武器を買う

「参加したいと思います」


「本当!?ありがとう」


ラアさんが私の手を握って上下に振りながら感謝を述べました。


「そうか、なら、すぐ出発したいところだが・・・」


 ハルさんがそこで言葉を止めて私の方をじろじろと見始めました。


「な、なんですか?」


「武器とか持って行かないのか?」


「・・・あ」


 そう言えばこの世界で何も買っていません。でもここで持ってないことを正直に言ってしまうと、私が武器すら持っていない人だと思われて連れて行くのを断られてしまうかもしれません。ここは誤魔化すことにしましょう


「そ、それはですね。宿を取った時に荷物を置いて行ってしまったのでここにはないんですよ。なので、今から行くのでしたら宿から荷物を取ってくるので少し待って欲しいのですが・・・」


 頑張って頭を働かせながら、嘘を並べて誤魔化そうとします。すぐに武器を買ってついでに宿を取って戻ってくれば大丈夫・・・のはずです。


「そうなのか、なら少し待つことにしよう」


「・・・それなら消耗品を買っておきたい、ランタンの油が少なくなってきているから補充しておいた方がいい」


「なるほど、なら俺達も少し出かけようか」


「ならさ、お互いに用が終わったらここに集まるってのはどうかしら?」


「そうだな、アイビーさんもそれでいいか?」


「はい、大丈夫です」


 よし!何とかなりそう


「決まりね。じゃあ一時解散ってことで」


そう言ってハルさん達がギルドを出て行った後に受付の人に武器屋の場所を教えてもらって向かいました





「ここが武器屋さんですね」


 看板には『武器屋 ガリア』と書かれています。


 ・・・やっぱり読めますね。先ほども登録する時に使われていた文字も、フレアさんの世界と同じ文字が使われていました。どうして同じ文字が使われているのでしょうか?思えば今話している言葉も同じですね。どうしてでしょうか?・・・いえ、それはナギさんに聞くことにしましょう


「とりあえず、入りましょう」


私はお店の扉を開けて中に入ります。中には武器屋と言うだけあって剣から弓まで色々な武器が置かれています。壁にも武器が掛けられて値段を見ると買えなくもない値段でしたが、流石に高級品であるのは分かるのでどちらかと言うなら樽などに入っている安物の方がいいでしょう。でも、不良品を買ってしまうのも危険なので、なるべく安くて状態が良さそうな武器を探してみることにしましょう。


「・・・分からない」


 いくつか手に取って見比べたりしていますが、どれがいいのかよく分かりません。隊長から近接の心得などは教えてもらいましたが、武器の選定は教えてもらっていませんので武器の違いが良く分かりません。


「お?アイビーちゃんじゃねえか」


 聞き覚えのある声が聞こえたので振り返ると背後にザックさんが立っていました。


「ザックさん・・・ですよね?」


 間違えていると申し訳ないので恐る恐る聞きます。


「お!覚えていてくれたか。まぁ、さっきぶりだし、忘れる方が難しいか!」


 そういって、ニカっと笑った後に私の手元をのぞき込みました。


「で、なんでこんなところにいるんだ?」


「それは、先ほど冒険者登録をしまして、さっそく依頼を受けたので行く前に武器を買うことにしたんです」


 私は腕につけている金属のタグを掲げながら説明します。


「お!なんだ、そう言うことだったのか。でどんな依頼を受けたんだ?」


「下水道の探索です。ハルさんと言う方が一緒に誘ってくれたので、行く前に武器を買っておこうと思いまして」


「なるほどなぁ・・・ハル達と一緒に下水道探索か・・・でどんな武器にするつもりだ?」


 ザックさんは私の横に立って樽から剣を取り出しながら聞いてきました。


「ハルさんを知っているんですか?」


「おう、俺はそんなに強くはないが、うちのギルドに入っている奴、特に新人に関しては世話を焼いているからな。大体憶えているぞ」


 あの時にギルドにいた人数でも相当いるのに、全員憶えているとかすごいですね。


「で?どんな武器を買いたいんだ?」


 もしかして、手伝ってくれるのでしょうか?それなら助かります。


「えっと・・・まずは小回りの利く剣がいいですね。後サブとして、いくつかナイフを買う予定です」


 前の仕事の時に下水道を通った時は壁や天井が低かったので刃の部分が長い剣では当たると思うので、短剣とまではいかないにしても短い剣を買う予定です。それにナイフなら


「へぇ、よく考えているんだな。新人にしては、賢いな」


 ザックさんが感心したようにうなずきます。まずい、ここでは一応新人なのであまり詳しすぎるのはおかしいはずです。なんとかまた、誤魔化さないと!


「ナ、ナギさんに教えてもらったんです・・・」


 一応私がナギさんと親しい仲なのは知っているはずなので不自然ではないはずです!


「なるほど、ナギにか、それなら納得だな」


 ザックさんは納得したように、またうなずきました。ありがとうございます!ナギさんのおかげで誤魔化すことができました。


「っと、これはどうだ?」


 私が心の中でナギさんに感謝していると、ザックさんが樽の中から一本の剣を取り出して見せてきました。見てみると、私がいった通りの短い剣を持っていました。


「これです!」


 私は剣を受け取って掲げます。刃こぼれなし、持ち手にがたつきなしの良品です


「ザックさん、ありがとうございます」


「おう!あと、ナイフはここの店主に言えば、似たような物を揃えてくれるから行ってきな。あと下水道に行くなら暗いから明りを買うといいぞ」


 そうアドバイスをすると、ザックさんは背を向けて出口に向かって歩き出しました。これは帰ってしまう流れですね。帰る前にお礼を言わないと


「あの!教えてもらってありがとうございます」


 ザックさんは片手をあげてヒラヒラと振りながら出て行きました。


「さて必要な物は教えてもらったので、あとは買うだけですね」


 私は持った剣を持ってカウンターに向かいます




「ありがとうございましたー」


 店主からの声を聞きながら、武器屋から出て買った物を装備します。両足にレッグシースを付けてナイフを左右それぞれ三本、計六本を仕舞って、腰にはホルダーを巻いてランタンと水を入れた皮袋を下げます。反対に剣を吊って準備万端です。


「よし」


 私は確認を終えて走り出します。武器屋に時間をかけ過ぎたので急いで宿を取らないと!

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