにかく、ナギさんに追い付いてもらう為に一度立ち止まってフレアさんと話をします。
「そう言えば聞きそびれていたのですが、どうしてわざわざお店を貸し切りにしているのですか?」
この世界で出前があるのかは分かりませんがフレアさんの家なら似たようなことが出来ると思うのでわざわざお店を貸し切りにする必要はないように思います。
「それはですね…」
フレアさんは振り返って焦らすように少し貯めてから、話してくれました。
「私、結婚するんですよ!」
「へぇ、結婚をそれはおめでた…結婚!!?」
予想外の答えに思わず声が裏返ってしまいます。
結婚、夫婦になることです。…本当に?!フレアさんの年齢は確か前食事をした時に14歳と言っていた気がします。え?いいんですか?相手にもよりますが、大丈夫ですか?犯罪じゃないですか?
とにかく、フレアさんが嬉しそうな顔をしているので脅迫とか不本意な結婚ではないようなので、お祝いの言葉を言っておきます。
「それは…おめでとうございます…その…お相手はどんな方なんですか?」
「私のお相手のイサナ様は最近急成長したヨモツ商会の社長で、このあたりの土壌改良によって収穫量向上に大きく貢献したすごい方です」
へぇ…イサナさんって方なんですか…フレアさんとは名前が少し違うように感じます。色々考えてしまいますが、とにかく、フレアさんが幸せそうなら何よりです。
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