case3 たとえ生まれ変わったとしても

転生と探し方

 隊長はホワイトボードの前に立って資料をめくりながら説明を始めます


「さて今回の仕事は前の二つよりも少し・・・いやかなり面倒くさいと思う」


 早速嫌なことを言い始めました。 


「まず今回は転移者ではなく転生者だ。アイビー転移と転生の違いは覚えているか?少し前に話したはずだが」


「え」 


 私は急いでメモ帳をめくって用語を探して確認をしてから立ち上がります。


「神様から力をもらって転移した時の姿や少し若い姿で異世界に行くのが転移で、神様から力をもらった後に新しい生命として生まれ変わるものが転生です」


「そうだ・・・別に立ち上がってくれなくてもよかったのだがまぁいい、そして転移者と違い転生者は生まれた時から力を持っているから青年と言える齢になるころには自分の力を完全に理解しているので転移者よりも強く厄介な存在だからな」


 隊長は手元の資料から一枚の写真を取り出してホワイトボードに貼りました。年は16歳程の金髪の男の子ですね。結構美形に入るのではないでしょうか?


「という訳で今回の転生者だ。名前はウルト=オルガスト、元宮廷魔導士アルゴースの息子にして千年に一人の逸材で全ての魔法を扱うことのできる史上最年少の現宮廷魔導士だそうだ」


 今の説明でも中々やばい感じがします。流石神様の力ですね。


「宮廷魔導士と言うことはやっぱり魔法が得意と言うことですよね」


 ユッカさんは背中をさすりながら呟きます。


「そうだな、しかも神の加護で魔法関係が結構強化されているようだな」


 持っている資料をぱらぱらとめくって確認しながら隊長が答えています。


「しかも学園時代の友人とかの人に自分の考えた魔法理論を教えているそうだ。おかげで史上最強の魔法使いの軍団が出来ているそうだ」


「それって・・・つまり、その人たちを相手にする可能性があると?」




「可能性というより確定事項だな。実際今まで戦ったことのある転生者は大体が総力戦みたいな人数を揃えて相手をしてくるからな」


「あの・・・因みに前回行ったときにはどのくらいの人数だったのですか?」


「前回か?前回はたしか・・・騎士団が800人位いて、転生者が魔法を教えていた教え子や友人が20人位いたな」


 あれ?思ったよりも多く感じないですね。


 前回や前々回で出てきた騎士団の人数よりも少ないと思います。


「結構少なかったんですね~」


 セラさんも同じことを思ったようです。


「そうか、セラも転生者は初めてだったな」


「私が作られてからはずっと転移者しか殺してませんでしたから」


「そうか・・・そうだったな」


「セラさんも転生者と戦ったことがなかったとは意外でした」


 セラさんは私を除けば一番の新人ですが結構な場数を踏んでいるのは模擬戦等を見ればわかります。なので転生者もある程度戦っているものかと思っていました。


「それには理由がある。転移者よりも転生者の方が見つけにくいのだ」


「それはなんですか?」


「転移者はもともと転移した世界には存在しないはずの部外者だから、どうあっても目立ってしまうのだ。名前とか見た目とか恰好とかが、転移した世界では少し目立つから、調査部が見つけやすいんだ。

逆に転移者は生まれ変わった上で育てられているから名前や恰好が目立ちにくいんだ。その結果として、転移者よりも転生者の発見報告は少なくなってしまう」


 なるほど、私が出会った転移者はやたら煌びやかな人と鎧着ている人しかいなかったのでわからなかったですが、確かにブリーフィングで見た顔写真は他の世界の人とは違って見えます。


「恰好は近くの町で変えられるっスけど、名前や見た目は変えられないからっスね」


「まぁ、魔法や偽名でどうにかする転移者はいますが転移していきなり偽名を使わないので痕跡は残るので見つけられるんですけど、転生者の場合は名前も見た目も自然なので痕跡がないんですよ」


 ナギさんにそう言われて改めて今回の転生者の顔写真を見ると、確かに転移者に比べると違和感が全くありません。

 でもそれだとどうやって転生者を見つけて特定しているんでしょうか?


「じゃあ、どうやって見つけているんですか?」


「それは転生者も例に漏れずに神から力をもらっている場合があるから目立つのだ。調査部は様々な世界を歩きながら『史上最年少のSランク冒険者』とか『神童と言われている全ての属性を扱うことのできる平民』とかの噂話を調査をして情報を持ち帰り記録課の記録と照会して調べている」


「結構大変なんですね」


「そうだ。だからこの努力に我々も答えなくてはならないんだ」


 結構地道な努力の結果なんですね。


「さて、話を結構戻すぞ。転生者の戦力に関しての話だ。騎士団に関しては特に問題になる点はない普通の騎士団だった。だが問題は転生者が教えた人たちだ、彼らは転生者や転移者程の強さではなかったがそれでも楽勝と言えるほどの弱さではなかった」


「彼らの強さを例えるなら転生者が10000で騎士団全員が団結した場合の実力が1だとすると80ぐらいですかね」


 バロックさんが例えを出して教えてくれましたが転移者の数字が大きすぎるので微妙だと思ってしまいます。


「彼らは20人いたのでその数字×20が本当の戦力なんですけど、転生者の数字が大きすぎて数字化してもあまり強く感じないですね」


 ナギさんが思っていることを代わりに言ってくれました。。


「そう・・・なってしまうな・・・だが実際に戦った時は結構苦戦したから油断はしないで欲しい。転生者が規格外だから感覚が麻痺しているだけだからな!」


でも本当に強そうに感じなくなってしまいました。


セラさんも納得できていないようで微妙な顔をしています。


「・・・隊長と俺達みたいなものっスよ。隊長が転生者で、俺らがその転生者に教えてもらった人達と考えればしっくりくるんじゃないっスか?俺らと隊長の差みたいなものだと考えればいいっス」


 ユッカさんにそう言われたので考えてみると確かにしっくりするような気がします。


「確かにそっちの方がしっくりしますね」


「確かに~そっちの方がイメージしやすいですね~」


「・・・ユッカも結構強いから私と同じ扱いでもいいと思うのだが、まぁいいか」


 隊長は何とも言えない顔をしながらもそれ以上の追及はやめました。

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