コアの行方と使い方

「~~♪」


「おや、何やら上機嫌ですね。もしかして新しい仲間を見つけたんですか?…と言いますか雰囲気変わりましたか?」


 スキップしながら上機嫌に廊下を移動している彼女に何気なく声をかけた。いつも一緒に仕事をしている彼女だが、今回の仕事は別のペアで動くことになったので仕事が終わった後に無事な彼女を見かけると何事もなく仕事を終えたのだと分かるから少しホッとする。


「違うわ、これを手に入れたのよ!」


 そう言って彼女がウキウキしながらふと懐から一つの球体を取り出す。水晶の様に透き通っているその球体は見るからに怪しげな魔力が満ちている。これは


「…ダンジョンコアですか?それもこの力…」


「そう!私が勧誘予定だった転移者のコアよ!私が向かった時には、すでにあっちが殺しちゃったんだけど、コアが放置されていたからそのまま持って帰ってきたわけ!」


 それなら確かにコアを持ってきた方が有用性がある。コアはダンジョンマスターからの血肉を魔力に変えて見返りとしてマスターにダンジョンを管理する機能を分け与える。コアが破壊された場合にはマスターがコアからの支援が無くなり機能を失った生命体になる。


 逆にマスターが無くなったコアはどうなるのかと言うとコアが無事だから次にコアに近づいた生き物を問答無用でマスターに作り替える。


作り替えられたマスターはコアが破壊されるか、自身が死ぬまでコアを守り続けることになる。しかし、機能が多い分その内包している魔力はすさまじくうまく利用すれば発電機や施設を賄う分のエネルギーを生み出すことが出来る。


「それは素晴らしい早速リアクターに放り込みましょう!純粋な魔力の塊のコアならエネルギー効率もいいですからね」


「ふ、私がただのダンジョンコアを持って帰ると思って?」


 彼女はビシッとポーズを決めて自慢げな顔をする。


「?どういうことですか?」


「このコアはすごいの!ちょっと待ってね」


 彼女はそう言って空中でまるでスマホかタブレットを操作するように指を動かし始める。


「みて!」


 そう言って彼女が指さすが指の先には床があるだけで何もない


「何も見えないけど?」


「え?あ、ごめんちょっと待って見えるようにするから。えっと設定画面は…」


 しばらくウンウン唸りながら指を動かしていたが突然彼女の目の前にウィンドウのような物が現れた。これは確かダンジョンマスターがダンジョンを管理するのに使うメニュー画面のはず。ダンジョン持ちの転移者や転生者に何度も見せてもらったので間違えるわけがない。


「よし、これで見えるはずだけど見えてる?」


「ええ、見えていますけど、このメニュー画面なら他のダンジョンマスターから見たから特に驚きはしないぞ?」


「フフフ、見て欲しいのはこれからよ!」


 彼女はさらに画面を操作してさらにとある画面を映し出す。


「これは?どこかの施設の様ですが、ここではないですよね?」


 何処か青いネコ型ロボットが作られそうな未来感のある施設だ。ユグドラシルの施設よりも何段階も先を行っているのがわかる。


「この映像はこのコアが作れるカメレオン型の盗撮用隠密ゴーレムからの映像よ」


「そうなんだ。で?この映像はどこを映してるの?」


「ここはね、なんと!異世界対策課の施設からの映像です!!」


「へぇ…あいつらの……え?!マジ?!どうやって?!他の奴らでも、まだ場所の特定も出来てないのに?!」


 俺達の活動上あの組織とは長い間対立している。一時期は奴らに攻められて壊滅寸前まで追い詰められたから、一部の奴らがあの組織の本拠地を探そうと躍起になっていたが今の今まで見つけた人は誰もいなかった。そんな奴らの本拠地を一体どうやって見つけたんだ?


「すごいでしょ!どうしてかは私にも分からないけど、マスターになった時にメニューを弄ってたら見つけたの!」


 どうやってかは分からないが、多分このコアの前の持ち主だった転移者が残してくれたのだろう。


「それはすげぇな!」


「でしょ!ここから場所が割れれば攻めることも出来るし、会話の内容から次に何を狙っているかわかるでしょ!」


 確かにここから今まで分からなかった組織の実態に迫ることが出来ると思うとワクワクしてくる。ただ少し懸念事もある。


「だがこれを見つけた瞬間に過激派の連中が行動に移しそうで怖いな」


「ああ、ヒロ君ね。確かに彼、変な正義感に目覚めてしまってるから、これで居場所が分かっら絶対攻めてしまうわね」


「下手に幼い年齢で異世界に来て、神様から力を貰ったから自信とかプライドとかが肥大化しすぎているから、これを知ったら絶対攻めに行くのは確実だろう」


 この組織は誰もトップではない全員横並びの組織であり、誰も誰かに命令する権利を持っていない。もし誰かの協力が必要な時は仕事をする時は自分で提案して、組織のメンバーに協力を要請する形になる。要請する時はキチンと計画書を作成したり、説得を行ったりして協力してもらっている場合がほとんどだ。まぁ、偶に神様から貰った力を使って強引に勧誘する奴もいるにはいるけど、今はその話はしないでおこう。


 そして、仕事の内容によっては長期間仕事をしたり同じメンバーで仕事をして俺達のようにメンバーで組むようになり、それが組織内のヒエラルキーを作り、組織内にある程度の派閥が出来てしまっている。


 ほとんどの派閥は争うこともなく寧ろ情報共有や技術共用などをしてお互いの目的のために協力しているが、ヒロトは正義感と悪い奴はすぐに死ぬべきと言う悪即斬な性格を持った状態で転移して力を持ち、その性格が正されることなく成長してしまい。同じ正義感に目覚めた転移や転生した子供達を引き付けて、組織の中でも強力な派閥を作り出してしまっている。


 特に初期メンバーの人達からは問題児扱いされているがそれを罰してしまえば自由を謳う組織としては成り立たなくなってしまうため、特に何も罰することが出来ずに放置されている。特に問題なのは正義のためと言って組織内でも貴重な物資を勝手に使ったり、無断で他のメンバーが作った装備を使用して壊したりする。


「あいつにだけは絶対に隠そう」


「そうね、他のメンバーにも訳を言って隠してもらうことにするわ」


 彼女がアイテムボックスにコアを仕舞って一度この件を終わりにする。続きはまた今度で


「よし、じゃあまずは食事に行きましょう。今回はハンちゃんが当番みたいですからね」


「いいわね。日替わり定食なにかしら」


 お互い話題を変えて食堂に足を運ぶ。脇の通路で笑みを浮かべている人物に気づかぬまま

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