援護と殺意
隊長が転生者を掴んだままクレーターに向かうのを見ながら私はセラさんの跡に続いて建物の間を低空飛行しながら駆け抜けていきます。向こうの現在位置は転生者の魔法を避ける為にお城からの距離が離れている空中にいます。
まずはバロックさんとユッカさんが主に戦闘を担当して抜けた相手を私とセラさんの火力で押し戻しつつ援護、最後にナギさんが一番後ろから全体を見て遠回りをしようとする敵等を探して私達に報告、場合によっては対処をしてくれる予定です。
私達はユッカさんとバロックさんの下を通って所定の位置に着いた後にセラさんの後ろに立ってカンタービレの発射装置を装着して動作確認を始めます。
少しして戦闘が始まって激しい戦闘音と共に私達の頭上を氷や炎が過ぎ去っていきます。
「それじゃ~アイビーちゃん私はここから二人を援護するから攻撃とか飛んで来たらよろしくね~」
セラさんが機関銃を二丁持ち上げながらユッカさん達の方を見上げています。
本当ならユッカさん達と同じ高さで撃った方がいいんですけど、セラさんの二丁撃ちは今の飛行装置だと反動を抑えることが出来なくて照準がブレるそうなので、地面に降りてから撃つことになりました。
「了解しました」
カンタービレの動作に問題ないのを確認した後にコクリと頷きます。
「よろしくね~私も出来る限り撃ち落すけど、さばき切れなくて落ち漏らすかもしれないからそれを集中して撃ち落してくれればいいからね~」
そう言ってセラさんは機関銃の銃口を上げて向こうの部隊に向かって撃ち始めました。セラさんの機関銃から放たれた銃弾は狙いすましたように魔法を放とうとしている人に当たって吹き飛びました。元々彼らの装備に物理無効が付いているのは知っていますがあまりに吹っ飛び過ぎているので少し心配になりますが、後方に吹き飛んだ敵は空中で体勢を立て直してこちらに顔を向けました。
「やっぱり撃たれたのならこっちを向くわよね~」
セラさんに撃たれた人は私達を見つけた後に私達目掛けて降りてこようとしました。魔法を手のひらに集めてこちらに接近してくる彼はしかしながらそれ以上進むことは出来ずに動きを止めます。
彼が足を見ると彼の足に刃の付いた紐状の物が巻き付いていました。
紐の先はユッカさんが持っていて思いっきりユッカさんが思いっきり引くと彼はユッカさんの方向に引っ張られていきました。
いわゆるガリアンソードというものです。
ユッカさんとナギさんが持っていた剣は伸縮するガリアンソードに変更されていることは知っていましたし実際に見ましたけれど、どうやったらあんな鞭よりも扱いにくい武器を使いこなせるのでしょうか
私も訓練中に少し使わせてもらいましたが鞭状の剣の先がうまく動かせなかったのでどうやってあんなに綺麗に巻き付けられるのでしょうかね?
「よっと」
ガリアンソード『イエローリリィ』を引っ張ってこっちに引き寄せた魔法使いAを離れて魔法を行使しようとした魔法使いBにぶつける。
ぶつけて動けなくなった所を狙って接近して蹴り上から振り下ろして下の民家にぶつける。ダメージは無かったとしてもぶつけられれば多少動けなくなるから楽になる。それに人と民家の屋根とかが落ちて動きを封じて欲しいなと思ったりするが落ちて少しすると爆発音がした後に二人が上がってくる。
これだから魔法は面倒くさい
「いやーキツイっスね。バロック君」
周りに注意しながらバロックに声をかける。
「その割には結構余裕そうじゃないですか?」
魔法使いCに接近して腹目掛けて拳を繰り出して吹っ飛ばした後にバロックが答える。
魔法使いってのは、基本的に遠距離攻撃が基本だ。近距離魔法は出来るには出来るが魔法発動と維持に余力を割かれる分転移者や転生者以外は使うことが出来ない。分かりやすく言うなら自転車こぎながら攻撃するくらいの難しさだ。
攻撃は出来るかもしれないが、実際に攻撃する時には足を止めてしまうし、逆に漕ぎながら攻撃すると腕にうまく力が入らない。つまり魔法を発動しながら攻撃すると、魔法と攻撃を同時に処理する必要があるから魔法に集中すると攻撃がおろそかになり、攻撃に集中すると魔法が疎かになってしまい元々の攻撃力が減ってしまう。だからこそ、この部隊は空を飛んで接近されないように対策していたのだろう。俺達が空に上がって接近戦をするとまるで対応できていない
もし最初から機能を使っていたら転生者に対策されてしまっただろう、だからシェフレラはギリギリ隠し通したのだろうな。
それに少し周りを見れば見つけられるのだが、この城や外壁を見ると対空兵器らしきものが一切見当たらなかった。片づけてしまった可能性もあるが民家や城内の様子を見る限り調度品や内装はそのままだったし剣も落ちていた、ボロボロだったが。流石に対空兵器だけを綺麗に片づけたとは考えにくい。転生者が飛行魔法を考えついてそれを他に教えて広がったばかりなのだろう。
接近戦は考えず、攻撃が来たとしても弓矢か魔法程度、対策は装備の無効効果で十分そう考えただろう。
まぁそのおかげで俺達が戦いやすいんだけどな
「おっと」
腰に吊り下げていたリボルバーを抜いてアイビーちゃんに向かって魔法を撃とうとした相手目掛けて引き金を引く。
放たれた弾丸は魔法の中を通って胸に命中する。
普通なら重症になりそうだが、そこは物理無効後ろにのけぞっただけでかすり傷一つ付いていない。しかし着弾の衝撃で集中が切れて魔法が霧散する
「よしっと」
リボルバーをしまいつつ再び『イエローリリィ』を伸ばして巻き付けようとしたが別の方向から放たれた魔法に弾かれる。弾かれた方を見ると今までの隊員とは少し装飾品が多い女性が降りてきた。あれは・・・シェフレラに怪我を負わせた奴か?そう思った時に黒い感情が出てきそうになってくるが、それを抑えながら考える。
見た目は豪華だが転生者よりも豪華さは劣っているな。そう思いながら注意深く見て疑問に思う
こいつ・・・迷っている?
今までの奴らは確実に俺達を殺そうと覚悟した目を向かってきたが、目の前の女性は明らかに迷った目をしている。
これは・・・少し珍しい人だな。多分だが、彼女は神の加護の力が効きにくいにくいのだろう。効きにくいからこそ今の現状に安易に納得することが出来ずにこうして迷っているのだろう。本当なら健常者としてあまり害せずに行きたいところなのは分かっているが、この胸からあふれ出る感情を抑え続けることが出来ない。
彼女を殺せと一番の友人に傷を付けた奴らを許すなと胸の内が叫ぶ。出来るならそうしたい、でも彼女は転生も転移もしていない一般人殺すことは出来ないが
「でも殺さない程度なら問題っスよね」
自分にそう言い聞かせてリボルバーと『イエローリリィ』を持って彼女目掛けて突進する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます