情報収集と様子見
「ではまず、あのドラゴンについて話してほしい」
私はドラゴンに対しての知識は基本的なものしか知らない。しかもあのドラゴンは転移者の力を持っている。慎重になっていたとしても十分だと思う。
『はい、まずあのドラゴンは以前王国に侵攻してきたムスペリオス・ドラゴンと同じ姿をしています』
別に外見は聞いてないのだが
「そうか、因みに前回そのドラゴンが来たときはどうやって倒したのだ?」
『俺達三人の勇者が攻撃をして、王国騎士団が援護する形で倒しました』
「なるほど」
『でも基本的に誠と拓馬が攻撃していて、俺は騎士団への攻撃を防御や、俺に注意を向けるようにしていただけなので、俺は攻撃にはあまり参加していません』
「そうか、基本的に防御等を行っているのだな」
『はい、なので俺は攻撃役にはあまり向いていません』
・・・正直すぎじゃないか?
「いや、十分だ。バロックはこちらに参加して私達と共に攻撃を行ってもらう」
「了解しました」
「アイビーは狙撃を継続してもらう、ただし距離をもう少し詰めて攻撃に参加してもらう」
「はい」
「勇者はアイビーを護衛してもらえないだろうか?」
「ええ、私はあまり作戦とかの発案は得意ではないのでお任せします」
・・・一人で突撃して来いとか言われたらどうするんだ?
効果的じゃないのから、やらないがもう少し話術を鍛えたらどうだろ?私も人の事は言えないがな
「・・・他のメンバーは変わらずに接近をしてもらう」
結果的には攻撃する人数が一人増えただけだが、それでも十分だ。
あとはセラが早く戻って来て欲しいのだが、ただ待つわけにはいかないからな
「ではこれから行動を再開するがアイビーはまだ攻撃をしないで欲しい」
「?どうしてですか?」
「今アイビーが攻撃を再開すると、ドラゴンが再びアイビーを攻撃するだろう、勇者の力を信じているわけではないが頼りすぎるのもよくない」
実際、勇者がどのくらい攻撃を受けられるかは分からない、勇者に攻撃を集中させて勇者が防ぎきれない可能性もあるかもしれないから。
とりあえず向こうの攻撃をもう一回防いでから、もう一度聞こう。
幸いに向こうからアイビー達は土煙で見えない、移動するにはもってこいだ。
「わかりました」
「では行動開始!!」
そう言って通信を切って、走り出す。
もう少しで足元にたどりつくといった所でドラゴンがこちらに気が付いた。
こちらをにらんだ後に前足を振り上げて振り下ろした。
狙いは大雑把だが大きさでカバーできているようだがそこまでだ。
大きいと言っても躱せないほどではない
走る方向を変えてドラゴンの後ろに回り込むように走り出す。
するとドラゴンも向きを変えてこちらが正面になるように動いてブレスをしようと口を開けた。
今のうちに接近したいが、接近すればブレスに当たりやすくなってしまう。
それにこっちに注意が向けばユッカたちが接近しやすくなるだろう
・・・さて、どう躱そうか?
ブレスが一発だけなら何とかなるが、先ほどのような量のブレスを放たれたら厳しいな。
どうやら魔力不足とかで撃てないということにはなっていない様子ではなさそうだ。
あんなにバカスカ撃っていたら魔力が無くなりそうなのだが、そこは加護持ちが元になっているから加護
も継続して持っているのだろう
・・・本当に面倒だな
そう思っていると先ほどと同じように無数の火球を放った。
点ではなく面を目的に放ってきたようでこちらに直接当たりそうなのはあまりないが、周りに着弾した時に発生する爆風に体を持っていかれそうになってしまい体が動かせない。
姿勢を低くして飛ばされないようにするが、それでも四方からくる爆風に体が持っていかれそうになる。
しばらく火球が周りの地面に激突した後に本命とばかりに一回り大きな火球が飛んできた。
「・・・クッ!!」
私は咄嗟に腰にある木刀を引き抜いて火球に投げつける。
クルクルと回りながら木刀は火球に吸い込まれていき、そして爆発した。
あの木刀は中に鉄の棒が入っているので炎で木が焼き切れたとしても中の鉄で爆発する。
何で火球が爆発するのはわからないが、転移者が使う炎の魔法は大体爆発する。
当然私達がモロに食らったら死ぬので、直撃は避けなければならない。
爆風が過ぎた後に私は再び駆け出す。
ドラゴンは忌々しそうに咆哮し再び私に火球をぶつけようと口を開くが遅い。
恰好をつける為に咆哮をしたのか知らないが、そんなに長く吠えていれば接近するのは十分だ。
目の前にあるドラゴンの前足についている赤黒い鱗目掛けて刀を振り下ろす。
キィン!と高い音がして刀が弾かれる。
勇者から話を聞いていた時から私達の装備ではドラゴンに傷をつけることは難しいのではと思っていた。
多分前回は転移者のトンデモ火力でごり押せたのだろう
とりあえず試しに今切りかかったが、鱗に弾かれてしまった。
目を狙うにしても奴が大人しく上らせてくれるわけもなく、前足を上げたので私は奴の反対側に行くように動いた。
奴の攻撃を躱すついでにナギと合流するためだ。
だが奴はこちらではなくユッカの方に前足を振り下ろした。
大丈夫だと思うが一応連絡しておこう。
「ユッカ無事か?」
『無事っスけど、鱗が固いっスよ』
うん、大丈夫そうだ。
「そうか・・・とりあえず鱗の間を攻撃してみてくれ。ほらあれだ、この前一緒に釣りに行ったときにやった鱗取りみたいに」
『・・・なんとなくわかったっスけど、次からはその説明はしないほうがいいっスよ』
そう言って通信を終えた直後に後ろが急に明るくなった。
振り返るとドラゴンがアイビーの方にブレスを放ったところだった。
「アイビー大丈夫か!?」
『はい!勇者が守ってくれましたので』
「そうか、勇者に変わってくれるか?」
『?はい、分かりました』
少しした後に声が変わった。
『なんですか?』
「今のブレス、あと何回耐えられる?」
『あと何十発撃ち込まれても大丈夫だ。守りは任せて欲しい
何せ誠達が外した流れ弾を王都に当てないように気合で防ぎ続けたからな!!』
なるほど、思ったより実力があるようだ。
この分なら大丈夫そうだな
「・・・そうか、ではこき使わせてもらうとしよう」
『・・・は?』
私は全員に回線を通して、今しがた考えのまとまった作戦の説明を始めた。
『・・・本当にうちらの隊長は強引っスね』
「自分でもそう思う」
『でもそれしか手はなさそうですね』
『ええ、それに可能性が一番高いです』
『・・・いや、俺が一番危険じゃない?!』
「何十発でも耐えてみせるのだろう?他の案があるなら聞くが?」
『・・・わかったよ』
「アイビーは大丈夫か?正直一番危険なのだが」
『大丈夫です。覚悟はもう出来ています』
「よし全員行動開始!!」
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