転移して落ちる
転移は指定した所に移動する為に使う魔法で、能力課で一番研究されている魔法です。世界を超える為に作られた魔法で私達も良く利用しています。隊長が言うには他の部隊の方にも使える方がいるそうですが、私達には魔法を使える人はいないんですよね。何故でしょうか?今度聞いてみることにしましょう。
・・・そろそろ転移が終わるころですね。浮遊感が収まってきていますし、もう少しで転移が完了する。そう思っていました
「・・・った?!」
突然何かに弾かれる感覚がして私は後ろに跳びながら転移が終わったらしくて、うつ伏せに地面に倒れ込みながら転移が完了しました。
「・・・・いったぁ・・・」
体を起こしてからジャンバーの袖を捲り、倒れるときに一番最初に地面にぶつけた肘や膝を見ます。少し痛いですが流石にこのくらいで傷にはならなかったようなので安心しました。それと装備も無くなったりしているものは無いみたいです。
「大丈夫っスか?」
近くにいたらしいユッカさんが心配して声をかけてくれました
「大丈夫ですユッカさん。それより、先ほどの事は何だったんですか?」
今まであんなことは起きたことがありませんでした。
「多分っスけど結界っスね」
「結界ですか?」
「そうっス結界は特定の範囲を囲む見えない壁みたいなもんっス。結界にも種類があるんスけどこれは転移対策の結界だったから転移して向こうの近くに出ようとした俺達が結界に引っ掛かって弾かれたって事っスね」
「なるほど、それで隊長達はどこに?」
私は周りを見回します
辺りには私とユッカさん以外の人影は無く、見えるのは壁が吹き飛んで半壊している家や損傷の少ない石造りの家があるくらいです。
「多分っスけど結界で弾かれたときに離れてしまったみたいッスね。幸い一番新人のアイビーちゃんが独りぼっちにならなかったのは良かったっスけど、他の人と一緒じゃないのは少し不安っスね」
そう言いながら、ユッカさんはあたりを見回しています。
私ももう一度あたりを見回します。あたりには建物から崩れているのでしょうか?白い石が散らばっていてもしかしたら壊れる前は綺麗な街並みだったではと想像できますね
あとこの都市の中央でしょうか?崩れかかっているお城のようなものが少し遠くに見えます
「とりあえずあのお城みたいなのを目指すっスよ」
ユッカさんはそう言ってお城の方へと歩き出しました。
「あのユッカさん!隊長達が無事か通信機で呼びかけてみるのはどうでしょう?」
私はユッカさんの後を追いかけながら聞いてみます。
まずは皆が集まってから向かった方がいいのではないかと私は考えました
その方が何か不測の事態が起こった時に対処が楽になるのかなと思いますし、それに皆さんの安否も心配です。
「いや、通信は隊長の指示があるまで開かない方がいいっス。盗聴の恐れもあるっスから」
ユッカさんは耳にあるインカムを指します
「この通信機は別に魔法が付与とかはされていない普通の通信ッス。だから電波は出るのでそれを感知されて居場所がばれる可能性があるっス」
魔法でどうやって電波を感知するのか疑問ですが、実際に感知してしまいそうな感じがするので頷いておきます。
「それに一か所に集まってしまうと目立つし、広範囲殲滅魔法の餌食になりやすくなるっスけど特に注意するのは転生者だけっス。他の人達は威力が転生者よりも低いっスので俺らを殺せるほどの威力を転生者と同じ範囲だと出せないので、どうしても俺達に近づく必要があるっス」
「そこを狙うと言うことですか?」
「そういうことっス。俺達と戦っている間は転生者が魔法を撃ってくることは出来ないっス。」
「わかりました」
「ならオッケーっス。じゃあアイビーちゃんは上空の警戒をお願いするっス。飛んできたりするかもしれないし、何か天気がおかしくなったなと思っても教えて欲しいっス」
「了解です」
私は背負っていたXM8を持ってユッカさんの後を追います
上を見ると厚い雲に覆われて青い空と太陽が見えませんが寒いというほどでもない丁度いい気温ですね
ユッカさんも左手にリボルバー銃右手にシミターを持って歩き始めました。
お城に近づいてくると周りの廃墟が少なくなってきています。半壊と言うより全壊に近い建物が増えてきています。どうやらお城の近くが主な戦場だったようですね。
「ストップっス」
ユッカさんがそう言って立ち止まりました
「ユッカさん?」
「どうやら向こうから来てくれたようっス」
そう言ってユッカさんは前方斜め上を指さしました。
ユッカさんの指さす方向を見ると上空に三人の人影がありました。
服装は全員全く同じ格好をしていて、空に浮かんでいます。取り合えず敵だと思います。
私は銃を構えて撃とうか迷っているとユッカさんに止められました。
「少し待って欲しいっス」
「どうしてですか?」
「様子がおかしいっス」
そう言われてもう一度三人の方に目線を向けます。
三人は明らかに私とユッカさんを見つけています。けれども彼らは私達に攻撃をするわけでもなく虚空に向かって話しかけているように見えます。
「あれは誰と話しているんですかね?」
白い息を吐きながらユッカさんに聞きます
「多分念話とかで離れた距離の相手と話しているんだと思うっス。でも誰とっスかね?」
「分からないです・・・そう言えば急に寒くなってきましたね」
「確かに寒くなってきたッス・・・・ね」
そこまで言うとユッカさんは何かに気が付いたような顔をして私の方を向きました。
「走るっスよ!!」
「え?」
「急いで!!」
なんでかはよくわかりませんけど取り合えずユッカさんが走り出したので私も後を追います・・・って
「ユッカさんそっちは逆じゃないですか?!」
ユッカさんはお城とは逆の私達が歩いてきた方向に戻りはじめました
「いいから!!急ぐッス!!」
しばらく走っているとユッカさんは私達が転移した時に近くにあった比較的損傷の少ない石造りの家に入りました。
私もその家に入るとユッカさんが急いで扉を閉めて三人がいた方向の窓を覗き始めたので私も見てみることにしました。
先ほどいた所に三人の姿は無く、代わりに雲から細い糸のような物が降りているのが見えます。
「やば」
ユッカさんは短くそう言うと私の肩を掴みました。
「アイビーちゃん!!時間が無いから俺の言うとを良く聞いて欲しいっス!!」
何で起きているのかは分かりませんけどユッカさんがまじめな顔をしているので頷きます
「じゃあ早速だけど今から地べたに座り込んで頭を隠すようにうずくまるんだ!!あと呼吸は浅くして深く息を吸い込み過ぎないようにして!!いいっスか?」
あまりユッカさんの勢いに飲まれてしまい声が出てこなかったで頷きます
「じゃあ急いでやって!時間はもう無いから」
ユッカさんは肩から手を離したので私は言われるがままに、急いで頭を隠すようにうずくまりました。
するとユッカさんが私の上に覆いかぶさりました。
私は思わず声を上げようとしましたが、突然家が揺れ始めました。
「次に俺が言うまで、死にたくなかったらこれから何があっても話したりしないでくださいッス!!」
そうユッカさんの声が聞こえた直後に家が大きく揺れ何かが窓を突き破りました。それと同時に急激に寒くなり私の視界が真っ白になりました。体が急激に寒くなり息苦しくなり私は意識を手放してしまいました。
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