温泉のお約束
朝、いつも私が寝ているベットより、フカフカなベットに横になって寝ていると
「おはようございます、アイビーさん」
とカルセさんに朝早く起こされました。
「お、おはようございます、カルセさんどうかしました?」
「一緒に朝風呂は入りませんか?
ホテルの屋上が露天風呂なんですけど
今の時間はほぼ誰もいないので貸し切り状態なんですよ。
このホテルの名物みたいなものなので是非一緒に入りたいなと思いまして。
特に朝は空気が澄んでいて外の景色がよく見えるんですよ」
「そうですね、せっかくですから一緒に入りましょう」
朝風呂ですかいいですね。
楽しみです。
88182室メンバー、男子部屋にて
「第88182室の諸君、今日朝早く起きてもらったのは他でもない
今、ホテルの屋上にある露天風呂にカルセ君とアイビー君が入ろうとしている」
薄暗い部屋の中、室長がスポットライトをつけて演説を始めた。
そして皆、室長の演説を静かに聞いている。
「ならばやることは一つだろう、幸いに他の宿泊客達はまだ寝ているようだ
これにより他のご婦人の裸体を拝んでしまうということはない!!」
「「「おお」」」
俺達の目的はカルセさんとアイビーさんの二人のみ、無用な被害は出したくない。
「さらに露天風呂はホテルの最上階にあり、男子湯と女子湯を隔てるのは薄いベニヤ板のみ、これは覗いてくれと言っているようなものではないか!!」
「「「おおお!!」」」
最高の条件であることに俺らは歓喜した。
「私に付いて来てくれるかい?88182室の諸君。
犠牲は出る必ず出る、そして数多の犠牲の元に楽園を覗けたとしても、その後に待つのはきっと死であろう。
カルセ君は怒ると半端ない、きっと覗きを行った私達は全員殺される、必ずな。
ついでにアイビー君がシェフレラ隊長に報告した場合は、隊長の制裁も追加される
それでも君たちは覗くかい?
情け容赦なく殺されると思うが、それでも諸君らは覗こうとするのかい?」
室長はそう俺たちに聞く
愚問だ、目の前にチャンスがあるなら掴む
この温泉旅行を楽しむために必要なことだ
俺たちはそう考え室長に答えを示す
「「「peep!!peep!!」」」
peep(覗き)だ、男のロマンである覗きをこの時にやらなければならない。
「よろしい!!ならばpeepだ!!
君たちの人数は20人しかいない少ない戦力だが、私は君たちを信じている。
君たちとなら最高の結果を作り出せると信じている。
私と君たち総勢21人でなら、不可能を乗り越え私と共に湯気の向こうに見える楽園に行けると約束しよう」
「「「おおおおおおぉぉぉぉ!!!」」」
「では諸君、楽園を見に行こうじゃないか!!
奴らに我々の辞書に諦めや自粛という言葉が存在しないことを思い出させてやれ!!!」
「室長殿!!室長殿!!」
室長の演説に呼応するかのように我々の声と覚悟は大きくなりました。
「・・・ヒッ!」
更衣室で衣類を脱いでいると、突然全身に悪寒が走りました。
「どうしました?アイビーさん?」
「いえ、何か急に寒気がしました」
「朝はまだ冷えますからね、早く体を洗って温泉に入りましょう」
「そうですね、朝はやっぱり寒いですからね」
そう言って私は、いそいそと体を洗う準備を始めました。
「それにしても」
体を洗いながらカルセさんは続けました。
「アイビーさんは、良い体をしていますね」
「え?な、何ですか急に?」
急にまじまじと、私の体を見始めたカルセさんからの視線を隠すようにしながら聞きました。
「私達の体は年を取らず成長しないので、この小さい体でいると
皆さんのような体の大きい方がうらやましく思うのですよ」
「そ、そうなんですか」
「この体は小さいので細かい作業や、装置の隙間に入ることができるので便利ではあるのですが、室長達と飲もうとすると毎回ジュースを出されたり、酒場から追い出されそうになったりして大変なんですよ」
「へぇ、大変ですね」
「そうなんですよ、しかも室長は平気で徹夜しようとして、皆も平気で徹夜しようとするので止めるのも大変なんですよ」
カルセさんが泡を洗い流し、湯に体を沈めながら言った。
「それでも、嫌になったり、やめないのですか?」
カルセさんの向かい側に座りながら私は言いました。
「ええまぁ、なんだかんだ楽しいですし、皆さん良い人達ですからね」
「諸君、あれが我々が待ちに望んだ、男子湯と女子湯を隔てる壁だ」
高い壁男女を分ける壁は生半可な高さではなく、そびえるように我々を見下ろしている。
これが最初にして最大の難関であることは想像に難くない。
「私は諸君らを約束通り、連れてきたぞ」
そう言って室長は壁に近づくと振り返り両手を広げて宣言しました。
「第88182室全員に命令する!」
室長は心の底から笑いながら続けた。
「さあ諸君、楽園を覗こうではないか!!」
そう言って隊長は壁を上り始めました。
まるで地べたを這いずり回り、餌を求める犬のように、
まるで宝石を掴もうと、手を伸ばす盗賊のように進んでいる。
「俺たちも続け!!室長の後に続け!!」
誰かがそう言ったのを皮切りに皆が壁を上り始めた。
壁の先にある楽園へたどり着くために必死に上り始めました。
そして一番先に上り始めた室長は壁のてっぺんに手をかけ覗こうと頭を出しました。
そして室長は何かに当たって落ちました。
「し、室長おおおぉぉぉ!!」
「壁が薄いので会話は聞こえるんですよ?」
両手に桶と石鹸を持ったカルセさんがまるで死神のように、我々をゴミを見るような目でみながら、壁の上に立っていた。
「アイビーさん」
「は、はい」
「先ほどの発言を訂正します。
良い人達ではありますが、どうしようもない変態であり、とんでもない馬鹿でした」
そう言ってカルセさんは桶と石鹸を持っている腕を十字に構え
「さて皆さん覚悟はできていますか?
命乞いは済ませましたか?
神様にお祈りは?
奥歯をガチガチいわせて震える準備はできていますか?
・・・では行きますよ!!」
そう言って飛び降りてこちらに向かってきた。
石鹸で目を潰され、桶で殴られながらもカルセさんの一糸纏わぬ姿を見れたことに感謝し、アイビーさんの姿が見れなかったことに残念に思い、次の機会があれば絶対に見ようと決意しながら俺たちは意識を手放した。
少し悲しい出来事があった後、私達はお風呂に入り直し、朝食を食べてからホテルを出ました。
「もう一泊してもらっても大丈夫ですよ?」
ホテルの出入り口で見送りに来たカルセさんに言われましたが
「いえいえ、泊めてもらっただけでも十分すぎるほどなのに、流石にもう一泊は悪いので自分で探します」
と断りました。
「そうですか?まぁ無理強いはできないですね
では残りの休暇を楽しんでください」
「はい、楽しみます
今回はありがとうございました」
カルセさんに見送られながら私は歩きだしました。
さて、まずは宿探しですね。
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