奥の手
「さて諸君今回は少し変わって転生者の駆除だ」
作戦決行日私達はいつも通りに転移課の部屋に集っています
「今回の転移先は聖国の廃都、そこに彼らは集まっているようだ。そこから動かない所を見るとそこで私達を迎撃するつもりのようだ」
「それは・・・少し不味いっスね」
そう言ってユッカさんが難しい顔をしました
「何がまずいんですか?」
「あいつらの攻撃方法は広範囲殲滅魔法っス。つまり使われなくなって人のいない所なら思いっきり撃ってくるって事っスね」
「そうだ、だからこそ転移で奴らのすぐそばに転移して奇襲を仕掛けて目論見を潰す。奴らは乱戦になった場合の対処法など奴らは知らん。高威力広範囲が正義な奴らの戦術は、接敵前に広範囲殲滅魔法で敵を殺し残った敵を兵士で殺すという方式をとっているから乱戦になった場合は高火力広範囲が仇になり味方に当たる可能性があると撃てなくなる」
「そこを狙うという訳ですね」
「そうだ。その後は転生者以外は殺さずに無力化し転生者は抹殺する。といけばいいのだがそう簡単にはいかないようだ」
隊長は少しため息をつきながら頭を抑えて話を続けます。
「彼らの服には『物理ダメージ無効』と『魔法ダメージ無効』がある」
「・・・つまり、我々の攻撃が一切効かないと言うことですか?」
「そうだ。服に付与されている効果は肉体にも影響を与えている。一応所有者の魔力が無くなるか意識を失っている間は効果を失うが、消費魔力を極限まで抑えているらしく実質魔力が無くなることは無いらしい」
「そんな敵とどうやって戦うのですか?」
私達に元から魔法を使って戦う方はいないのですが、どちらにしても物理無効なんてものがあったなら私達は勝てません。
「大丈夫だ。そのことに対してもキチンと考えがある。しかし確認が出来てないからまだ教えることが出来ない。確証を得てから教えることにする」
「了解しました。でもなるべく早めに教えて下さいね」
「分かっている。まぁ転移者と戦えばすぐにわかることだから、そう時間はかからない。そして今回は少しお願いして創造課に追加装備を発注した」
そう言った直後に扉が勢いよく開きヘリオ室長が布のかかっているワゴンを押して入ってきました。
ワゴンの上の布には膨らみがあるのでその下に隊長が頼んだ装備があるみたいです。
「最終チェック完了したのでお届けに上がりました!!」
そう言って室長はワゴンにかかっている布を引いて、その下に隠れていた物があらわになりました。
布の下には小さな機械のような物が6人分あります。
その左右それぞれに丸い円上の部品が折り畳まれていて、向かって右側からベルトが伸びています。左に受け口があるので形状から腰につける物だと思います。
もしかしてカルセさんが不機嫌そうだったのって、これを作っていたからだったんですかね?
・・・本当にお疲れ様ですカルセさん。
「という訳で今回はこれを装備してもらう」
「隊長これは?」
バロックさんがワゴンに近づいて上にある機械をしげしげと眺めています
「これは小型飛行装置です!!」
室長がワゴンの上の装置を説明しながら持ち上げています。
「今回の注文はなるべく目立たず飛行装置も小さくして欲しいとの要望だったので、それを応える為に今回は少し変更点があります」
そう言って各部位を指さして説明を続けています。
「まず小さくしたことによって空中での姿勢制御が問題になりました。そこで今回の装備は靴にも姿勢制御のスラスターを付けることによって両足と腰の三点で支えることにしました。また靴と腰のスラスターをつなぐケーブルは出来るだけ細くしたのでズボンを通して靴に接続することによってケーブルを目立ちにくくすることが出来ます」
そう言って室長が装置の一つを自分の腰に取り付け下側から二本のコードのようなものを引っ張って伸ばしズボンを通して靴のかかと部分に差し込みました
「次に出力の問題ですがこれは別のカンタービレの動力を流用しました。いくら出力が落ちたと言っても放熱を考えなければ毎分60発程度の連射を可能にするリアクターです。問題ありません」
腰のスラスターの電源を入れると円形の部品が展開して青白く光ったかと思うと、ふわりと室長が飛び上がり足を少し前に出しながら開いて空中で固定しました。
その姿勢は壁にもたれかかっているような恰好をしています。
「靴はワゴンの下の段にありますので履き替えてください。皆さんのサイズに合わせていますから大丈夫です!!次に強度ですがこれは少し不安があります。小型化したことによる出力低下に伴って装置の材質の見直しをした結果、オリジナルの飛行装置よりも強度は低下してしまいました。通常の出力では問題ありませんが最大出力を長時間出し続けると、中から少しずつ融解して壊れます」
「最大稼働時間は何分だ?」
飛行装置を手に取って眺めています
「5分です!!それ以上を過ぎると装置が爆発します」
「そうか・・・完璧だ、室長。正直ぶん殴られても仕方ないような注文をしたと思っていた。本当にありがとう室長。ゆっくり休んで欲しい」
「いえ、不安なことがあると睡眠の質が落ちてしまいます!!道具は持ち主を生かすために使われます。私は道具が仕事を果たして持ち主が無事に帰ってきたことを知ってから寝ることにします。ではシェフレラ隊長私は自室で報告を待つことにします。存分に使い潰してください!!」
そう言って室長は再び勢いよく扉を開けて去って行きました
「感謝する室長」
隊長は部屋の壁の方を見てそう呟いてから私達の方を見ました
「さてこれからこれを装着して一通りの操作を確認した後に行動開始だ」
隊長はワゴンの上にある飛行装置を私達に渡してくれました。
「それともう一つ」
隊長が腰のベルトに取り付けながら話し始めます。
「この装備の事だが。あまり向こうにはバレない程度に使って欲しい」
「どうしてですか~?」
「この装置は先ほど室長が言ったようにあまりスピードが出ない。これで向こうの飛行魔法に対抗しようとするとこちらが負けてしまうから、この装置の主な役割はジャンプの時に少し高さを増やしたり落下を軽減する為に使ったりして飛行装置としては最後の最後まで使わないようにしてくれ。あとついでに、これも着て欲しい」
そう言って隊長は靴の下に敷いてあった布を取り出して広げました。布を広げるとパーカー付きのジャンバーでした
「これで装置を隠しておく、服には向こうほどではないが魔法に耐えられるように作られている。」
「・・・了解しました~空を自由に飛べるのかと思ったんですけどね~」
少し不服そうな顔をしながらもセラさんは頷きます。
私も少し空を飛んでみたいとは思いましたが流石に戦う場所でそんな事を呑気にやっていたら死んでしまいますね。
「それはSランクとかの時まで我慢してもらおう。では各自装着の後に転移開始!!」
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