子供心
話を受けるかどうかは保留としてもらって、とりあえずお互いにきちんと自己紹介をする為に先ほどナギさんと食事をしていたテーブルにお互い向かい合うようにして席に着きました。ここは誘われた方から話始めた方がいいと思ったので、一つ咳払いをして話始めます
「まずは私から、私の名前はアイビーと言います。今日ギルドに入ったばかりの新人なので、そのあたりよろしくお願いします」
一応釘を刺してみますが、向こうが聞いているようには見えません
「じゃあ次は俺らの番だな」
そう言ってリーダーっぽい男の子は立ち上がりました。
「俺の名前はレイっていうんだ。よろしくな。それで・・・」
ハルさんがそう言って目配せをすると女の子も立ち上がって自己紹介をしてくれました
「私はラアっていうの!よろしくね」
「・・・シア」
最期の一人はソッポを向いたまま名前だけ教えてくれました。もしかしなくても、嫌われていますね。
「シアの態度は気にしないでくれ。少し人見知りな所があるから警戒しているんだ」
ハルさんそう言ってため息をつきました
「私達が初めて組んだことになった時も、こんな感じだったから気にしなくていいわ。それよりもアイビーさんに聞きたいことがあるの!」
ラアさんはそう言ってテーブルから身を乗り出してきました。
「な、何でしょうか?」
「あのナギさんとはどういう経緯で知り合ったの?」
その質問は少しまずいですね。全部馬鹿正直に話すわけにもいかないので、どこまで誤魔化せばいいのか返答に困ります。
「そう・・・ですね・・・」
そう言って思い出すようなふりをしながら、どう誤魔化そうか必死に考えますが、いい考えが思い浮かびません。
「ラア、今はこの依頼について話すところだ。その話は後にしてくれ」
「・・・えぇ、わかったわよ」
ハルさんがラアさんの肩を掴んで席に座らせて話を進めようとしてくれました。ラアさんは最初、不満そうな顔をしていましたが、ハルさんが睨むと大人しくなりました。この三人はハルさんがまとめ役とストッパー役を買っているんですね。
「大変そうですね」
「いえ、そうでもないですよ、二人とも言うことにはきちんと来てくれるのでそこまで大変ではありません。それで依頼の話だけど、今の俺達の人数だと少し不安になってきたから、できれば一緒に行きたいのだけど、どう?」
そう言われて改めて少し考えます。参加することはほぼ決定していますけど、まだ少し不安があるのでもう少し聞いてみることにしましょう。
「少し質問があります。何故私を誘ったのでしょう?他にも、もっとベテランの冒険者がいるはずなんですよ」
周りを見れば私以外にも冒険者がいます。掲示板の所にいたから誘っただけなのかもしれませんが、
「それは、他の人を誘っても断られることが多いからだ」
「まぁ、下水道なので嫌な人は多いですよね」
「それもそうだし、少なからず命の危険があるからな」
「え?命の危険があるんですか?下水道なのに?」
下水道の探索で命の危険があるって想像できないですね。もしかして、疫病をまき散らすネズミとかGとかいるのでしょうか?
「それは・・・」
「それは私が説明するわ」
話そうとしたハルさんを遮って、ラアさんが話始めました。
「この町は今でこそ比較的安全な街だけど、出来たばかりの頃は魔族との戦争での最前線の都市だったのよ。だから、この町のそこかしこに戦争で使われていた設備が残っているわ。その最たる例が下水道なの」
「この下水道は作られた当時は攻められた時のための非常時の作戦基地があったの、そのために下水道にはわんさか罠が仕掛けられていたようみたいで、今も残っている可能性があるのよ」
「でもそう言うのって間違えて罠に引っ掛からないように正解の道が書いてある地図とかが残ってないんですか?」
そうしないと、誰もその作戦基地にはいけないですし、何より解除する時によね。
「もちろん、あったみたいよ。でも戦時中の混乱の最中に紛失してしまったようなの、しかもこの都市の規模が大きくなるにつれて下水道の拡張工事を繰り返し行った結果複雑になってしまって、不用意に入ってしまうと出られなくなってしまうような迷宮が誕生したってわけ」
・・・つまり、自分たちでダンジョンみたいなものを作り出してしまったということですか。
「それで、下水道の探索の目的はそのトラップの解除と作戦基地の発見よ」
「作戦基地の発見も、ですか?」
「ああ、具体的には作戦基地に残っているとされる物品の回収だ。当時使われていた歴史的に価値のあるものが残されている可能性が高いから、売れば良い値が付くんだ」
「それを見つければ一攫千金、私達は一気に知名度が上がるってわけ」
「なるほど、でも、それなら他の人達はどうして受けないのですか?」
「新人はこの仕事をやるよりも他の依頼をやった方が安全に報酬をもらえるから、ベテランの場合はこれよりも外で魔獣や盗賊、山賊を買った方が金になるからやらないのよ」
「・・・それに、臭いからね」
シアさんがソッポを向きながら付け加えました。心なしか嫌そうな顔をしています
「一番の理由がそれね。皆臭いのは嫌だし、共同浴場あっても臭いまま行くわけにはいかないから一回水浴びするんだけど毎回それで満足しちゃって寝ちゃうのよね」
ラアさんも思い出しながら苦い顔をします。
「でも、皆さん受けるんですよね」
今の話を聞いていると、あまり良いところが無いように感じます。私も下水道を通ったことがあるので下水道が『臭い』『狭い』『汚い』の三拍子が揃っている場所なのは分かっていますし、探索と言うことは長時間下水道にいる事なので、あまり行きたくない場所なのは確かです。
「どうしてですか?」
「私達がやりたいことに一番近いからよ」
「私達は探検がしたいの、物語に出てくるような探検が、未知のダンジョンに命を狙う罠、モンスターはいないけど、私達が夢見た冒険が味わうことが出来てお金ももらえる。まさに私達の夢を叶えてくれるところなの!」
そう言うラアさんの目はキラキラ輝いていました。そしてラアさんの隣に座っている二人もまた、ラアさんの言葉に同意するように頷いています。
「でも、少し深く潜っていたら人数が三人だと不安になってきたから、もう一人誰か一緒に依頼を受けてくれる人を探していたの、そうしたら今日あなたがこの依頼を持っている所を見つけたので誘おうって事になったの、だから一緒に依頼を受けてくれない?」
ラアさんは顔の前に手を合わせてお願いしました。隣にいる二人も片方はジブシブとですが頭を下げました。
私は少し考えてから結論をいいます。
「わかりました。まだ新人の私がお役に立てるか分かりませんが参加したいと思います」
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