不思議なものを見つけて帰る
開かれた扉の先には意外なものがいくつも置かれていました。ある物は机の上に置かれて、他の場所には樽の中にこれでもかと詰め込まれています。
「何だ?これ?」
ハルさんはそのうちの一つを手に取ってシゲシゲと眺めています。
「…見たことない物だ」
そう言ってシアさんも興味深そうに眺めていますが、私はそれが何なのか知っています。私が仕事の時に使っているライフルのような物です。私の使っている銃よりも重量が大きくなっているようで、この前使ったxm29よりもごつごつしています。詳しい銃の種類はカルセさんに聞かないと分かりませんが少なくともこの世界にあるのは不自然に思います。
確か以前カルセさんに銃の構造を聞きいた時に、銃を一から作るにはそれなりの設備が無いと不可能だと言っていました。少なくとも武器に買いに行った武器屋さんで銃のような物を見たことはありませんし、あってラアさんのクロスボウのような物です。それに少なくともハルさん達は知らない様なので、少なくとも一般的には知られていないようです。
でも、どうしてここに銃があるのでしょうか?…いくつか予想を立ててみましたが、私の中で一番しっくりくるのが、転移者もしくは転生者が武器を作った、ですね。銃をよく見れば錆びています。この状態ではまず使い物になりません。何年いえ、何十年ほど前の物かは分かりませんが結構昔に転生か転移して作った様です。今はいない様なので亡くなってしまったか、誰かに殺されてしまったか、どちらにしてもこの人の願望は叶わなかったのでしょう。だってこの銃が普及されていませんから。この世界に来た人が銃を作ったのだとしたら観賞用のためか実際に使いたいかの二択だと思います。観賞用にしては銃の置き方が雑なので実際に使うためだと思われますが、もし実際に使われたのなら絶対に何かしらの形で誰かに伝えられていくはずなので全く知らないというのは不自然ですね。
「…で、これなんだと思う。俺は武器だと思う」
ハルさんがライフルの一丁を指して他の人の意見を聞きました。確かに外見のゴツさからして武器と考える方が自然でしょう。
「…少なくとも魔法の道具の類ではないみたい」
シアさんが一丁手に取って調べています。
「お父さんなら知っているかもだけど…」
「やっぱり武器なんじゃね?ほら、こう持ってさ」
ハルさんはライフルの銃身を持って構えます。確かにそのまま振り下ろして銃床やマガジンの部分に当てればいたそうですね。でも違うんです。そう持つ物じゃないんです。
「…確かに痛そうだけど、それだと持ち手の部分に穴が開いている意味がない。何回か殴ったら曲がってしまうから、別の使い方があると思う」
「そうか…アイビーはどう思う?」
「私ですか?」
不味いです。どう答えましょうか?まず駄目なのは馬鹿正直に知っていることを話すことですね。皆さんが知らないことをペラペラと話してしまえば、何でそんなこと知っているの?となってしまうのは火を見るよりも明らかです。さらに帰った後にギルドの人達も知らなかったら、何で知ってるの?!となってしまいます。それは避けたいけど嘘を言ってもシアさんに見破られそうで言えません。なのでここは…
「あぁ…ううん…どこかで見たことあるような気がします」
「本当か?どこで見たんだ?」
「えぇ…と…確かナギさんといる時に見たような気が…すみません、よく思い出せません」
ナギさんに丸投げします!後で菓子折り持って謝るのは確定ですけど、下手なこと言って面倒ごとに巻き込まれて、また隊長達に迷惑をかけるよりは何倍もマシです!!
「そうか、じゃあ思い出したら教えてくれ」
「はい…」
その後もウーンウーンと思い出そうとするふりをし続けます。こうすることで皆さんから意見を振られることが少なくなり、下手なことを言わないようすることができます。取り合えずその後の話し合いで、今あるライフルの中で錆が一番少ない物を一丁、持ち帰ってギルドで調べてもらうことが決まりました。
取り合えずその一丁はラアさんが持つことにして、他の箇所を探索しました。他に見つけたのは、マガジンと実弾、それに食糧庫の様な物がありましたが、中には何も入っていませんでした。ただ、中から腐った匂いがすることから中には食べ物があって腐って無くなってしまったのだろうと結論付けられました。
「さて、一通り調べたし戻るか」
部屋も一通り調べ終わったため一旦調査は切り上げて下水道の外に出ることにしました。ずっと地下にいるので詳しい時間が分かりませんが少なくとも日は落ちてしまっていると思います。
「…それがいい、少し長居しすぎな気がする。ギルドが閉まってしまうかもしれない」
シアさんの言葉を聞いて少し急いで帰ります。
ガチャリ
「ふう、お疲れ」
下水道から出て金網に鍵をかけなおしてから、ハルさんがねぎらってくれました。
「…まだ終わってないギルドに報告しないと」
「そうだな。その前にラア、アレを頼む」
「ハイハーイ。ちょっと待ってね」
ハルさんがラアさんにそう言うと、ラアさんは何やらポーチの奥をゴソゴソして一つの小瓶を取り出しました。
「ラアさんそれは?」
「これ?これはね、匂い消し、ほら今の私達って下水道から出てきたから絶対に臭いの。別に私達が何ともなく思っても、もし依頼人に会う時に変な匂いがしたら不快に思われちゃうでしょ?だから日常的にこういうところにも気を使っているの!」
ラアさんは小瓶の中身を香水のように自身に振りかけました。
「ほら、匂いしないでしょ!」
とラアさんが自分の腕を上げたので近づいて試しに嗅いでみると、最初に出会った時と同じフローラル匂いがするだけで、下水道の嫌な臭いは全くしません。
「本当ですね匂いがしません」
「でしょ!!アイビーさんにもかけてあげるね」
ラアさんは私の頭上に匂い消しを振りかけてくれました。少しして自分の腕を嗅いでみましたが、下水道の匂いは消えたのがわかりましたけど、自分の体臭ってわからないですよね…でも私から下水道の匂いが無くなったので、ラアさんに感謝しないとですね
「本当に匂いが無くなりました!ありがとうございます」
「大丈夫よ!それじゃあ、そっちの二人もね」
ラアさんがハルさんとシアさんにも匂い消しを振りかけました。
「あくまで一時的な物だから一晩立てばまた匂いが立ってくるから、ギルドで報告を済ませたらすぐに共同浴場に行くわよ!」
「わかりました」
あくまで一時的な誤魔化しなんですね。あとついでに替えの服も買うことにしましょう。今の私が持ってきている服はナギさんにもらったこの一着しかないので浴場から出たらスッポンポンで過ごすことになってしまいますから!
「うんうん。じゃあ早速ギルドに向かいましょう!」
初めて会った時と同じテンションに戻ったラアさんを懐かしく感じながら、ラアさんについていきます。
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