止まらない悪い心

@ladyportia

第1話

夫婦で暮らしていた

隣のおじさんが亡くなった


愛想が良く親切だったけど

道路に車を駐車する人だった


時々うちの敷地まではみ出していて

止めていた自転車の位置が変わっていた


はみ出してくるあの車が無かったら

そう思い続けた


おじさんは家の前を丁寧に掃き掃除する人だった

うちの前まで掃き掃除をしてくれていた


親切で厚かましい人だった


救急車に乗ってから日を跨ぐことなく

あっと言う間に亡くなった




家の前に白いハナミズキの苗を植えた 


グングン育ってくれることを願ったが

後ろのシュロの大木とぶつかる 


シュロの大木は鬱蒼としていて風に煽られ夜になるとその影が窓に映って不気味だった


シュロの木が無かったら

そう思い続けた


ある日家の前のシュロの大木が伐採されていた

管理者が切ったようだった




ずーーーーっと思っていたのだ

あれが無ければと


意識したり無意識だったり

長い時間をかけて思っていたのだ


人が亡くなるのも

木が切られるのも

それを願うのも

良くないことだ


しかし思い通りになると

次の思いが出てくる




家が狭い故に駐車場を借りている

家の隣に庭付きガレージがあったらいいのに


ガーデニングをして

奥には赤いハナミズキを植え

春には桜を愛でながらお茶をする



隣のおばさんはうちの前まで掃き掃除をしてくれる


でもうちのユスラウメの実を全て取ってしまう


親切で厚かましい人だ




悪い心はもう止まらない







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