レッツゴー記録課

「え?三人ですか」


ブリーフィングで隊長に言われた今回の人数は3人でした。


「ああ、三人だ」


隊長はさらりと言った。


あの理不尽の塊のような人達を相手に、しかも今回は三人・・・


「・・多くないですか?前回一人相手に隊長は肋骨とかにひびが入って、能力課の医療魔術のお世話になったんですよ」


作戦の後に知ったが、隊長は相手の重力魔法で腕などの骨にひびが入っていた。


治療魔術で完治はしていたので休暇は普通に過ごしていた。


だけど、あの時に私が早く撃てていたら隊長が骨折しなくて済んだのかもしれないと思うと申し訳なくなる。


隊長は気にするなと言ってくれたが、それでもと思ってしまう。


「そうだな、それは重々に承知している。だが今回は心配ない

もう一人で無茶は多分しないさ」


そう言って隊長は胸の前で握りこぶしを作りました。


「今回の相手は3人だが強さにバラつきがあるようだ。今回は一人に対して二人のタッグで対応してもらう」


「隊長、何でッスか?」


ユッカさんが手を挙げて聞きました。


「短時間での各個撃破は無理だろう、一人を倒すのに時間がかかってしまったら他の二人に挟撃される可能性がある。加護持ちを三人同時に相手にするのは危険だ。組み合わせ技とか放たれたら死ぬかもしれない。

それに加護によって魔法の才能と威力が上がったことによって、範囲攻撃が得意だろう。そんな奴に数で押して行くのは得策じゃない。

それならば前回のように一人とはいかないが少人数での同時攻撃が有効だと考えた。」

「なるほどッス」

「組み合わせはまだ決まっていないから少し待ってほしい」


そう言って隊長は続けた。


「質問はないか?

・・・ではこれより作戦開始前の準備を始める。

アイビーはバロックと記録課に資料を取りに行ってもらう。セラとナギは創造課に行ってもらう。」


「隊長、俺は?」


まだ仕事が決まってないユッカさんが聞きました


「ユッカは、私と一緒に能力課に行ってもらう」

「了解っす」

「では全員行動開始」


そう言って隊長はブリーフィングを終えました。





「アイビーさん、記録課に行くのは初めてですよね?」


記録課に向かっている途中でバロックさんが話かけてきました。


「はい、私が行ったことがあるのは、カルセさんのいる創造課と転移課だけです。」

「記録課は結構ブラックですので気圧されないようにしてください」

「え?記録課ってブラック何ですか?」


この仕事、ブラックな部署があるんですか?


「ええ、ブラックさが一番なのは交渉課ですけど、あそこは事情があってブラックなので

あそこを除くと調査課と記録課が一番ブラック度が高いですね」

「そ、そうなんですね」

「ええ、そんなわけでこれから行く記録課は、結構ブラックなので精神的に追い詰められている方が多いくて、少しやばいので気を付けてください」


徹夜しているんですかね?


それにしても

「何でブラックなんですか?」

「それは無数にいる神様が管理する無数の世界の記録を保存と管理をし続けているので、人員が追加され続けても仕事が一切減らないのでずっと仕事をし続けているのですよ」

「うわぁ・・・」


仕事が終わらないとか地獄ですね。


「それに急な人員の増加は職場が動かなくなるので、少数の人員が追加され続けているのですよ」

「終わらない仕事に、人員が追加され続けているのですね」

「ええ、ですので人員の多さと仕事の多さはトップクラスですよ」

「私、この部隊に配属されて良かったです」

「それ、記録課で言わないでくださいね。全員もれなく激怒しますから、命の保証はできません」

「はい」


そう言っている間に記録課に到着しました。


記録課の扉は753部隊の扉と同じ木製ですが、こちらの方が重厚なつくりをしています。


なにより


「バロックさん、気のせいならいいのですが、この扉の奥からすごい気配と言うかオーラをかんじるんですが」


「気のせいではないですよ。仕事に対する怨念や諦め等の、負の念が来ているだけです」


「この中に入るんですね・・・」


「ええ、覚悟してくださいね」


そう言ってバロックさんはノックせずに部屋に入っていきました。


「え?バロックさん、ノックしなくていいいのですか?」


バロックさんを追いかけて部屋に入りながら聞きます。


「ノックしても案内してくれる人はいませんし、する暇があるなら彼らは仕事をしていますから

あと一応受付がありますから、そこに要件を伝えれば教えてくれますから」


「へ、へぇ」


そうして歩いているとおびただしい数の本が積まれている受付のようなものが見えてきました。


バロックさんは受付に近づいたので、私もバロックさんの隣に立って受付をのぞきました。


受付には二人の人がいましたが、一人はコンソールを弄っていて、もう一人は机に突っ伏して動きません。


二人の机には引っ掻き傷が付いている飲み物の缶が、いくつも置かれています。


「753部隊のバロックです」


そういうと受付の女性が顔を上げ


「あ?・・・あぁ資料が欲しいのね。今回の753部隊の担当の世界の記録は向こうにあるわ。これ、場所が書いてある紙」


顔を上げた女性は目の下に隈があり、ぼさぼさの髪は乱雑に後ろにまとめられています。


着ている服もヨレヨレで目は生気を感じません。


彼女はこちらを見た後に、一枚の紙を引き出しから引っ張りだして渡してくれました。


「あの・・・隣の人は?」


「彼女は起こさないであげて、7徹目でさっきようやく寝たの。死ぬほど疲れてるから、そっとしておいて。

起きたらまた仕事が始まるから、せめて寝ている間は休ませてあげたいから」


「はい・・・わかりました」


7徹目なんですね。おやすみなさい


「ありがとうございます。ではアイビーさん行きましょう」


そういってバロックさんは歩き出しました。


「あ、はい」


私はバロックさんを追いかけました。


後ろを振り返ると受付の人が仕事に戻るのが見えました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る