行動再開
薄暗い道をナギさんのランタンの明りを頼りに私は隊長とユッカさんとナギさんの後ろを歩いています。すぐ隣には下水道が流れていて、そこから鼻をつまみたくなるような匂いがします。
「まさか、本当にあそこに抜け道があったとは・・・」
突撃前に隊長から聞いた話で王宮には隠し通路があることは教えられていました
実際に突撃した後にナギさんと合流したのも隠し通路の出口を確認するためです。けれどもこういう使い方をするのは少し意外でした。てっきりナギさん達をコッソリ連れてきて油断したところを不意打ちさせるつもりなのかと考えていました。
「王族が万が一城に攻められるような状況に陥った場合に逃げるための通路だ。調べた所によるとこの国は建国してから相当な月日が経っている様だ。それならば隠し通路の一つや二つあってもおかしくはないと思ってな、ナギ達についでに調べてもらっていたのだ」
隊長はユッカさんに肩を貸してもらって無数にある傷口に布をあてがいながら歩いています。
「なるほど、でも何で転生者が知らなかったのでしょうか?」
知らなかったにしても転生者なら考えつくような気がします。
「多分だが見つけるような努力をしなかったんじゃないかと私は思う。この国で起きた戦争は転生者のいる国が勝っている。それは当然ともいえるだからこそ彼らは勝つことしか考えてなく、逃走の可能性をなくすためにこの首都で戦闘を始めて、この国のトップはこの通路を使うことなく死んだ。だから転生者はこの通路を知らない。知っている人が全滅したのだから」
少し転生者を哀れに思います。
彼らの世界は都合よく動く世界だからこそ想定外の事態に対応できずに慌てるだけになってしまう。
都合よく動くからこそ彼らは知らない、私達の気持ちも他人も気持ちも・・・・
どうせ都合よく動くからこそ、気を使うことすらもどうでもよくなっていく
「それは、嫌ですね」
誰にも聞こえないほどの小さい声でポツリと言った後に隊長の方を見て別の事を聞く
「では何故隊長がこの通路を知っていたんですか?」
誰も知っている人がいないのなら隊長が知ってるはずが無いのですが・・・
「それは・・・蛇口だな」
「蛇口・・・ですか?」
「ああ、この国の家に入って調べると蛇口が合って水が通っていた。だから上下水道がどこかにあると思った。しかしこの国には川が流れていなく水を通していそうな物は地上では見つからなかった。地上にないなら地下だと思ってナギ達に探すように指示をした。もし通路があってお城まで続いていたら、奇襲をかけられると思ってな」
「でも、下水度の通路を見つけたのはいいんですけど、結構中が入り組んでいまして・・・多分知っている人ではないと簡単にはたどり着けないように設計されているようでした」
もし敵の兵士が入ってきた時に分かりやす構造だったら困りますから納得できます。でも・・・
「その割には結構早くお城にたどり着いていたような気がしますけど?」
「まぁ時間が無かったので、今の場所からお城までの方向を確認した後に壁の薄いところはバロックさんの拳撃で、厚いところはセラさんが持ってきた指向性爆薬で吹き飛ばしながら進んでたどり着きました。幸い敵は上空から探しているばかりなので聞こえなかったようなので気づかれずに到着しました」
そう言った直後にレンガ造りの壁に空いた円形状の穴の中を通りました。
・・・なんという脳筋っぷりでしょうか
皆さん結構知的なイメージがあったのですが、結構脳筋なところが多いと思います
そう思っていると突然ゴゴゴと天井が震えて上から埃が落ちてきます
「な、何ですか!?」
ナギさんインカムを操作して誰かと少し会話した後に隊長の方を見ました。
「バロックさんから報告です。転生者が魔法の行使を始めたそうです」
「了解した。ユッカ、アイビー急ぐぞ」
隊長が走り出して、それに続くようにユッカさんとナギさんが走り出しました。
「りょ、了解です」
私も走って皆さんの後を追います。
次第に振動と音が大きくなってきましたが、突然全ての音と振動がピタリと収まりました。
「魔法が終わったんですかね?」
「いや・・・・これからだ!!」
隊長が言い終わるのとほぼ同時に先ほどよりも大きい音と揺れが始まりました。
立つことすらも難しくなってへたり込んで、ふと後ろを見ると遠くから私達が飲み込まれたらまず命はないような赤い炎が通路を飲み込みながら私達に近づいてきています。
「飛行装置を起動して飛んでこの通路を抜けるぞ!」
隊長の声を聞いて、急いで装置を起動して浮かび上がって出口に向かって進みます。
「あそこです!」
背中に熱を感じ始めた頃にナギさんが天井を指さしました。その方向を見ると天井に光が差し込んでいる箇所がありました。
「あそこに飛び込んでください!バロックさんとセラさんがいますので!」
そう言ってナギさんが飛び込んだ穴に次々と飛び込んでいき最後に私が飛び込みました。
助かった・・・そう思った直後に足の裏に熱を感じました。
ぎょっとして下を見ると私の足のすぐ下を炎が過ぎていて、私の靴の底を少し焦がしていました
「あっつ?!」
私は急いで穴から出て靴の底をみます。幸い少し焦げてたくらいで足に火傷はしていませんでした。
「大丈夫ですか~」
セラさんが桶を抱えて歩いてきました。
「大丈夫です。少し靴が焦げたぐらいなので問題ないです」
「そう~?でも一応冷やしておきましょうわね~」
セラさんは持っていた桶から水を出して足にかけてくれました。
「ありがとございます」
「いいえ~」
「全員無事だな。本当はもう少しゆっくりしたいところだが、時間が無いので簡潔にこれからの事をもう一度確認する」
隊長はお城の窓際に移動して外の転生者達を見てから話し始めました。
「私が転生者を殺すから、他の皆は他の魔法使いの足止めを頼む」
「・・・本当に大丈夫っスか?」
ユッカさんが心配そうに隊長を見ています。
確かに隊長は全身切り傷だらけで痛々しいく感じます。血は止まっているみたいですが、それでも正面に見える大きな切り傷が目立ちます。
「大丈夫だ」
隊長は訳を言うことなく真っ直ぐユッカさんの目を見て言いきりました。
「・・・そうっスか」
ユッカさんはそれ以上言わずに黙ってうなずきました。本当に大丈夫なのでしょうか?でも皆さん特に不安な顔をしていません。それほど信頼していると言うことでしょうか・・・
私は少しこの皆さんとの違いに疎外感を感じます。他の皆さんは隊長を信じて任せています。私はまだ入ったばかりなので皆さんの事を全部知っているわけではないのでどのくらいの事が出来るのかが分かりません。だからこそ。ここでユッカさん以外は隊長を信じて何も言わない皆さんと私の差を感じてしまします。
「それと飛行装置はもう隠すことなく使ってくれて構わない」
いえ、これは今考えることではないです。皆さんを信じられるように私も頑張るだけです。
「了解しました」
「では改めて、これより外来種の駆除を再開する」
そう言ったのを最後に全員が飛行装置を起動して飛び上がりました。
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